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2015年3月

夜を越えて【トーナメント参加用】

 ルークが町の酒場で一杯やりながら情報収集を終え、そろそろ宿に引き揚げようかと考えていたとき、店の入り口から、音もなく入って来た人影があった。黒いマントに身を包み、フードを目深にかぶったその客は、気配というものをほとんど感じさせないまま、ひっそりと、隅のテーブルの、隅の席に座った。気付いたのは、それこそルークくらいのものだった。
 うん?とルークは瞬きをした。それから、黒ずくめの客のテーブルまで歩いて行って、その隣に座った。フードの中をちらりと覗き込んで、
「やっぱり君か。どうしたんだい、珍しい」
「ルークか。そういえば――」
 黒髪の若者は静かな声で応じて、
「たしか君は――以前、ぼくが占いで生計を立てられるどうか、疑わしそうにしていたね」
「そうだったか? まあ、そうかもしれないな」
「試してみよう」
 ゼラルドは一組の聖札を取り出して、テーブルの上にするすると手を滑らせた。と見るや、テーブルの上には白い札が整然と並べられていた。一般的な遊興用のカードより小さく、厚みから考えれば高級な紙でできているに違いないのだが、見た目はまるで骨に模様を彫り込んだような質感だ。
 そのまま、ゼラルドは客を引くでもなく、フードをかぶって座ったまま静かに待った。ルークも邪魔をせずに、テーブルに肘をついて見守った。酒を飲みに入れ替わり立ち代わり訪れる客は、たいていゼラルドには注意を払わなかったが、中には「占い師か」と気付いて足を止める者もおり、そうした客は小銭を差し出して、恋人への求婚の是非や、引越しの吉日等の占いを希望した。ゼラルドはその都度、札をさらりと並べ替え、なでるようにして何枚かをめくっては、「うまく行くだろうが、急いだほうが良い」とか、「半月待ったほうが厄介事を避けられる」などと告げた。
 そのうちに、テーブルの近くを通りかかった一人の男が、はっとした様子で足を止め、卓上に並んでいるカードを見つめ、数え始めた。
「1、2、3・・・縦に13枚。1、2、3・・・横にも13枚。あんた、もうしばらくここにいてくれるか。俺はいったん家に帰るが、すぐに戻って来るからよ」
 ゼラルドが無言でうなずくと、男は店を飛び出して行き、言ったとおりすぐに戻って来て、人目をはばかりながら、どさりと皮袋をテーブルに置いた。
「死んだひいばあさんが、よく言ってた。もし、カードを縦に13枚、横に13枚並べている占い師がいたら、そいつには何でも視えるんだって。なあ、俺があんたに何を占ってもらいたいか、あんたに分かるか」
 ゼラルドは札を並べなおして、何枚かをめくり、つぶやくように答えた。
「妻の病気を治す方法・・・か」
「そう、そうなんだ! この袋に、俺の全財産が入ってる。どうかこれで。どうかこれで・・・」
 皮袋を押し付けて来ようとする男を、ゼラルドは手で制した。
「すまないが、私は医師でもないし<癒し手>でもない。細君の病気は気の毒だが、その金子は医師の診療と薬の代金に充てたほうがよかろう」
「薬なら飲ませてみたが、バカ高いだけで、ちっとも効きやしない。医者には匙を投げられた。いいから、まず受け取ってくれ。そして、あんたに出来る限りのことをしてくれ。金ならまた稼ぐからいいんだ。俺はあんたに賭ける。さあ」
 半ば無理やり渡された皮袋を、ゼラルドは仕方なさそうに受け取った。それから、
「では、出来る限りのことをしよう。しばらく静かに」
と言って、並んだ札をあれこれ開いたり伏せたり混ぜたりしていたが、やがてマントの下から小さな水晶の棒を取り出して、何かつぶやきながら一枚のカードの上にかざした。水晶の棒には、何か細かい模様が彫り込んであったが、ゼラルドがすうっと棒を横に動かすと、なぜか中心からポキリと折れた。ゼラルドは二本目の水晶棒を取り出して、同じことをした。今度は棒は折れなかったが、動かし終わったときには彫り込まれた模様が消え、表面がつるりとなっていた。ゼラルドは三本目を取り出した。今度は、動かし終わっても特に変化はなく、細かい模様もそのまま残った。
 ゼラルドは紫色の小さな布を取り出して、この三本目の水晶棒を包んだ。
「手を」
 男が神妙に出した手の上に、ゼラルドは包みを乗せた。
「家に着いたら、包みを開け、中の御守りを細君に持たせたまえ。病が癒えるまでにはしばらくかかろうが、いずれ快復するだろう」
「ありがたい」
 男は疑う様子もなく、頭を下げて包みを押しいただき、大事そうに懐にしまうと、
「さっそく帰って、女房に渡すよ。恩に着る」
 何度も何度も頭を下げながら、店を出て行った。
 ゼラルドはテーブルの上をなでるようにして聖札を回収した。
「ルーク、ぼくたちも出よう。今夜の商いは終了だ」
「なけなしの全財産を、受け取ってしまって良かったのか」
 ルークの問いに、ゼラルドは軽くうなずいた。皮袋を開けないままルークに渡した。
「受け取らねば、かえって疑われただろう。大丈夫、彼の妻はこの処置で治る」
「君は立派に商いができたわけだ。驚いたな」
「伝わるところには伝わっているからね。聖札169枚、すべて使うのは本物の術者だと」
「金・銀・銅貨と・・・これは」
 ルークは皮袋の中を覗いて、小さな宝飾品を取り出し、
「片方だけの耳飾りだ」
「・・・祈りの力を感じる」
 ゼラルドが差し出した手に、ルークは紅色の耳飾りを乗せた。
「・・・対になる飾りを持った者が助けを求めている」
 ゼラルドは言って、ルークを振り返った。
「聖者のことわりでは、これは偶然でなく必然だ。応じなければならない。君は先に」
「一緒に行くさ」
 金髪の若者は笑って、皮袋をゼラルドに返した。
 ゼラルドは受け取って、うなずいた。ルークの腕に軽く触れて、
「呼んでいる者のところまで跳ぶ」
 言った次の瞬間、二人の姿はその場から消えた。気付いたものはおらず、酒場にはいつもの喧騒が残された。

