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ひとこと通信欄

  • (2017/4/23夜) お話もだけど、読みやすさとか、投稿サイトの使い方とか、いろいろ考え中。でも、ブログでの公開は、なくさないからね。

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SF「夜景都市」(未完)

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夜景都市(Act.01 & Intermission 01)

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~Act. 01~

 柔らかく澄んだヴィオルノの音色が、ポロポロと涼しげなメロディーを奏でた。ノックス記号言語によって、特捜官の専用ボード、個体識別名ルーン・ルーンが、報告を行っているのだ。
『・・・また、市街地の建築物についてですが、いずれも自動修復を怠って老朽化しており、その文化的価値は最大でもエクスカル評価レベル4ポイント23・・・』
 室内照明の光度を落としてあるので、部屋の中は外の夜闇とほぼ同じ暗さになっている。街の夜景をいっぱいに映し出している大きな窓のそばには、ボード支給時、特捜官のほぼ唯一の友となる専用ボードに対し、ノックス記号言語などという古い機械言語を選択して上司を驚かせたジュノリス・カイザーが、静かに佇み、眼下に広がる景色を眺めながら、ボードの報告に耳を傾けている。
 ルーン・ルーンの報告を要約すれば、この惑星都市ナサゴールにある建築物は全て、新しい物も古い物も、少なくとも昼の間は、政治的・経済的・文化的に大した意味を持たなかった。そして、これまでその名高い夜景の美しさをのみ、意地になって追求して来たナサゴールは、いま、そのために支払った大きな代価を思い知らされつつあったのだった。
『・・・色彩効果を狙った極サイオン発光粒子により、モルオール材質の地表とレッチェン材質の道路、とりわけ下層の無人交通網が・・・』
 たとえば、夜になると、この都市の閉ざされた空からは、色鮮やかな極小の発光粒子が、ちらほらと降って来て観光客を魅了する。それはまるで夢のように美しい光景だが、発光粒子は大部分が降り積もったまま放置され、長い年月の間に様々な化学変化を引き起こして、今では少しずつ、この都市の地盤を蝕んでいるのだった。現在、慌てて対応策が取られているが、それにしても気づくのが遅すぎた。なぜ、この都市の為政者は、最も美しい粒子密度を計算する前に、都市存続のための環境シミュレーションをしておかなかったのだろう。
『・・・以上です』
 心地よい和音を奏でて、ルーン・ルーンが報告を終えた。ヴィオルノの静かな音色が止むと、部屋はしんと静まり返った。スイートルームの防音設備は完璧だ。
「ありがとう。残りは明日にしよう」
 窓辺で、青年は振り向かずに言った。
『はい、ジュノリス』
 ヴィオルノのメロディーが答えた。しかし、青年がなお、しばらく微動だにせず佇んでいると、
『ジュノリス?』
 控えめな調子で、また柔らかい音が響いた。ジュノリスはゆっくりと振り向いた。闇に浮かぶ白い整った顔の中で、物憂げな黒い瞳がまたたいた。
「何だい、ルーン」
『少しお話してもよろしいですか』
「言ってごらん」
『私の連動ヒューマノイドのことです』
「ああ。3年経ったと言っていたね。もう製作に入ったのではなかったのか」
 ジュノリスは部屋の中に戻って来てベッドにかけた。ルーン・ルーンは離れた机の上で、美しく音をつないだ。ノックス記号言語の特徴は、その豊富な装飾表現にある。
『そのことですが、ヒューマノイドの私は、既に3年間の調整結果に基づいて内部入力を済ませ、あとは外形を決めるだけになっています。それについてあなたは、先日お伺いしたときには何もおっしゃってくださらなかったので、今日は改めてご要望をお聞かせ願いたいのです』
「外形など、どうでもいい。好きにしてくれ」
 ジュノリスは、そっけなく言った。ベッドの脇の台に手を触れ、ペール酒を注文し、5秒後に届いたグラスを手にすると、緑色の液体を一息にあおった。
『この前もそうおっしゃいましたが』
 ルーン・ルーンは静かに続けた。よどみなく流れるメロディー。
『調整期間終了後に作製を義務付けられている連動ヒューマノイドは、可能な限り捜査官の希望に沿って製作されることになっています。性格については、調整結果に基づく入力で問題ありませんが、外見については、あなたの場合、私の独断で決めるにはデータ不足です。おおまかなラインで構いませんから、条件を出してください』
「何が分かればいいんだ?」
 ジュノリスが空のグラスを台に置くと、グラスはすぐに回収されて消えた。
『たとえば、髪の色』
 ルーン・ルーンは答えた。ジュノリスは考えることもしなかった。
「ぼくと同じ色でなければいい」
『では、瞳の色』
「それもだ」
 ルーン・ルーンは少しの間沈黙し、それから言った。
『あなたに似なければよろしいのですか』
「そうだ」
 淡々と応じた青年は、もう服を脱いで、寝る支度を始めていた。
『では、年齢と性別』
「・・・それも、一人では決められないのか」
 ルーン・ルーンは1秒おいて答えた。
『では、あとのことについては、もう一度よく考えてみます』
「そうしてくれ。任せるよ」
 ジュノリスはベッドに横になった。
「君のことは信頼している。外見なんか気にしないから、安心して適当にやってくれていい」
『はい、ジュノリス』
「おやすみ、ルーン」
 部屋の明かりが完全に落ちた。
『おやすみなさい、ジュノリス』
 ヴィオルノの音色がポロンと鳴って、部屋はそれきり静かになった。

