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ひとこと通信欄

  • (2017/8/13朝)創作活動が進みません~。少しばかり夏休みをいただきます~。

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SF「夜景都市」(未完)

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光り姫(トーナメント参加用)

 幼いころに、静養のための城で、一度だけ妖精の姿を見たことを、フィリシア姫はその後もちゃんと覚えていた。
 妖精たちが、月の光で作った首飾りを自分にかけてくれたことも、その結果、自分の病が瞬時に癒えたことも、とうてい忘れることのできない強烈な体験だった。
 城には、静養の必要がなくなったあともよく訪れたが、あれ以来、妖精の姿を見ることはなく、月日は流れ、青い髪の姫君は幼さを残しながらも、次第に娘らしく成長していた。

 その夏も、フィリシアは静養の城に滞在していた。
 ある夜、夢の中で、妖精たちの声を聞いたように思った。
「お久しぶりです、フィリシアさま」
「時が満ちました、フィリシアさま」
「明日の午後、お迎えにあがります」
「ミルクをひと匙、はちみつをひと匙、ワインをひと匙用意してお待ちくださいね」
 翌朝、目を覚ましたフィリシアは、言われたとおり、ミルクをひと匙、はちみつをひと匙、ワインをひと匙用意した。これがただの夢ではないと信じて。
 いよいよ午後になった。
 突然、ぱたりと周りの時間が止まったかのように、特別に静かな時間が訪れた。
 フィリシアがどきどきしながら待っていると、部屋の中で、小さな声がした。
「フィリシアさま、私達の姿が見えますか」
 声のするあたりを眺めてから、ぐるりと部屋を見回して、もう一度よくよく見たあとに、フィリシアは悲しそうに言った。
「いいえ、見えないわ」
「悲しまないで。もうそういうお年なのです」
「でも」
「大丈夫。ほんの少しの間、魔法の力で見えるようにします。このミルクとはちみつとワインに・・・」
 その言葉とともに、何かの滴が垂らされたように、それぞれの液体が揺れた。
「・・・さあ、これで良し。全部舐めてくださいな」
 フィリシアは言われたとおりに、ミルクとはちみつとワインを舐めた。すると、部屋の中にぼんやりと漂う、いくつかの小さな人影を見分けられるようになった。透き通った羽を震わせ、ふわふわと浮いている。
「ああ、妖精さん! 見えるわ!」
「よかった、魔法が効きましたね。では、参りましょう」
「どこへ?」
「まずは、湖へ」
 城を取り巻く緑を抜けると、さほど遠くないところに丘があり、丘を下ると湖がある。
 以前、ばあやと一緒に遠足に来たことのある道を、フィリシアは妖精たちに導かれて歩いた。なぜか誰にも出会わない。
 道すがら、妖精たちはフィリシアに話した。
「私たち、フィリシアさまにお願いがあるのです」
「フィリシアさまのお年を数えて待っていました」
「光り姫さまのご友人になって差し上げてほしいのです」
 光り姫さま。たしか、小さい頃にもらった光の首飾りは、本当はそのひとのためのものだった。
「光り姫さまって、どんな方?」
 訊くと、妖精たちは口々に答えた。
「お優しい方」「お可愛らしい方」「お淋しい方」
 それなら友達になれるかもしれない、とフィリシアは思った。妖精たちは補足して、
「元は人間でいらしたのに、人間のお友達がいらっしゃらないのです」
「人間の目に触れてはならないきまりがあるのです」
「選ばれた人間とだけ、お会いできるのです」
「私、選ばれたの?」
 フィリシアは尋ねた。妖精たちは、少し緊張した声で答えた。
「いいえ、まだ」
「でも、私たち、フィリシアさまが選ばれると信じています」
「選ぶのは、剣なのです。これからご案内します」
 話しているうちに、湖についた。岸には、小舟が一艘、夏の風に揺れていた。
「どうぞお乗りください」
 言われて乗り込むと、ひとりでに動き出す。
 湖の真ん中の浮島で、小舟は止まった。
「どうぞお降りください」
 言われて降りると、浮島には、小さな石造りの祠があった。きっと、この中に。
 果たして、フィリシアが祠を開けると、中の台の上には、燦然と輝く黄金の剣が、鞘に収まった状態で乗っていた。柄の部分には、深い青色をした宝石が嵌め込まれている。
「どうぞ剣を抜いてください」
 妖精たちが、さやさやと囁きかける。フィリシアは剣を持ち上げた。見た目よりも、ずっと軽くて、少女にも容易に扱えた。装飾用の剣なのかもしれない。
 鞘と柄を持って、思い切って引き抜くと、剣はすらりと抜けた。刀身も金色だった。
 妖精たちは、わっと喜びに沸いた。
「抜けたわ! ああ、やっぱり!」
「フィリシアさまは、剣に選ばれました!」
「光り姫さまに会って差し上げてください。どんなにお喜びになるでしょう!」
 フィリシアは、導かれるまま、剣を鞘に収めて手に持ち、小舟に戻った。
 小舟は再び、ひとりでに動き出し、さっきとは違う岸辺に寄りついた。
 岸辺には白い花がたくさん咲いていて、そこに、編みかけの花冠が置いてあるのがフィリシアの目に止まった。
 そっと拾い上げたフィリシアに、妖精たちは微笑んだ。
「光り姫さまが編んでいたのだと思います」
「新しいご友人のために。初めてのご友人のために」
「剣を抜いて、ここに置いてください、フィリシアさま」
 フィリシアが言われたとおりにすると、妖精たちは呼ばわった。
「光り姫さま。光り姫さま!」
「どうぞおいでください」
「フィリシアさまがお待ちですよ」
 すると、背後でさらさらと時の砂が流れるような感覚があって、フィリシアははっとして振り向いた。
 が、誰もいなかった。ぐるりと見回したが、やっぱり誰もいなかった。
 妖精たちを見ると、困ったような顔をしていた。
「いま、一瞬おいでになったのですが」
「緊張して逃げてしまわれました」
「どうしましょう、きっと近くにいらっしゃると思うのですが」
「・・・探しましょう!」
 フィリシアは言った。光り姫に会ってみたい気持ちが強くなっていた。妖精たちから慕われている、やさしい光り姫。緊張して逃げてしまった光り姫。花冠を編んでくれていた光り姫に。