 ルークとゼラルドは、静かな夜の闇の中、何やら石造りの建物の中に、ふわりと降り立った。壁石の隙間から、かすかに月光が差し込んでいる。
 よくよく耳を澄ませば、ささやくような女の声が、ずっと同じ言葉を繰り返しているのが聞こえた。曰く、
「慈愛深き月の女神よ、わが祈りを聞き届け給え。願わくば御使いを遣わせしめて、汝が信徒を邪神の手から救い出し給え・・・」
 祈りの言葉を聞き取って、ルークが面白そうにつぶやく。
「ぼくたちは月の女神の御使いなのか?」
「そうなのだろう」
と、真顔でゼラルドが応じた。そのやり取りが聞こえたのか、祈りの声は途切れて、
「・・・誰? 誰かそこにいるの?」
 震える声が問うた。すぐ近くだ。声のするほうに数歩歩けば、そこに牢があった。牢の中には、明り取りの窓の下、月光に照らされて、一人の若い娘が床に座り込んでいた。娘は二人を見て何か叫ぼうとしたが、ルークが素早く、
「静かに! 俺たちは敵じゃない」
 言葉をかけると、かろうじて声をのみこんだ。よく見ると、右耳にだけ、紅い耳飾りを嵌めている。
 床には、聖札が13枚ずつ2段並べられており、うち2枚のカードが表を向いていた。ゼラルドがちらりと見て、
「祈り届けば、救いの手、来たりなん」
 無表情に読み上げると、娘ははっとゼラルドを振り仰ぎ、うなずいて、
「何度やっても、そうとしか出なかったから・・・」
 かすれた言葉の終わりは、か細く消えてしまった。ゼラルドは首をかしげて、
「何度やっても? まあいい、まずは、これを返そう」
「あ・・・あたしの・・・」
 鉄格子の隙間から、娘は耳飾りを受け取って、左耳に嵌めた。
「どこかで失くしたと思ってた・・・。ありがとう」
「それで、君の望みは何なのだろう。見張りはいないようだが、牢から出せばいいのかな」
「それもあるけど。それだけじゃないわ・・・」
 娘はゆるゆると首を振った。
「できることなら、あたしを捕まえた狂信者たちを、何とかしてほしいの。そうでなければ、また誰かがさらわれて、殺されてしまう。彼らの神を、よみがえらせるために」
「滅びた神が生贄を得て復活するというのか。もし本当なら、邪神に間違いないが」
 ゼラルドは眉をひそめ、娘はうなずいた。
「百の贄をささげる、と言っていたわ。あと少しだ、とも。明日、日が昇ったら、あたしは祭壇に引き出されて、殺されて、荒ぶる神に喰われるのだと聞かされたわ・・・」
「・・・とすると、贄を逃がせば儀式も中止になり、大元を絶てなくなってしまう」
 ゼラルドは考え込んだ。娘はその様子をじっと見ていたが、
「必ず、助けてくれる・・・?」
「ああ」
「じゃあ、あたし、儀式まで捕まったままでいるわ・・・」
 それまで壁にもたれて黙っていたルークが、驚いたように体を起こした。
「いいのか?」
「あたしは巫女なの・・・。祈り届けば、救いの手、来たりなん。あなたたちを信じるわ」
「では、いくつか確認させてもらおう」
と、ゼラルドは静かに話を進めた。
「狂信者たちは何人くらいいて、どのような格好をしているか、わかるかな」
「あたしが見たのは、10人くらいだったわ・・・。リーダー以外はあまりしゃべらなくて、全員、黒いマントを着ているの・・・あなたみたいに」
 巫女はゼラルドの服装を指した。ゼラルドは少し戸惑ったようだったが、
「それなら紛れ込めるかもしれない」
 ひとりごとのように言いながら、自分の聖札を取り出し、手の中で混ぜて、何枚かをめくった。めくったカードを見ながら、ふと首をかしげ、もう一度カードを切りなおして数枚めくった後、顔を上げて、告げた。
「その10人は、おそらく教団の中心となる構成員だ。そして、明日の儀式には、さらに30人ほどが集まるだろうが、その30人は、実のところ30体、全て屍だ。指導者の意のままに動くように術をかけられている」
 巫女は驚いたようにゼラルドを見上げた。
「そうなの・・・? そんなことまでわかるの・・・? 札を並べてすらいないのに・・・」
 ゼラルドは意に介した様子もなく、
「君は、捕まったとき、血の一滴か、髪ひとすじを、奪われなかったか」
「髪を抜かれたわ・・・」
「では、ぼくにも一本くれるかな。術者が君を操るのを阻止する」
 巫女は長い髪を一本抜いて、ゼラルドに渡した。ゼラルドは、いくつか嵌めている指輪のひとつを外して、受け取った髪の毛を巻き付け、また指に戻した。
 ルークが手を挙げて尋ねた。
「戦闘になったとき、その30人だか40人だかの中に君が紛れ込んでいたら、どうやって見分ければいいんだ?」
 ゼラルドは、自分の着ているマントのすそをつまんで、軽く振った。すると、黒ずくめだった彼の服装は、マントの中まで、一瞬で白ずくめになった。
「紛れる必要がなくなったら、こうする。これなら区別がつくだろう」
 返答を待たずに、また同じ仕草をして、黒ずくめに戻る。ルークが半ばあきれたように、
「手妻のようだな」
と言えば、
「似たようなものだ」
と、ゼラルドは冷ややかに応じた。
 さらにいくつかのことを打ち合わせてから、ルークとゼラルドは、見回れる範囲を簡単に見回って、そのあとは朝まで休憩を取った。気がつけば、巫女の娘も、安心したのだろう、牢の中で横になって、すやすやと眠っていた。
 そして、夜が明けた――。