~Intermission 01~

 7年前、両親を失った16歳のジュノリスの所にやって来たのは、中肉中背の中年の男で、温和な顔をしていたが眼光は鋭かった。彼は、家ではなくスクールに、ジュノリスを訪ねて来たのだった。
「ジュノリス・カイザー君だね」
 放課後に呼び出されて応接間に行くと、その男はソファから立ち上がって微笑んだ。応接間には、他に誰もいなかった。ジュノリスが警戒すると、彼は身分証明を出して見せた。
「私は、星間連合中央人事局の者だ。君に話がある」
 ジュノリスは頷いた。その目の奥には、彼がたった今知ったある事実に対する隠しきれない驚きの色があった。
「良かったら、一緒に帰りながら話そう」
 男はジュノリスに頷き返し、そして付け加えた。
「もうわかっているね。私は惑星エムの出身者だ」

 良ければ君のご両親の墓所に案内してくれないか――。男の言葉を容れて、ジュノリスは彼を<死者の海>に連れて行った。<死者の海>は、惑星都市サイラインの中で、市民とそれ以外の者が偏見なく平等に扱われる、数少ない場所のうちの1つだ。死んだ者の体は青緑色の海の中に流され、やがて分解される。
 中央人事局の者と名乗る男は、海の前でわずかな時間を黙祷に捧げた。それから、2人は並んで浜辺を歩いた。
「今日、私が君に会いに来たのは」
 もろく崩れる緑の砂の上に、ゆっくりと歩を進めて、男は言った。
「君を、連合の職員として勧誘するためだ。ちなみに、君も知っているはずだが、君は中央の意思には逆らえないことになっている――違法亡命者だからね」
 ジュノリスは黙っていた。男はかまわずに言葉を続けた。
「勝手ながら、君の記録を調べさせてもらった。君はスクール入学前後まで、何度も事件を起こしているね。いずれも、他人の思考を曲げることでだ。たぶん、制御が効かなかったのだろう。惑星エムの人間と違い、ここの人間の心は容易に曲がるからな。しかし、君はスクール入学前後から、突然静かになった。スクールの環境のせいもあるかもしれないが、おそらくは、君の弟さんのせいでだ。君の弟さんには、これも調べさせてもらったんだが、私達に生まれつき備わっている能力が、備わっていない。それが明らかになった時、君は初めて、感応能力のない人間を気に掛けることを学んだのだ。違うかね」
 今は違う。――そのことを、男は知らないようだった。ジュノリスは沈黙を守った。ジュノリスが男の心を読めないのと同じように、男もジュノリスの心を読むことはできないのだった。
 男は話を続けた。
「記録から分かる限り、君のご両親は、君が起こした事件を全部、もみ消されたのだな。この星の人々の記憶は、それらの事件について、何ひとつ痕跡を留めてはいない。時折、機械が事件のことに触れるたび、それは機械のほうのミスとして処理されて来たのだ。君のご両親の心理操作は完璧なものだ。今回の事故が起こるまで、それですべてがうまく行っていた。だが、今回のことで、事は明るみに出てしまった。君の起こした事件のことではなく、もっと、君達にとって一番大切なこと――すなわち、君達が、申請記録にある星からでなく、惑星エムから亡命して来たのだということが、中央の身元確認作業によって明らかになってしまったのだ。君はスクールで学んだはずだし、事故の後は覚悟もしたはずだ。惑星エムは星間連合に加入していないし、あの星の特殊性のために、そこから連合星域内への亡命は許されていない。たとえ、あの星が半世紀前から、恐ろしい内乱の嵐に包まれていてもだ」
 男の声は低く、淡々としていたが、気のせいか哀調を帯びているように聞き取れた。男は立ち止まり、ジュノリスも足を止める。男はジュノリスの、自分と同じ黒い瞳を見つめて言った。
