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ひとこと通信欄

  • (2017/5/11夜) 春って、あわただしく過ぎて行くものなのですね。でも、ようやく身辺が落ち着いて来たような気がします。

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笑わない娘(05)

 あやうく、リジルは、声に出して答えてしまいそうになった。――あたしの幸せは、もう無くなってしまったの。もう、どこにも無いの。だから。
 セレンは、「静かに」という仕草をした。リジルははっとして、開きかけた口をつぐんだ。そう、一言も口をきいてはいけない。この人は本当に、あたしの味方をしてくれるんだ・・・。
 セレンは、労わるように言葉を継いだ。
「ごめんね、答えにくいことを訊いてしまって。いいんだ。君が、今日よりも明日、明日よりもあさってを、君の望むとおりの1日に変えていくことができるなら。ね?」
 微笑みかけてくれた、その優美な笑顔に思わず見とれながら、リジルは、夢でも見ているような気持ちになった。男のひとなのに、なんだか女神様のようだ、と思った。さらさらと流れ落ちる月色の髪。長い睫毛の下の、優しい緑の瞳。リジルの願いを、一緒に祈ろうと言ってくれた。でも、あたしの願いは。あたしの願いは・・・。
 リジルの瞳が揺れた。セレンは片手をあげ、乙女の柔らかな栗色の髪を撫でて、言った。
「かわいそうに」
 リジルは、はっとして大きく目を見開いた。心の奥で閉ざした扉に、何かが届いて、細くまっすぐに差し込まれていた。ゆらりと、目の前がかすんだ。どうして。だめ。だめだ。だって、あたしは・・・。
「泣いていいんだよ」
 そう言われて、気がついたときには、リジルの両の頬を、大粒の涙がぽろぽろと流れ落ちていた。喋らなくなってから、「かわいそう」だと何度も言われたけれど、こんなに素直に聞いたのは初めてだった。そうか、あたし、かわいそうだったんだ・・・。
 自分が「かわいそう」なことを受け入れて、やっと気付いた。リジルは、編んでいた服から指を外した。その意図を察したかのように、セレンが立ち上がって、脇にどいた。リジルは、かがんで、この1年間大切に編み続けて来たものを、ぜんぶカゴから出し、まとめて、暖炉の火の中に放り込んだ。
 草の燃える匂いが広がった。リジルの1年間が焼けて行く。でも、そう、何が一番「かわいそう」かと言ったなら、なりふりかまわず他人の不幸を一心不乱に願い続けた、そのことが一番みじめだった。そんなことにも気づかない自分が、一番「かわいそう」だった。
「リジル。それで良かったの?」
「・・・ありがとう」
 乙女は、深々と頭を下げた。1年ぶりに発した声は、ひどく掠れていた。
「無理に喋らなくて大丈夫だよ。ああ、そうだ」
 セレンは台所に行って、はちみつの瓶を持ったジャンを連れて戻って来た。
「おまえ、喋れるようになったって、本当か?」
「ジャンおじさん」
「わっ」
「たくさん心配をかけて、ごめんなさい」
「・・・うん。うん、いいんだ。ほら、はちみつだぞ。のどにもいいだろう」
 その晩、リジルは夢を見た。夢の中で、あの不気味な魔法使いが家に入って来て、暖炉の灰をかき混ぜて嘆いたあと、出て行った。朝、リジルが目覚めると、嵐は止んでいた。

あと1回あります。

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コメント

リジル、気が付けて良かったね。
わたしもセレンに会いたいな・・。
幸せな時間をありがとうございました。
(=^・^=)

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

作者の力量不足でリジルが救われなかったらどうしよう、と、ドキドキしながらこの場面を書きました。
書き上がって、んー、やっぱり伝えきれていない部分がある気もしますが、ひとまずリジルを助けられたから良しとします。

セレンに会ってみたいと、言っていただけて光栄です。
いつか、うさパンさんの夢の中にでも現れたなら、仲良くしてやってくださいね。

こんばんは^^

じ~んときて泣けてしまいました つД`)・゚・。・゚゚・*:.。
リジルよかったね(> <)

みんな優しいなぁ。
セレンもずっと待っててくれたおじさんも。

「・・・うん、うん、いいんだ」重い言葉ですよね。
重くて、思いやりのあるconfident

次回も楽しみにしてます~^^

弥沙さん、
コメントありがとうございます♪

涙してくださった弥沙さんも、優しいかたですね。
世の中には、優しいひとが、いっぱいいる・・・confident

フルートやゼラルドなら、もっと厳しかったり、冷たかったりしただろうと思います。
それでも彼らなりのやり方で、リジルを救えたかもしれないけれど・・・、んー、どうかな。

お時間を何日かいただいて、次回はこの篇の最終回。お話をたたみます。
穏やかに終わろうと思います。

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