 まだ陽光の微かな早朝の薄闇の中。フードをかぶった黒マントの群れが、さわさわと石牢を訪れて、無言で巫女の娘を引っ立てた。娘は後ろ手に縛られて、うなだれて牢を出た。
 少し離れて隠れていたルークとゼラルドは、視線を合わせて軽くうなずき、ゼラルドはフードを目深におろして一団に紛れ込んだ。教団の指導者が姿を現すまでは、感づかれないよう、術は使わないと決めてあった。
 そうして、ルークが物陰に隠れながら後を追って行くと、なるほど、昨夜ゼラルドが予見したとおり、さらに多数の黒マントの群れが現れた。新しい一団は皆、ずるり、ぺたり、ずるり、ぺたり、と歩いた。そう、それらは命なく、術をかけられた屍人なのだった。
 黒マントたちは、合流したかと思うと、また、ふたつの集団に分かれた。それぞれ、生きている者の半分が、屍人の半分を従える構成のようだ。片方の集団は、巫女を連れ、祭壇を目指して神殿奥へ進んでいく。もう片方の集団は、階段で上の階に向かっている。
 ルークは、巫女のいる集団をゼラルドに任せ、自分はもう片方の集団を追って階段を上った。全体を大きく二分したからには、こちらの集団にも何かの役割があるはずだ。儀式の阻止と、指導者の排除という目的を達成するためには、その役割を果たさせてはならないだろう。
 階段の上は行き止まりの廊下だったはずだが・・・と、前の晩に確かめた構造を思い起こしながら後をつけていくと、その廊下の突き当りで、黒マントたちはいくつかの壁石を押し込み、先に続く道をひらいた。隠し通路だ。ルークはためらわず、最後のひとりに続いて自分も通路を通った。
 通り抜けた先は、石造りの広間だった。天井と壁の一部が壊れて瓦礫の山ができているため、ルークの姿は集団から隠されている。広間の真ん中では、黒マント5人が外向きに輪になって座り、目を閉じ、手をつないで、詠唱を始めていた。
「よみがえれ、荒ぶる神。帰り来たれ、われらが神・・・」
 屍人たちも、5人を取り巻くように座って、輪を形づくる。つめたい体は、ゆらゆらと前後左右に揺れている。
「よみがえれ、荒ぶる神。帰り来たれ、われらが神・・・」
 5人の詠唱は徐々に熱を帯びた。
「帰り来たれ、われらが神・・・ここに、われらが信仰の証を捧ぐ・・・」
 5人の黒マントのうちの一人が、ひれ伏すように頭を低くし、その傍らで、屍人が立ち上がり、剣を振り上げた。
 自ら首を刎ねられる気か! ぞわりと背筋に寒気を感じながら、ルークは反射的に飛び出して、剣を持った屍人に切りつけた。ずぶりと屍肉を切った傷はジュッと音を立て、屍人はどうと倒れて動かなくなった。
 しかし、この場ではルークのほうが邪魔者だった。ひれ伏していた黒マントは、体を起こし、敵意を剥き出しにした。
「何者だ! 儀式を妨げる奴め」
「その儀式に何の意味がある。自らの命を失えば、得るものは何もない」
「われらの神が蘇れば、われらには新しい永遠の命が与えられるのだ。邪魔をするな!」
 5人は詠唱をやめ、互いに手を放して立ち上がり、剣を抜き放った――おそらくは今まで幾多の贄の血を吸ってきた剣を。屍人たちにも号令をかけた。
「しもべたちよ、あの者を倒せ!」
 屍人たちは、のろのろと立ち上がって、これも全員が何らかの武器を抜き放った。
 ルークは剣を構えた。階下に異常を知られてはならない。こうなってしまったからには、できる限り速やかに戦闘を終わらせる必要がある。
 朝日の差し込み始めた広間に、金色の刃が風となって走った。
 広間に立っているのは、ルークひとりになった。
 ルークは剣を振って血糊を払うと、広間を横切った。続きの間の床は大きく崩れている。ルークは床に膝をつき、階下の様子を窺った。