 フィリシアと妖精たちは、呼ばわりながら岸辺を歩いた。
「光り姫さま。光り姫さま」
「どうか出て来てください」
「フィリシアさまがお待ちですよ」
「そうよ。私に花冠、編んでくださいな」
 歩いているうちに、小さな洞窟があった。その陰から、白いドレスの裾がのぞいているのを、フィリシアが見つけた。
 妖精たちに、シーッと言って、フィリシアは話しかけた。
「こんにちは、光り姫さま。フィリシアと申します。私」
 どきどきしながら、息を吸って、相手に届けと想いをこめて言った。
「私、あなたのお友達になりに来ました!」
 白いドレスの裾が、ふわっと揺れた。それから・・・おずおずと、本当におずおずと、岩陰から、その人が出て来た。白い肌、金色の髪、金色の瞳、薔薇色の唇。光り姫の名の通り、輝くような美しさだった。フィリシアよりいくつか年上に見えるが、ひどく緊張しているようだ。その唇が開いて、かすかに震える声が告げた。
「こんにちは。私の名はミルガレーテ。お会いできて嬉しいです」
 それが、フィリシアと、<光り姫>ミルガレーテとの出会いだった。
 今度は逃げませんように、と思いながら、フィリシアはにっこり笑って手を差し出した。
「手、つないで行きましょう、ミルガレーテ」
 ミルガレーテはそうっと岩陰から離れて、フィリシアの手を取った。夏だというのに、指先のひんやりと冷えた手だった。
「さっき見たわ。私に花冠、編んでくださるの?」
 尋ねてみると、こくんとうなずく。見た目はフィリシアより大人で背も高いのに、まるでフィリシアのほうが年上であるかのようだ。二人は手をつないだまま、白い花の咲く岸辺まで戻って来た。妖精たちも一緒だ。
 ミルガレーテはフィリシアの手を離して、ふわりと座った。編みかけの花冠を手にとって、続きを編み始める。
 フィリシアも、隣に座って、新しい花冠を編み始めた。ミルガレーテのために。
「できたわ、フィリシア」
「ちょっと待って・・・うん、私もできたわ」
 二人はお互いに花冠をかぶせあった。目が合って、ミルガレーテは恥ずかしそうに微笑んだ。ああ良かった、笑ってくれた、とフィリシアは思う。なんて可愛らしく笑うお姫さまなのかしら。
「よく似合っているわ、フィリシア」
「あなたもね、ミルガレーテ」
 二人は少し打ちとけた気持ちになって、ぽつりぽつりとおしゃべりをした。それでフィリシアは、この新しい友人について、いくつかのことを知ることができた。
 ミルガレーテが、古代レティカ王国の、最後の王の一人娘だったこと。
 東方の反乱によって王が亡くなる直前に、妖精王のもとに預けられたこと。
 その際、13本の宝剣に魔法がかけられ、世界中に散らばったこと。
 13本の宝剣が再び一堂に会するとき、ミルガレーテも人の身に戻ること。
 フィリシアが手に入れた剣は、その宝剣のうちの一本であること。
「宝剣は、私の友達を選んでくれるの。これが最初の一本目」
と、ミルガレーテは黄金の剣の鞘を撫でながら言った。すでに剣は鞘の中に収められている。
「この柄の青い宝石の意味は、誓いと友情。私を呼び出せるのは、この最初の剣だけよ」
「呼び出すって?」
「もし・・・もし、フィリシアが私に会いたいと思ってくれることがあったらね。そうしたら、この剣を抜いて、私の名を呼んでくれればいいの。月が満ちて行く時期なら、それで私、あなたのもとに現れることができるわ」
「月が満ちて行く時期って?」
「新月を過ぎてから、満月までの間。それ以外のときは私、何もわからずに眠っていて、動くことができないから」
「勝手に呼び出したら、迷惑したりしない?」
「ぜんぜん迷惑なんかじゃないわ。うれしい・・・と思う」
「それなら、呼ぶわ。明日も、あさっても。また一緒に遊びましょう」
「ありがとう。待ってるわ」
 ミルガレーテはにっこりと笑った。ああ良かった、また笑ってくれた。
 妖精たちが、遠慮がちに声をかけて来た。
「光り姫さま、光り姫さま」
「なあに?」
「フィリシアさまの呪い、見てあげてください」
「呪い・・・」
 ミルガレーテは真剣な顔つきになってフィリシアに向き直った。フィリシアは少しの間おののいた。呪われた身で、友達になってはいけなかっただろうか。しかし、とがめられる気配はなかった。
「妖精たちから聞いているわ。強力な呪いがかけられているとか」
「私、よくわからないの。お父様もお母様も、教えてくださらなくって」
「見てみるわ。私、少し解呪の呪文が使えるの。両手を出して」
 フィリシアが両手を出すと、ミルガレーテはその手を取った。
「しばらく、静かにしていてね」
 そう言うと、柔らかな声で、魔法の呪文を唱えだす。フィリシアの周りに、ポウッと白い輪が浮かび上がり、複雑な模様を刻んでいく。
 ミルガレーテの声が、少し緊張して来た。フィリシアの周りに、二重目の輪が浮かび上がり、複雑な模様を刻んでいく。
 ミルガレーテの声が、苦しげになって来た。フィリシアの周りに、三重目の輪が浮かび上がったが、
「あっ」
 短い悲鳴とともに、三つの輪はカッと光ってかき消えてしまった。
 ミルガレーテは荒い息をしている。顔色が真っ青だ。
「大丈夫、ミルガレーテ」
「ごめんなさい、解呪できなかった!」
 ミルガレーテの目には、みるみるうちに涙が盛り上がって来た。
「ごめんなさい、フィリシア。せっかくお友達になってもらったのに、私、何もしてあげられなくて」
「呪いは解けなくても、やってみてくれたことだけで、私、すごくうれしいわ」
 フィリシアは本心から言った。
「呪いの中身はわかるの、ミルガレーテ」
「ええ、わかったわ。自分の国に・・・いられなくなるのよ」
 ミルガレーテは口ごもりながら、そう言った。それから、はっきりした口調で、
「たぶん、フィリシアはそのうち、旅に出ることになると思うわ」
「旅に?」
 そう聞いて、フィリシアの胸のうちに湧きあがったのは、しかし、おそれや不安ではなく、何かもっと、未知への期待に近いものだった。
「フィリシアがいやでなければ、私も一緒に行くわ」
「ありがとう。きっと一緒よ」
 話しながら、気がつけば、日が傾きかけている。
「今日はもう帰りましょう、ミルガレーテ。ちゃんと休んでね。明日、きっと呼ぶから」
「きっとよ、フィリシア」
 二人の姫君は、すでに友情で結ばれていた。

