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ひとこと通信欄

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SF「夜景都市」(未完)

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夜景都市(プロローグ)

 彼はその時、遥か遠くに、確かに両親の悲鳴を聞いた。操作盤の上で彼の手はびくりと跳ねて誤ったキーを叩き、作りかけの浮揚球は目の前でカシャンと壊れた。
《ジュノリス!》
と、彼を呼んだ父の思念が、先に途切れた。
《父さん?・・・母さん?》
《ジュン。セラを、お願いね》
 母の思念も、やがて途絶えた。彼は衝撃に身を震わせた。声には出さず、力の限り呼ばわった。
《父さん! 母さん! ・・・セラ!》
 彼は部屋を飛び出した。そのまま玄関まで駆け抜けると、ちょうど空車で通りかかったエアカーをつかまえて、両親が今朝早く、弟を連れて出かけていった、3つ向こうの市の博物館へと目標をセットした。
《父さん! 母さん! セラ!》
 エアカーは上昇して走り出す。ジュノリスは背もたれのクッションに沈み込むと、両腕で自分の体を抱きしめた。全身が震えて止まらなかった。彼には分かっていた。二人の思念の途絶えた今、少なくとも父と母に関しては、もはや生存の望みなど無いに等しいことを。
 では、あの子は。あの子はどうしただろう?
(一緒に行けば良かった)
 体の内側からのぼって来る寒さにガチガチと歯を鳴らして、彼は悔いた。
(ぼくはひとりなんだ。もし・・・もし、セラも・・・セラも・・・死んでいたら)
 世界は空虚に乾き、彼ひとりを残して、急に薄っぺらな紙切れに等しくなってしまっていた。
《セラ!》
 彼は、無駄と知りつつ呼んだ。そして、それよりもさらに無駄と知りつつ、両親のことも呼んだ。
《父さん! 母さん――!》
 気が付くと、エアカーは速度をゆるめ、着陸態勢に入っていた。
(・・・あそこだ)
 地上が近づくにつれ、遠目にもはっきりとわかる無残な事故現場と、群がる無遠慮な青い警察の車が見えた。彼の心臓は現実に直面して再び衝撃に打たれ、同時に、狂ったような最後の希望が、渦を巻いて猛った。まだ、彼は自分の目で確かめてはいない。まだ、彼はひとり残されたわけではない。
 博物館の上空には交通管制が敷かれていて、エアカーは大きく旋回し、いくらか離れた地点に着陸した。彼は降り、エアカーは飛び去った。さあ、今こそ、目を開けて、真実を見なければならない。
 近づいて来る黒髪の少年を認めて、警備ロボットが注意を促した。それに応じて、
「事故に会ったのは、ぼくの家族なんだ」
 少年は言った。まもなく、一人の警官が少年の前に立った。
「事故にあわれた方のご家族なんだって?」
「はい、ぼくは長男です」
 少年は答えて、低く続けた。
「それで・・・ぼくの家族は、どうなったんですか」
 若い警官は、少年をじっと見た。年のころは15、6。緊張し、青ざめているが、覚悟ができているように見える。警官は、それで、言った。
「今、君のご両親をあの瓦礫からお出ししているところだ。生死はすでに確定している・・・お気の毒だった」
 少年の頬がこわばった。
「じゃあ・・・」
 彼はうわずった声で言いかけ、その言葉を飲み込み、真摯な眼差しを地に伏せた。
「入ってもいいですか」
 警官はためらった。しかし、その時、向こうでザワザワと動いていたロボットと警官たちが、
「ようし、そのまま! そこに下ろして! ・・・おい、子供がいるぞ」
 その声が聞こえるやいなや、少年ははっと顔を上げ、するりと警官の横を通り抜けて、崩れた建物に向かって駆け出した。警官は、あえて制止をしなかった。
 難破した宇宙船から発射された救命艇が、こともあろうに特権非常信号を出しながら死人を乗せて突っ込んで来たこの不幸な事故で、博物館の一部は粉々に壊れてしまっていた。破壊された展示室は、遠い宇宙の果ての、星間連合に加盟すらしていない辺境の星々についての部屋で、そこにいた3人の人間が、この事故に巻き込まれたのだった。
 瓦礫の下から、男女ひとりずつの遺体が、ロボットによって既に運び出されていた。そして、ふたつの遺体の下に庇われて奇跡的に生き残った、うずくまる10才ばかりの子供が、別のロボットによって引きずり出された。子供はよろめきながら立ち上がろうとしていて、急いで駆け寄った一人の警官に助けられて自分の足で立った、が、虚ろな目を瞬きもせずに開いたまま、放心していた。警官が呼びかけても揺すぶっても、子供からは何の反応もなかった。
「・・・セラ!」
 けれども、その澄んだ力強い声がしたとき、子供はびくっとした。背を伸ばし、目を大きく見開いて、辺りを見回した。
「なんだ、君、どこから入って来た」
 警官の制止を受けながら、もう一度、その声が呼んだ。
「セラ!」
 子供の目が焦点を結び、声の主を見つけ出した。呼んだ者と呼ばれた者は、距離を挟んで、はっきりと互いを認め、向かい合っていた。呼んだほうが駆け出した。それを制止する手は、今度は無かった。
 ジュノリスが弟をかたく抱きしめると、弟の白く凍った表情に、やがて生きた血が通いだした。見開いた目には、涙があふれた。そのまぶたはすぐに力尽きたように閉じられ、小さな体は兄の腕の中で、声にならない慟哭に震えた。そして、兄の少年は、そのとき、初めて聞いたのだった。
《・・・ジュン!》
 その思念は、激しくまっすぐに、彼の胸になだれこんで来た。
《セラ、おまえ・・・》
《ジュン!》
 それは、弟が生まれて初めて発した、音声ではない言葉だった。まだ制御を知らぬ、剥き出しで純粋な、強い思念だった。あるいは、それを発していることすら、本人は知らないのかもしれなかった。
 自分は物心ついてより心話に慣れ親しんで来た兄は、弟の思念を包むように受け止めて、腕にぎゅっと力を込めた。
《セラ・・・》
「失礼だが」
 無粋な警官が、その抱擁を妨げた。いつのまにか、人の数もロボットの数も減っていた。
「身元を確認したい。ご両親の身分証を確認させてもらったが、念のためだ。君たち、名前は?」
「ぼくは、ジュノリス・カイザー。これは弟のセルアスです」
 ジュノリスは苛立ちながら答えた。セルアスは兄の腕の中から警官を窺い、こくりと首を縦に振った。強烈な思念波は薄れつつあった。それが二度と現れないかもしれないことを、ジュノリスは怖れた。
 中年の警官は、鷹揚に頷いた。
「よろしい。では、君たちは帰りなさい。ご両親のことはお気の毒だった。このあとの手続きについては、いずれ君たちの市から連絡が行くだろう。家で待っていたまえ」
「両親は・・・両親の体は、どうなるんですか」
 ジュノリスは訝りながら聞いた。さっき着いたときと、警察の応対は微妙に違っている。最初の若い警官よりも、こちらの警官のほうが偉いようだが、理由はそれだけではなさそうだった。
 事情聴取もしなくていいんだろうか。もっとも、ぼくがどうして駆けつけることができたのか、尋ねられても困る・・・と、彼は思い、家族全員の消息を確かめた今はもう何を恐れることもなく、警官の心を読んだ。
「ご遺体はこちらで市にお送りしておこう」
 警官は答えながら、こう考えていた――うちの市民でなくて良かった。しかも亡命者だったとは。いっそ子供たちも共に死んでいたほうが、本人たちにとっても、市にとっても、幸せだったかもしれんな。
 ジュノリスは心を閉じた。
「わかりました」
 彼は冷静に言った。サイラインという星は、そういう所だった。
「大変お世話になりました。両親のこと、くれぐれもよろしくお願いします。セラ、行くよ」
「うん」
 セルアスは兄に寄り添った。ジュノリスは下層道路で、また無人のエアカーをつかまえた。人口の太陽はもう沈みかけて、辺りは暗くなりつつあった。
 家に帰ると、そこはもう、4人ではなく、ふたりだけの家だ。ジュノリスの部屋では、作り損ねた浮揚球のかけらが、つけっぱなしの操作盤の上でどろどろに溶けていた。いまさら、スクールの宿題など、やり直そうとも思わない。彼は操作盤のスイッチを消し、弟の部屋で、その夜は二人で眠った。眠る前に、少し話をした。もう2度と通じないかと懸念していたが、弟の思念は不安定ながらもちゃんと反応した。ジュノリスは安心した。そして、それはセルアスも同じだった。
 彼らは、ひとりではなかった。両親を失った涙は、もう乾いていた。