 一方、囚われの巫女を引き連れた黒マントの一団は、もう半分の集団と分かれたあと、神殿の最深部、祭壇のある大広間へと進入していた。ゼラルドは、気配を消して屍人の群れの中に身をひそめながら、あたりの様子を注意深く観察した。頭上から、かすかに祈りの声が聞こえて来るのは、もうひとつの集団が上の階で、補助となる儀式を始めたものと思われた。
 先導する5人の黒マントの指示で、一同は立ち止まり、石床に膝をついた。5人は深く頭を垂れ、呼ばわった。
「われらが指導者よ、おでましあれ! おでましあれ!」
 屍人たちは頭を下げなかったので、ゼラルドは屍人に紛れ、フードの陰からそっと様子を見ることができた。すぐに、幹部5人の目の前の空間がゆらゆらと揺らいで、人の形を作った。教団の指導者が、離れた場所から転移して来たのだ。この気配からして、月の聖者か。
 指導者は、黒っぽい服の上に、やはり黒いマントを羽織っていたが、フードはかぶらず、白い肌、黒い髪、黒い瞳をあらわにしていた。ゼラルドは複雑な思いがした。もしや、故国を同じくする者ではないのか・・・。
「つとめ、大儀である」
と、指導者は独特の抑揚で、ひれ伏す幹部たちに言葉をかけた。それから、
「月の女神の巫女よ、祭壇に進み給え。前座の儀式が済み次第、百人目の贄として、その喉を切り開くゆえ」
 巫女は引っ立てられ、背を押されて、よろめきながら祭壇に向かって歩き出した。
 ゼラルドは静かに言った。
「巫女よ、その必要はない」
 巫女は立ち止まった。指導者はさっと振り返って屍人の群れを見渡した。発言者を特定できないまま、指導者がもう一度巫女のほうを振り返ったときには、ゼラルドはすでに巫女の傍らにおり、懐剣で、彼女の腕の戒めを切ってやっていた。
 指導者は声を荒げた。
「巫女よ、その刃を奪い、その者を刺し殺せ。命令である。逆らうことはできないはずだ」
 聞いてゼラルドは冷笑し、巫女の腕に軽く触れて、一言、二言、何かつぶやいた。巫女の足元に銀色の輪がパッと広がったかと思うと、まもなく巫女の姿はかき消えた。
 指導者は、しばし唖然となったが、はっと気を取り直すと、
「貴様、月の聖者か。よくも、特別な贄を逃がしてくれたな。こうなれば、巫女の代わりに、貴様を贄としてやろう。皆の者、奴を確保せよ!」
 幹部5人と屍人たちは、すぐさま立ち上がり、武器を抜いて指示に従おうとした、が、ゼラルドのほうが対応は早かった。彼がさっと手を振れば、大きな弧を描く銀色の光が一同の身体を通り抜け、幹部たちは痺れた体を抱えてうずくまり、屍人たちは糸の切れた人形のように、床に崩れ落ちて動かなくなった。
 ともかく指導者を捕えなければならない。もはや他の者には注意を払わず、指導者に向きなおったゼラルドは、しかし、予期せぬ光景を見ることになった。
 指導者は、この不利な状況の中、逃げ出すでもなく、襲いかかって来るでもなく、いつのまにか祭壇の前に立ち、叫んでいた。
「わが神よ! 我を贄として捧げ奉る! 甦り給え!」
 そして、自らの喉を掻き切って祭壇の上に倒れ伏した。ほとばしる血が祭壇を染めた。
 いけない。聖者の血を供物として捧げては・・・!
 祭壇の上に流れ出たおびただしい血は、すぐにブクブクと泡立ち始めた。何か、ひどく良くないものが、血の海の中に蘇ろうとしていた――おそらくは、いにしえの悪しき神が。
 神。だとしたら、人の子がその復活を阻むことなど、できるものだろうか?
 祭壇から、にゅっと緑色の巨大な腕が突き出され、こぶしを開いた。人の胴回りほどもある太い腕の先は、指が7本生えた巨大な手だった。腕は祭壇の外へと伸び、広間の床にバシンと手をついた。同様に、もう一本の巨大な腕が現れて、これもまた広間の床に手をついた。両の手で体を支えながら、こちら側に出て来るつもりなのだ。
 距離をとって身構えたゼラルドの目の前で、しかし、2本の腕はドロドロと溶け落ちた。地の底から響く声が、呻いた。
≪足リヌ・・・。足リヌ・・・。モット寄越セ・・・≫
 そうか、贄の数が足りていないのだ。不完全な神――。
 ならば復活を阻むこともできるかもしれない、とゼラルドは決意を固めた。そもそも、聖なる国の王家に生まれ、太陽の神からも月の神からも最大限の恩恵を受けている自分が為さなければ、いったい他の誰が邪神の復活を阻めるというのだ。
 祭壇から突き出された新しい腕に、ゼラルドは銀色に輝く光の刃を放った。光は巨大な腕を通り抜けたが、腕は何の反応も見せず、祭壇の外にバシンと手をついた。ゼラルドは術を切り替え、次には金色に輝く光の刃を放った。今度は、光が通り抜けたあと、腕は少し怯んで、祭壇の外に出した手をひっこめかけたが、結局ひっこめずに、手をつきなおしただけだった。
 なるほど、とゼラルドは冷静に分析し、レティカの宝剣を抜き放って、その黄金の刀身に、太陽の力をいっぱいに溜めた。恐れずに踏み込んで緑色の手首を薙ぎ払えば、邪神の手首はジュウと音を立てて切り落とされ、残った腕部はくねりながら祭壇の中に戻って行こうとする、そこへゼラルドは追いすがり、宝剣によって腕を祭壇に縫い止めた。腕はシュウシュウと音を立てながら、干からびて行く・・・。
 祭壇に倒れ伏していた教団指導者が、急に体を起こした。喉元はぱっくりと裂けており、もはや流れ出る血も残っておらず、とても生きているとは思えない。宝剣を放して跳びすさったゼラルドを、指導者は濁った眼で見て、口を開いた。言葉など出るはずがないのに、聞こえた。
≪寄越セ・・・オマエノ血・・・≫
 邪神に死体を乗っ取られている! ゼラルドが金色の光の刃を放つと、指導者はぶるぶると震えたが、おかまいなしに歩み寄って来る。ゼラルドは目の端で祭壇の宝剣を確認した。まだ邪神の本体は散り切っていない。あの剣を引き戻すわけにはいかない。
 もう一本、宝剣があれば。そう思ったとき、ゼラルドはルークのことを思い出した。ルークは宝剣を持っている。そういえば目印として服を白くするのだった、と、今さらながら全身を白に変えながら、階上の様子に耳を澄ますと、さっきまで聞こえていた祈りの声が聞こえない。階上の儀式はどうなった?
 襲い来る指導者から逃れ、術の力を借りて大きく跳躍し、広間に積まれた瓦礫の山の上に軽やかに降り立ったゼラルドに向かい、指導者は口を大きく開き、その口の中がボウッと光り始めた。攻撃の光を吐くつもりだ。ゼラルドがもう一度跳躍しようと身構えたとき。
 凛とした声が、遥か頭上から降った。
「ゼル、使え!」
 その言葉とともに、目の前の瓦礫に、レティカの宝剣が突き刺さった。ルークの剣だ。
 ゼラルドは宝剣を引き抜いた。ただちに、その刃に太陽の力を満たし、指導者に向かって跳んだ。朝日の中に、純白のマントがひるがえる。金色の刃が指導者を切り下ろした。
≪ギィィィィィ・・・!≫
 指導者の体は真っ二つになり、灰となって散った。
 今度こそ、終わり、だった。