 幾年かののち、解呪の聖泉へと旅立つとき、フィリシア姫の荷物の中には、金色の宝剣がしっかりと収められることになる。

(完)

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独立して読めそうな作品を選び、元は連載記事だったものを1つにまとめてみました。
約4,900字。

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コメント

第4回 自作短編小説 トーナメント、準優勝おめでとうございます。

先日、機島さんのブログでご挨拶させて頂きました、トーナメント主催者です。
私のブログに「トーナメントの結果一覧」というページがございまして、
そこに、雪村さんの作品へのリンクを貼らせて頂きました。

不都合ありましたら、削除いたしますので、ご連絡下さい。

素敵な作品を読ませて頂き、誠にありがとうございました。

みん もっこすさん、
ご連絡いただき、どうもありがとうございます♪

アクセスログを見ると、トーナメント経由で、12人ほどの方々が読みに来てくださったようです。
投票経過を見ると、投票に参加しているのは10人くらいのようなので、21人のエントリーに対して、意外と少人数なのだな、という印象を持ちました。
でも、他のかたの作品を読むのも面白かったですし、他のかたから評価していただくのも、ワクワクして楽しかったです。
興味深いイベントに参加させていただき、どうもありがとうございました。
また、単品で読めるお話を掘り返して、機会がありましたら参加できたらいいなと思います。
これからもますますのご発展をお祈りしております!

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