「惑星エムから外に出ることのできる者は、遠い昔に連合とあの星が結んだ契約に則り、中央政府の職員となる者だけだ――私のように。君達は今、連合からどのような処置を受けても仕方のない立場にある。私は君を勧誘しに来た。脅迫するようですまないのだが、君が応じれば、弟さんはこのまま何事もなくて済むだろうし、君が断れば、君達は二人とも処断されるだろう。もちろん、どちらを選ぶかは、飽くまでも君の自由だ。こんなことになって、とても残念に思っているよ。君は覚えていないだろうが」
 彼の哀しみのわけが、その時初めてジュノリスにもわかった。中央人事局に勤めているという惑星エムの出身者は、音ではなく思念によって、ジュノリスに呼びかけていた。
《君のご両親を亡命させる手助けをしたのは、他ならぬ、この私だ。君はあの時、まだ3歳だった》
 <死者の海>の重たくうねる人工の波が、彼らの足元に打ち寄せていた。潮が満ちつつあった。無数の生命を溶かし込んだ青緑色をして。
「君が就くことになるだろう職務は、あまり気持ちの良いものではないが」
 男は心を閉じ、また口に出して話した。既に、彼もまた暗い特殊な任務に携わっていることが、ジュノリスに伝えられていた。
「しかし、君は惑星エムの人間なのだ、ジュノリス」
 その言葉の意味を、ジュノリスは理解した。惑星エムの人間は、本来、感応能力のない人間に、本能的に価値を認めない。幼い頃に彼がそうであったように、また、彼の父と母が、苦労して、そうであることをやめたように。そして、そうであればこそ、ジュノリスは勧誘されたのだし、逆に言うなら、彼に与えられようとしているのは、そうでなければ到底できないような仕事なのだった。
「君がスクールを卒業したら、迎えに来よう」
 男の口調は、ジュノリスにはそれしか道はないのだと語っていた。そして、断る理由もない、とジュノリスは思った。なぜなら、彼にとって大切なのは、今や全宇宙にただ一人だけであり、その他のいかなる人間も、いかなる存在も、彼にはどうでもよいものであったから。

(Act.01 & Intermission 01 完)

コメント1000件記念企画でした~。
ご愛顧ありがとうございます!

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コメント

こんばんは!
今日は猫やその他諸々に邪魔されることなく、ゆっくり読めそうだったので、ドキドキしながら一回目読んで、その後三回ほど、世界にしがみつくみたいにしつこく読ませていただきましたw
やっぱり、面白いです。
なんだろう、このワクワク感。もういっそのこと、何十時間かかってもいいから、アニメで一気に見たいくらい(#^.^#)
すごいなあ。いいなあ。面白いなあ。好きだなあ。
雪村さん、本当にありがとうです、読ませてくれて。
遥か本編もそうですけど、次話がほんっとに待ち遠しい~!

のんさん、
コメントありがとうございます♪

お気に召して良かった!
見るからに「雰囲気重視」なSFで、お恥ずかしい限りですが、
自分自身という想定読者に「ワクワクを届けたい」と願ったお話なので、
のんさんが想いを受信してくださったことが、とても嬉しいですhappy01heart04

冒険譚よりアニメチックなお話かもしれませんね。
ピアノっぽい丸い音がポロポロと流れて、字幕でルーンの台詞が出るといいなnote

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