 教団幹部の10人は、いずれも、簡単には動けないくらいのダメージを負っていたが、命まで奪われてはいなかった。
「生贄を捧げる儀式を邪魔するのに、生贄を斬り捨てるわけにもいかないだろ」
とルークが言ったのは、まさしくその通りで、ゼラルドが幹部らから聞き出したところによれば、百の贄まではあと6人だったらしい。つまり、幹部1グループの命を奪っていたら、巫女の代わりに指導者が死んだ後、蘇るのは完全なる神だったかもしれないわけだ。
 傷ついた幹部たちは一ヶ所に集められた。儀式が失敗し、指導者を失って、彼らは呻きながら「永遠の命が・・・不老不死の体が・・・」と繰り返していたが、ルークはおかまいなしに、彼らを適当に縛り上げた。
「で、俺たちは帰るけど」
と、ルークは巫女に言った。
「君は一人で街まで行けるか? うん、それじゃ、街まで行って、あいつらのことは衛兵か自警団に回収してもらえよ」
「そうするわ・・・」
 また、ゼラルドのほうは、
「協力してくれた礼というわけでもないが、これをあげよう」
 紙帯で封がされている一組の聖札を巫女に手渡した。淡々と、
「神殿用の26枚で何度占っても同じ結果になるなら、さらに数段並べて読める力があるはずだ。試してみるといい」
「・・・あなたは、何段並べるの?」
「13段」
「全部・・・。それは、世界のすべてが視えるってこと・・・?」
「さあ、どうかな」
 興味がなさそうに言って、ゼラルドはルークの腕に軽く触れた。ルークは人懐こい笑みを浮かべて、別れの挨拶を口にした。
「じゃあな!」
「さよなら。ありがとう・・・」
 巫女はぺこりと頭を下げ、再び頭を上げたときには、もう二人連れはいなくなっていたのだった。

