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  • (2017/12/11朝)また休日出勤などあったので、本編進んでおりません…。ふえーん…。

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黄昏色の旋律

 町のあるはずの場所には、廃墟しかなかった。地図が古かったのだ。丁寧に情報を集めながら進んでいても、時には、こんなこともある。
 すでに、日はだいぶ傾いている。秋の日が暮れるのは早いから、一行は速やかに決断しなければならない。このまま廃墟で夜を過ごすか、近くに町のあることを期待して先に進むか。彼らはいったん、馬を下りて相談する。
「この先を見て来る」
と、金髪の王子は、地図から目を上げて、東へと伸びる道を指した。
「地形から見て、町が移っているかもしれない」
「いや。おそらく、近くに人は住んでいないだろう」
と、黒髪の若者が言う。手の中に聖札の束を収めており、何枚目かをめくりながら、
「ただ・・・別の廃墟なら、ありそうだ」
「では、それを見て来る」
 フルート王子は、トンと地を蹴って愛馬に飛び乗った。
「使えそうなら、合図するから来てくれ」
 言いながら、すでに馬の腹を蹴って、駆け出している。
「・・・こういうときに返答を確かめないのは、彼の改めるべき点ではないだろうか」
 つぶやきながら聖札をしまいこむゼラルドに、
「ひとりごとで嫌味を言うほうが、よほど改めるべき悪癖だと、ぼくは思うけれどね」
 セレンが応じて、月色の長い髪を束ね直す。また口論になるのだろうかと、フィリシア姫が、やさしいおもてに困ったような表情を浮かべる横を、つめたい秋の風が通り過ぎて、豊かな青い髪を揺らす。
 幸い、たいした言い争いにはならないうちに、王子の「合図」が聞こえて来た。暮れかけた空を駆け昇る、鮮やかな笛の音色。どうやら向こうの廃墟のほうが、夜を過ごすのに適しているらしい。

 めいめい、馬に乗って移動を再開した。笛の音は、いつものように、つい聞き惚れてしまう美しい曲を奏でている。しばらくは、みな口をきかずに耳を傾けていたが、ふと、フィリシアが言った。
「なんだか、今日は、すこし寂しくて悲しい曲ね・・・」
「そうだね」
と、セレンが肯定した。なにげない調子で続けて、
「秋の夕暮れに、ひとりで廃墟に立っているのだから。まあ、そうとわかっていても、聞いているうちに何となく、自信がなくなるけれど」
「自信?」
「やがて王となるひとの孤独を、ぼくたちは少しでも和らげることが出来ているのかな?」
「出来ているわよ!」
 驚いたようにフィリシアは言って、それから、言い直した。
「他の誰に出来なくても、あなたには出来ているわ。そうでしょう?」
 セレンは笑った。本当は、この姫君も、フルートにとって特別な存在だ。
「そうだね、言ってみただけ。もうひとつ聞いてもいい?」
「なあに?」
「フルートがこういう寂しい曲を奏でていても、『彼らしくない』とか、『寂しいはずがない』とか、言わないのは、どうして?」
 フィリシアは、目をぱちくりさせた。
「どうしたの、セレン? だって、あのひとは今この曲を吹いていて、私たちはそれを現実に聞いているのだもの。らしいも、らしくないも、本当も嘘も、あるはずがないわ」
「ふふ、ごめんね。つまり、だからこそ、あの王子様は、こんな秋の日の夕暮に、廃墟でひとり、ああいう寂しい悲しい曲を、安心して吹いていられるのだと思うよ」
 フィリシアは、大きな青い目をぱちぱちさせて、しばらく黙って考えてから、そっと尋ねた。
「・・・私も信用してもらっている、ということ?」
 セレンは笑って、答えなかった。それでも王女は満足して、目を伏せ、馬上に揺られて、あとは何も言わずに、笛の音に耳を傾けていた。

 建物の壁にもたれて笛を吹いていたフルートは、仲間たちが到着するのを見て、曲を終わらせることにした。
 じきに日が沈む。群青色の夜空には、細い三日月が浮かんでいる。
 旅を始めてから、すでに半年余りが過ぎており、目的地までは、あと半年もかからない。
 今はただ、今という時間を大切にしよう。明日を恐れまい。
 そう思いながら、彼は静かに、即興曲を閉じた。

(完)

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コメント

予告を見て楽しみにしていました(=^・^=)✿
それぞれの色(四人)が寄り合ってゆるい三つ編みになってる・・
そんな読後感でした。好きなお話です。

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

少し地味でも、みんなが揃ってるお話を書きたいな、って。
ゆるい三つ編み、そう、そんな感じを目指して書きました!
ん、四人だから四つ編みなのかしら?

