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一角獣の角(04)

 ミルガレーテは、対岸から見えないようにして涙をぬぐったあと、来たときと同じように湖を渡った。頼まれたことは終わったのだから、ほかの人間に見つからないように、すみやかに報告して立ち去らねばならない。
 湖のこちら側では、少しずつ明るくなる朝の空の下で、仲間たちが心配そうに彼女を待っていた。ミルガレーテは、声を励まし、笑顔を作って、報告した。
「戻りました。削らせてもらえたわ。ゼラルド、これで足りる?」
「十分だ。こんなに多く・・・」
「優しい一角獣が、削らせてくれたの」
 黒髪の若者は、うなずいて、薄い紙を2片取り出した。それぞれの紙の上に、角の欠片を1つずつ受け取って、包むように紙を折りたたみ、指で押さえて何かを唱えたあと、そっと包みを開くと、欠片だったものは、どちらも、さらさらと滑らかな細かい粉になっていた。
 ゼラルドは、粉が風に吹き飛ばされないように、急いで再び紙を折りたたんでから、
「では、この片方は、聖なる生きものに恩返しをするために使おう」
 ひとりごとのように言って、岸辺にかがむと、片方の紙包みを水面に浮かべた。包みは湖の中央に向かって水面を滑って行き、くるくると回ったあと、沈んで行った。
「あれは?」
と、フルートが尋ねると、
「この湖水がいつまでも清くあるために、人のできることだ」
と、ゼラルドは答えて、立ち上がった。ミルガレーテが曖昧な表情で彼を見つめていると、ちらと視線を返し、かすかに笑った。
「大丈夫だ。術者の死後も、効力は続く。いま生きている人々の、子の代になっても、孫の代になっても、さらにその先も・・・、いつか天のいたずらにより、この湖が干上がったり埋められたりしない限り、この水はいつまでも、聖なる生きものが口にすることのできる、清い水であり続けるだろう」
「ありがとう!」
 ミルガレーテは晴れやかな笑顔になった。そして、胸の前で手を組み合わせ、目を閉じて祈った。
「どうか私たちの感謝が、あの一角獣と仲間たちに届きますように」
「君にも感謝している、ミルガレーテ」
「え?」
 姫君が目を開けると、ゼラルドは、珍しいほど和らいだ眼差しを彼女に向けていた。
「もう片方の包みは、調合して、必ず有効に使わせてもらう。ありがとう」
「いえ、私は別に・・・。私、そろそろ行かなくちゃ」
 ミルガレーテがそわそわするのを、フィリシアが微笑みながら肯定した。
「そうね。そろそろ、人が起きて動き出す時間ね」
 光り姫は、うなずいて、ふわりと空気に溶けるように消えて行った。
 旅の仲間たちは、もう一度、湖を眺めやった。
 対岸に、すでに一角獣の姿はなかったが。
 湖は、祝福を喜ぶかのように、蒼く、蒼く、輝いていた。

(完)

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コメント

言葉にするのはもどかしいですが
とても凛とした美しくて優しい健やかなお話でした。
ありがとうございました。(=^・^=)

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

私が書いたものよりも、うさパンさんの頭の中に広がった物語のほうが美しいconfident
そのことが嬉しいです。そのように読まれたいです。
そのように読んでくださって、ありがとうございますshine

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