 眠っている妻に水晶の御守りを握らせて、いつのまにか自分もベッドの傍らで椅子にかけたまま眠ってしまっていた男は、背後でガタンと音がしたため、はっと目が覚めた。目の前のベッドは空になっていて、シーツの上に、御守りだけが残されていた。
 うしろを振り向くと、台所で、妻がテーブルに手をついて体を支えていた。寝たきりになって久しい妻が、一人でそこまで歩いたのは何ヶ月ぶりのことか、すぐには思い出せなかった。驚いている男に向かって、妻は恥ずかしそうに笑った。
「起こしちゃった? ごめんね、あたし、おなかがすいちゃって」
「今すぐ粥を煮る! 寝てろ、寝てろ」
 妻をベッドに戻して御守りを握らせ、自分が台所に立ちながら、男の表情はおのずと明るくなった。昨夜まで妻の上を覆っていた暗い死の影は消え去っていた。やつれてはいても、笑みに力があり、食欲も戻り、動こうという気力がある。病は峠を越えたのだ。
 偶然のわけがなかった。男は、不思議な占い師と、ずいぶん前に他界した曾祖母に感謝した。自らも相当の占い師だった曾祖母は、いつも言っていた。13列13段のカードを使う術者には、世界のすべてが視えるだろう、と。そして、本当に困ったときに、もしそのような人物に出会うことが叶ったら、全財産と、これを渡しなさいと言って、紅色の耳飾りをひとつ――なぜかひとつだけ――、遺してくれたのだった。

「ところで」
と、遅い朝食を共にしながら、不意にゼラルドが言った。
「うん?」
「剣を投げてくれたとき、君は、ぼくを何と呼んだ?」
「覚えてないけど、君の名前だろ?」
と、ルークは困惑気味に応じた。
「そうか。覚えていないなら別に――」
「ゼラルドとか、ゼルとかさ。呼び間違えたりはしないと思うぜ」
「・・・」
 そうして、その話は、それきりになった。

(完)

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独立して読めそうな作品を選び、元は連載記事だったものを1つにまとめてみました。

約10,280字。

作者より:「あかずの扉」

予告の時点では骨組みしか決まっておらず、軽い気持ちで取り掛かったのですが、書き始めてから詳細が明らかになり、「しまった、まだお披露目するには早すぎる話だった」と気づくことになりました。かといって、中断にも踏み切れなかったので、書き切らせていただきました。

フィリシアが、悲しい気持ちでいる時期のお話です。侍女や警護の者たちを連れ、馬車に乗って移動しているあたり、他のお話とは様子が異なりますが、番外編ではなく本編です。
読後感がすっきりしないだろうことについて、読者の方々に申し訳ないと思いつつ。叶うことなら、そのモヤモヤをも、冒険譚の一部として受け入れていただけたら嬉しいと思います。
また、そのモヤモヤにも、どなたかを癒す力があることを願います。

作者自身は、やや身辺の落ち着かない春を迎えています。
ブログの更新間隔が開いたり、新しいお話がだいぶ先になったりするかもしれませんが、ご容赦くださいませ。
皆様も、良き風にめぐりあう春をお迎えくださいますように。

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あかずの扉(02)

 扉の中は、ひんやり冷たい、ほの暗い小部屋だった。北向きの小さな窓が、かろうじて、明かり採りの役目を果たしている。
 部屋の中には、小さな石のベンチがあり、ふたりの子供が腰かけて、足をぶらぶらさせていた。
「へえ、開けてくれた」「あら、開けてくれた」
 子供たちは、ともに、銀色の巻き毛で、銀色の瞳をしていた。ふたりで顔を見合わせて、ふふ、と笑った。青い髪の姫君は、まじめな顔で、ささやくように言った。
「さあ、星の子供たち。悪さをしないと誓ったのだから、もし本当に殺されてしまうところなら、早くお逃げなさい」
「へえ、いいの?」「あたしたちを逃がしたら、怒られちゃうよ?」
「怒られるかもしれないけれど、おそらく私は、あなたたちを逃がすようにと期待されているから、いいの。繰り返して鍵を渡されているのですもの」
 フィリシア姫の言葉を聞いて、子供たちは目を丸くした。
「へえ、頭いいね!」「ふうん、怒られてあげるんだ!」
「あなたたちが本当に星の子供なら、あなたたちを逃がせば、空に星が戻るのでしょう? そうしたら、私もこの土地を発つことができるわ。あとのことは気にせず、お行きなさい」
 フィリシア姫が微笑むと、子供たちは、ひそひそと内緒話してから、こう言った。
「優しいね。きっと恵まれたひとなんだね」「幸せそうに笑うひと。感心したから、逃げないであげる」
「えっ」
 青い髪の姫君は、戸惑った顔をした。子供たちは、うんうんと頷いた。
「扉、閉めていいよ」「ほんとはね、殺されたりしないの」
「・・・そうなの? ほんとうに? ほんとうに大丈夫?」
「うん、ちょっと削られるだけ」「ちょっぴり、かじられるだけ。放してもらえるの」
 結局、もとどおり扉を閉めることになった。
 子供たちは笑って手を振った。
「さようなら、いつまでも、幸せなひとでいて」「助けようとしてくれて、ありがとう」
 フィリシア姫は、「元気で」と声をかけたあと、そっと扉を閉め、鍵をかけた。
 その日の晩、空に、星が戻った。