 市から連絡が来たのは、3日も経った後のことだった。兄弟は二人だけで<死者の海>に行き、両親の葬式を済ませた。
 ひと月後、一人の男がジュノリスを訪ねて来た。星間連合に属するその男が携えて来た話を、亡命者の息子は断ることができなかった。自分と、何よりも、弟の生活を守るために。
 20歳でスクールを卒業すると同時に、ジュノリス・カイザーは、星間連合の特別捜査任務に就くべく、少年時代を過ごした星をあとにした。一般人にはその存在さえさだかではない、闇の世界で密かに恐れられている、いわゆる星間特捜官である。
 ジュノリス・カイザーには、今後いかなる私的な通信も許されはしない。付け加えるなら、惑星エムの出身者に特有の心話能力をもってしても、同じ大気圏内にいなければ、意思を伝達するのは不可能である。

 しかし、それももう、今では3年前のことであった。

(プロローグ 完)

(→ Act.01 & Intermission 01 へ

500回記念、おそまつさまでした~。
次回更新は、これのあとがきです。

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コメント

こんばんは~!
待ってましたとばかりに、早速楽しませていただきました!
「遥かな~」を読むときって大体絵本の挿絵みたいな感じの柔らかいタッチの絵が頭に浮かぶんですけど、このお話はアニメーションで頭に浮かびました! 
続きないってわかってるのに、勝手にあれこれこの先を想像して「読みたい!」ってなっちゃいましたよ、も~(笑)
ジュンは強い子ですね。守るべき存在があるからこそなんだろうけど、大人の視点でみると、そこがちょっぴり悲しい&心配だったり。
それにしても、突然の悲劇。壊れた日常と新しい目覚め。そこからのちょっとダークな感じを匂わす展開。ドキドキする。妄想脳が刺激されまくり(笑)
今日はSFちっくな夢をみちゃいそうです♪

のんさん、
コメントありがとうございます♪

続きは少しだけあって、「夜景都市」というタイトルに沿う内容になっています。
(プロローグの段階だと、夜景都市、関係ないですもんね。)
本編のジュンを見てもらいたい気持ちもありますが、お話が中途半端なので扱いに迷います。

いずれにしても、お気に召したようで良かったですnote
このお話の成り立ちについては、明日のあとがき記事で書きますね。
(うちのブログは、中1日あけるくらいで、常連様のご訪問が一巡するみたいです。)
ご訪問&ご感想、ありがとうございました!happy01

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