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大道芸人の賭け(05)

「じゃあ、こういうのはどうだい、テッド。10人の妾と20人の奴隷を辞退して、あんたが屋敷を建ててもらったあと、普通に使用人を募ればいいんじゃないか?」
「だめだ、だめだ! 俺は何ひとつ辞退なんかしないぞ。全部、俺がこの腕で手に入れたんだ。全部、この俺のものだ!」
「そうか」
 ルークはナイフ10本を取り出した。1本を右手に持って、2、3回、投げあげては受け止めるのを繰り返したあと、
「仕方ないな」
 その1本を高く投げあげ、残りの9本を右手に移し、落ちて来たナイフを左手で受け止めた。
「領主様、投げていいですか」
「ふむ、やってみるがいい。そなたが成功したら、テッドへの褒美は取りやめよう」
「1本だって当たるものか」
 テッドの罵り声を聞き流し、ルークは的に向かい、ナイフを構えた――昨日とは違い、左手で。
 左手? と、テッドが思ったときには、既に1本目のナイフが放たれており――
 ―― タ、タ、タ、タ、タ、
 タ、タ、タ、タ、タンッ! ――
 あっというまの出来事だった。テッドは目を疑った。ルークの放ったナイフは、さっきテッドが当てたナイフをよけながら、10本とも、あの小さな的に突き刺さっていた。
 観衆が、どよめいた。自然に、拍手と、歓声が湧き起こった。
 領主も、驚いたようだった。
「これはこれは。して、本当にそなたは、何もいらないのか?」
「いりません」
「わしのために、働いてみないか?」
「旅の身ゆえ、お許しを」
「そうか、残念だ。では、この二人に拍手を!」
 観衆は拍手した。領主は立ち上がった。テッドははっと我に返った。
「お待ちください、領主様。それでは私は・・・」
「うむ? 褒美を取りやめる、と、そう言わなかったか」
「・・・!」
「しかし、まあ、この若者が何もいらないと言うなら、金貨110枚は、そなたにくれてやろう」
 領主が役人に合図をすると、役人はテッドに、ずしりと重い皮袋をくれた。テッドは皮袋を開けて、金貨の数を数えた。ちょうど110枚あった。
 ほっとして顔を上げると、もう領主の姿はなく、ルークの姿もなく、観衆はぞろぞろと引き上げて行くところで、傍らのメリーアンが泣き笑いしていた。
「おつかれさま、あんた。あたしは、これで良かったんだと思うよ」

 テッドは、街を発つことにした。メリーアンと一緒に門に向かう途中、偶然、ルークとすれ違った。ルークは、ちらりとテッドを見たが、知らん顔だった。それで、テッドも複雑な思いで目をそらした。
 道端にいた誰かが、「ごらん、はやぶさテッドだよ」と言った。
「ああ、あなたが、はやぶさテッドさん? もう発つのですか」
 呼ばれて、テッドがためらいながら振り返ると、声の主は、長い金色の髪をした、背の高い若者だった。
「ルーク、挨拶くらいしないのか? 君、右手でもナイフが投げられるようになったって、あんなに喜んでいたじゃない」
 行き過ぎかけていたルークが、「ああ、そうだっけ」と言いながら戻って来た。テッドを見た青い瞳に、少しだけ、親しさが戻っていた。
「ありがとな、テッド。元気で」
「・・・うん。ルークも、元気で」
「あたしからも。ルーク、ありがとう」
 メリーアンが言った。ルークは、テッドを見て、メリーアンを見て、にこ、と笑った。テッドとメリーアンも、笑った。
 じゃあ、と、手を上げて、彼らは別れた。気が付いてみると、テッドの胸は、不思議とすがすがしかった。
「よーし、俺も、もっともっと腕を上げてやるぞ」
と、テッドは口に出して言った。胸の中に、ルークの投げたナイフのリズムが刻み込まれていた。あれを越えてやるんだ。
 ―― タ、タ、タ、タ、タ、
 タ、タ、タ、タ、タンッ! ――

(完)

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コメント

この終わり方好きです(=^・^=)✿
5回にわたってドキドキワクワクハラハラ・・
とても楽しめました。
ありがとうございました!

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

セレンをおまけに付けた甲斐のある終わり方になった、かな?
気に入っていただけたようで、ほっとして、嬉しいです。
どうもありがとうございます!

面白かったです~happy02

すごいハラハラしながら見ました。
ルークの機転、最高!

最後もすごく好きです。
ほんと、ほんのちょっとの邂逅で人はわだかまりも解けるんですよね^^

弥沙さん、
コメントありがとうございます♪

お気に召していただけて嬉しいですheart04
ルークの行動を、ルークらしいと受け止めていただけたようで、良かった!

わだかまりを解く、ほんのちょっとのタイミング。ほんの一言。
つかまえるのが難しいこともありますが、逃したくないものです。

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