 翌朝、館のあるじ夫妻は、「もう大丈夫ですよ」と言って、姫君の一行を送り出した。
 フィリシア姫は、馬車に乗った。話し相手に選ばれた侍女ひとりが同乗した。馬車が動き出して、しばらく他愛のない話をしたあと、姫君は侍女に尋ねた。
「ねえ、あなたから見たら、わたし、幸せそうに見えるかしら?」
「・・・ほかの誰かから見たら、そうかもしれませんけれど」
と、侍女は答えた。
「ですけれど、わたくしは姫さまにお仕えして、もうずいぶんになりますから。姫さまは、本当にご機嫌のうるわしいときは、おとなしく何日も馬車に乗ってなどいらっしゃいません。それに、もっと、きらきらと光り輝いていらっしゃいます。いったい誰が、今の姫さまを見て、幸せそうなどと申し上げたのですか」
「ふふ、そうなのね。でもね、わたし、思ったの。悲しみの淵に沈むときにも幸せに見えるなら、それは王女としては、取り柄として誇って良いことではないかしら、って」
「・・・さようでございますね」
 侍女は、敬愛の念をこめて答えた。
 姫君は、にっこり笑った。なにものにも侵されることなく、優しく、気高く、すこやかに。

(完)

あかずの扉(01)

 青い髪の姫君は、ひとり、ぼんやりと馬車に揺られていた。日の暮れるころ、馬車が止まったので、宿に着いたのだろうと思った。
 ところが、侍女たちの言うことには、どうやら一行は道に迷ったらしかった。今どこにいるのかわからないまま、日が暮れてしまったのだと言う。ただ、警護の者が、近くに見える大きな館を訪ねたところ、館の主人が親切にも、一行を泊めようと申し出てくれたそうだった。
 フィリシア姫は、侍女たちが疲れていることも考えて、館の主人の厚意に感謝し、大きな館に泊めてもらうことにした。あるじ夫妻は玄関に並んで、姫君を迎えてくれた。
「お気の毒に。このあたりの土地では、年に数回、道に迷いやすくなる時期があるのです」
と、夫妻のうち、夫のほうが、すまなそうに言った。燃えるように赤い髪をした、背の高い美丈夫だった。
 妻のほうは、明るい金色の髪を結った、細面の女性で、遠慮がちに言葉を足した。
「数日もすれば、元に戻ります。夜空に星が戻るので、それと分かります」
 言われて、一行が暮れゆく空を確かめると、中空には欠けゆく半月が皓皓と浮かんでいたが、なるほど不思議なことに、星はひとつも見えないのだった。
 星が戻るまで何日でもご滞在ください、と言われて、フィリシア姫は厚く礼を述べ、この不思議な土地に滞在させてもらうことにした。姫君と、身の回りの世話をする2人ばかりは、2階の部屋を使うことになった。残りの侍女と警護の者たちは、1階の部屋を使うことになった。
 次の日、あるじ夫妻は、フィリシア姫に赤銅色の鍵を1つ渡してくれた。
「2階の北側にある庭園の鍵です。お気を紛らわせるのに、どうぞお使いください。ただし、庭園の一番北にある扉は、魔物を捕えた部屋の戸ですから、けして開けないと約束してください。また、魔物に何を言われても、けして言葉をかけないでください」
 姫君は約束し、鍵を借りた。2階の北側にある扉を開けて入ると、中は花の咲き乱れる庭園だった。姫君は1日、花を愛でて過ごした。一度だけ、北の端にある禁じられた扉から、小さな男の子の声が聞こえたように思った。
「誰かいるなら、ここを開けておくれ。開けてくれたら、何でも願いを叶えてあげる」
 フィリシア姫は、黙って首を横に振った。少年の声は、それきり何も言わなかった。
 翌日も、あるじ夫妻は、フィリシア姫に同じ鍵を貸し与え、同じ注意を繰り返した。姫君は、再び1日、花を愛でて過ごした。一度だけ、北の端にある禁じられた扉から、小さな女の子の声が聞こえたように思った。
「誰かいるなら、ここを開けておくれ。開けてくれないと、その身に不幸が訪れるよ」
 フィリシア姫は、黙って首を横に振った。少女の声は、それきり何も言わなかった。
 3日目も、あるじ夫妻は、姫君に同じ鍵と、同じ注意を与えた。姫君は、ためらったが、了承した。庭園で過ごしていると、北の端にある扉から、今日はこんな声が聞こえた。小さな男の子と女の子の声。
「誰かいるなら、ここを開けておくれ。どうか助けて。ぼくたち、私たち、閉じ込められたまま、殺されてしまう」
 フィリシア姫は、北側の扉をじっと見つめた。そして、禁を破って、声をかけた。
「あなたがたは、誰なの。どうして、つかまっているの」
「ぼくたちは、私たちは、星の子供。砕いて食べると美味しいから、人間にねらわれるの」
「・・・外に出しても悪さをしないと、約束してくれる?」
「わかった、わかったわ、約束する。出して、出して!」
 青い髪の姫君は、扉に鍵をさしこみ、ガチャリと回して、扉を開けた。

結局、1回では終わりませんでした…。

予告:「あかずの扉」

すごく短くて、あまり盛り上がらない、地味な感じのメルヘン。
というようなお話を、ぽろっと1ページ、書きたいと思っています。
フィリシアのお話になると思います。

妙なものを書きたがる作者ですみませんcoldsweats01
明後日のリリースになると思います。よろしくお願いいたします~。

お知らせ:電子書籍のご案内☆

先日お話しした、電子書籍ファイル(PDF、epub)のエラーが、解決しました!
原因は、書式を指定したときに自動生成されたコードの不具合でした。気がついて、手入力で直しました。
もし、「ダウンロードしたけど読めなかった」という方がいらしたら、お手数ですが、もう一度ダウンロードして試してみてください。
また、Windows8.1だと表示が崩れる問題も、その後のWindowsアップデートで修正されました。
よかった。