本当は、ミルガレーテも出してあげたかったのだけれど、うまく編み込めませんでした、残念です。

ふふっ♪ほんとだ!四つ編みですね(=^・^=)✿

月路さんコメント大変ご無沙汰していますo(_ _)o
ROMですがいつも連載拝読しております

ちょっと体調が良いので不義理になっているお詫びに
RAP調のポエムをオマージュpresent贈らせて戴きます

note『逢魔ヶ刻のセレナーデ』

黄昏色の旋律…
群青色の秋の空に
紡ぎ出される群像劇

貴公子たちとプリンセス

友情と信頼と恋愛感情の二乗の事情の慕情

更け行く秋の日に
暮れなずむ陽の翳りに
やがて来る旅の終わりに

決別の岐路感じつつ
センチメンタルに口笛が染み渡る

明日を恐れずに
今、この時を噛みしめながら

口笛は奏でる
刹那の切なさを乗せ
小夜曲(セレナーデ)を

細い弧月はそっと見ていた
銀の月は見ていた

ずっと静かに見ていた…


ではまた

とり3さん、
コメントありがとうございます♪

わお、とり3さんのラップ調ポエムは久しぶりですね!
丁寧に作られていて、感激です。
何回も読んじゃいました。ありがとうございます!
それで、えっと、どうでもいいことではありますが、ひとつだけ。
フルートは口笛も得意ですが、今回は楽器の笛を吹いています♪

とり3さんのブログ、よく見に行っているのですが、
コメントご無沙汰していて、こちらこそ、すみませんsweat01

月路さん今晩は

ああ、やらかしちゃいました
大変失礼しました(人><。)ごめんなさい

主人公の命名に関わるアイテムなのに…

中世の木管楽器
ルネッサンスフルートみたいな横笛
をイメージしたらいいですかね?

合図の笛で口笛連想では短絡的過ぎですね(--;)
寛大なお言葉有り難うございます

笛の音が染み渡る

フルートが奏でる
(主人公と横笛両方の意味で)

に置き換えてくださいませ

ではまた

こんばんは♪
情緒が鈴みたいに震えるようなお話でした。(わかりにくい感想でごめんなさい(汗)
雪村さんのお話はどれもですが、読むと自然と風景が浮かんできます。
石造りの廃墟の侘しさを感じる佇まい、群青色に染まった空に橙色(もしくは銀色)の三日月、馬に乗った旅人たちのシルエット、そして今回はなぜか勝手に砂丘を舞台に想像してしまいました。素敵だなあって、読むたびうっとりしてます。

フルートに対するゼラルドとセレンの会話を読んだとき、無意識に私もフィリシアと一緒の表情を浮かべていました(笑) これぞ雪村さんマジック!(笑)

しんみりしつつも優しくて、適温よりちょっとだけ涼しい秋の夜風みたいな読後感でした。どのお話も好きですが、このお話は特にお気に入りのひとつのようです。
素敵なお話ありがとうございますconfident

とり3さん、
フォローありがとうございます♪

修正、お手間をおかけしました。
でも本当に、この王子様は(王子様のくせに)口笛が大変得意なので、
そのような描写があまりないのに、そういうイメージを持ってくださったことを、
とても嬉しく思っています。

どうもありがとうございました!happy01note

のんさん、
コメントありがとうございます♪
最近あちこちでニアミスしていますが、私はのんさんの引き立て役ですから☆

今回のような、起伏のあまりない地味なお話を書くときは、いつも、「あまりニーズはないだろうけど…」と思いながら、遠慮がちに更新している(つもり)ので、「気に入った」とおっしゃってくださる方が、1人でも2人でもいてくださることに、作者として救われています。
なにげない日常の光景のひとつひとつが、彼らにとっても、私にとっても、かけがえのない宝物です。
共鳴していただけて嬉しいです。ありがとうございます!

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