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あかずの扉(02)

 扉の中は、ひんやり冷たい、ほの暗い小部屋だった。北向きの小さな窓が、かろうじて、明かり採りの役目を果たしている。
 部屋の中には、小さな石のベンチがあり、ふたりの子供が腰かけて、足をぶらぶらさせていた。
「へえ、開けてくれた」「あら、開けてくれた」
 子供たちは、ともに、銀色の巻き毛で、銀色の瞳をしていた。ふたりで顔を見合わせて、ふふ、と笑った。青い髪の姫君は、まじめな顔で、ささやくように言った。
「さあ、星の子供たち。悪さをしないと誓ったのだから、もし本当に殺されてしまうところなら、早くお逃げなさい」
「へえ、いいの?」「あたしたちを逃がしたら、怒られちゃうよ?」
「怒られるかもしれないけれど、おそらく私は、あなたたちを逃がすようにと期待されているから、いいの。繰り返して鍵を渡されているのですもの」
 フィリシア姫の言葉を聞いて、子供たちは目を丸くした。
「へえ、頭いいね!」「ふうん、怒られてあげるんだ!」
「あなたたちが本当に星の子供なら、あなたたちを逃がせば、空に星が戻るのでしょう? そうしたら、私もこの土地を発つことができるわ。あとのことは気にせず、お行きなさい」
 フィリシア姫が微笑むと、子供たちは、ひそひそと内緒話してから、こう言った。
「優しいね。きっと恵まれたひとなんだね」「幸せそうに笑うひと。感心したから、逃げないであげる」
「えっ」
 青い髪の姫君は、戸惑った顔をした。子供たちは、うんうんと頷いた。
「扉、閉めていいよ」「ほんとはね、殺されたりしないの」
「・・・そうなの? ほんとうに? ほんとうに大丈夫?」
「うん、ちょっと削られるだけ」「ちょっぴり、かじられるだけ。放してもらえるの」
 結局、もとどおり扉を閉めることになった。
 子供たちは笑って手を振った。
「さようなら、いつまでも、幸せなひとでいて」「助けようとしてくれて、ありがとう」
 フィリシア姫は、「元気で」と声をかけたあと、そっと扉を閉め、鍵をかけた。
 その日の晩、空に、星が戻った。

 翌朝、館のあるじ夫妻は、「もう大丈夫ですよ」と言って、姫君の一行を送り出した。
 フィリシア姫は、馬車に乗った。話し相手に選ばれた侍女ひとりが同乗した。馬車が動き出して、しばらく他愛のない話をしたあと、姫君は侍女に尋ねた。
「ねえ、あなたから見たら、わたし、幸せそうに見えるかしら?」
「・・・ほかの誰かから見たら、そうかもしれませんけれど」
と、侍女は答えた。
「ですけれど、わたくしは姫さまにお仕えして、もうずいぶんになりますから。姫さまは、本当にご機嫌のうるわしいときは、おとなしく何日も馬車に乗ってなどいらっしゃいません。それに、もっと、きらきらと光り輝いていらっしゃいます。いったい誰が、今の姫さまを見て、幸せそうなどと申し上げたのですか」
「ふふ、そうなのね。でもね、わたし、思ったの。悲しみの淵に沈むときにも幸せに見えるなら、それは王女としては、取り柄として誇って良いことではないかしら、って」
「・・・さようでございますね」
 侍女は、敬愛の念をこめて答えた。
 姫君は、にっこり笑った。なにものにも侵されることなく、優しく、気高く、すこやかに。

(完)

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コメント

月路さん

お久しぶりです。
今回の「あかずの扉」は逆転発想でとても面白かった。

>逃げないであげる・・

いいですねえhappy01

montiさん、
コメントありがとうございます♪

少しばかり、思うところのあるお話になってしまったので、「面白かった」と言っていただけて、嬉しいです!
春は、いろいろなものが揺れ動く季節ですけれど、お互い、すこやかに過ごしましょうねconfidentclover

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