さて…、
電子書籍を作るにあたって、「単品で読みやすそうなもの」を基準に、「光り姫」と「風に揺れる花の中で」を選んでみたわけですが。
長めのお話も試してみようと、「化身の魔女」も作ってみました。3冊目♪
そうこうするうち、少し慣れて来ました。
せっかくだから、10冊くらい作ってみようと思うようになりました。るるる~。
ちびちびと新しいのを作る都度、この記事に反映していこうと思います。
ブログのサイドバーに、この記事へのリンクを置いておきますので、「そういえば、どうなったかな」と思うことがあったら、のぞいてみてくださいね。
さしあたって、週末ごとに1冊、作って行けたらいいなと思います。

以下、これまでに作成した電子書籍の一覧です。
(スマホでない携帯だと一覧が見えないかも。ごめんなさい)
新しいのが増えるたびに追加していきます。
追記:ぜんぶ無料です! ブログ掲載も続けます!

ちゃんと読めるかテストするために、スマホに電子書籍リーダーを入れて、ダウンロードして読んでみたら、見やすくて、ちょっと嬉しかったですhappy01 bookshine

ひとやすみ:しながわ水族館で謎解き(2015年3月)

閉館後の水族館で謎解きするイベントがあったので、参加してきました!
主催は「しながわ水族館」、企画運営は「謎解きタウン」。イベントのタイトルは、
「リアル謎解きゲーム in しながわ水族館
 シャレード伯爵の潔癖で奇才な謎解き
(再演)
王女の願いと聖夜の奇跡
です。ホームページはこちら

内容から見て、元々はクリスマスに実施されたイベントだったのかな?
好評だったために再演されたのだと思われます。
お値段は2,800円(大人・前売り)。15才以上推奨。

友達と二人で参加しましたが、せっかく行くのだからと思って、水族館が開いている時間に行き、通常の入館料(大人1,350円)を払って、水族館の展示もゆっくり見て来ました。
水族館は久しぶり。おさかな、ペンギン、アザラシ、ウミガメ、クラゲなど、いろいろ見て、癒されました。満足しましたheart04

いったん出て、喫茶店で一息入れて、17時からイベントの受付開始、17時半に開場、18時に開演。
参加人数は分からないけれど、かなりたくさんだったので、200人くらいいたんじゃないかな?
導入の映像を見たあと、70分の謎解きタイム。
水族館の中を歩いて情報を集め、手元の資料とつきあわせて暗号を解き、じわじわと解き進めます。
水族館の床のカーペットに座りこんで謎解きに熱中する人、多数。不思議な光景…。
70分は、あっというまでした。
…あと5分あったら全部解けたんだけどな。や、本当に惜しかったんだよ!
この「あとちょっと」感が、ついつい次へ次へと出かけてしまう理由の1つです。
今回、全部解いてクリアした人は、1割くらい?いたみたい。

「謎解きタウン」さんのイベントは初めての参加でしたが、とても面白かったです!
3/28(土)、4/4(土)に、追加公演が決定しています。
謎解きに興味のある人におすすめします!

あと、ひとつ反省点があって、もっと着込んで行けば良かったです。寒かった…。
水族館って、屋外の施設もありますものね。
これから参加する方は、当日の最低気温など調べて、服装に注意してお出かけください。

 

***

おまけ。

水族館のレストランで食べたパフェ。おいしかったよ。
普通サイズを食べましたが、ミニサイズのパフェもあります。

Aquariumparfait_3
イベント終了後、品川駅の「Camp Express」で食べた野菜カレーはこちら。
すみません、撮り方が悪くて、山盛りの野菜が映らなかった。にんじん、じゃがいも、トマト、レンコン、ネギ、さつまいも等、これでもかと野菜が入っています。とっても美味しかったdelicious

Campexpress
楽しい1日でした!happy01

こぼれ話:ブクログのパブーを使ってみました

たまたま今日は時間があったので、ブクログのパブーという電子出版サービスを使って遊んでみました。
簡単に言うと、「ネット上の無料サービスを使って、無料の電子書籍を出版してみたよ」
いえ、全部を1冊にまとめるような本格的な取り組みではありません!
お話をこういう形式にしたら、ブログに掲載してあるより読みやすくなるかな? という実験です。

【対象】
このブログをご存じない方の目に触れるかもしれないことを考えて、単品でも読みやすいお話を選択。
ブログ村トーナメントに出品したことのある、「光り姫」と「風に揺れる花の中で」にしました。

【Web公開版】
ブログ感覚で編集できるので、ブログからコピーして貼り付けて、あっというまにWeb版のできあがり。簡単。
1記事が1ページに表示されつつ、つるつると続けて読めるので、うん、ブログで「次へ」「次へ」と読み進めるより、読みやすいです。

【PDF版】
PDF生成機能が提供されているので、最初に作ったWeb公開版をもとに、PDFファイルを作成することができました。
作成するとどんな良いことがあるかといえば、「このお話、保存しておきたい」と思ったとき、ダウンロードして保存しておけるようになります。見開きで読んだりもできます。
が、記事のどこまでがPDFの1ページに収まるかは、実際に生成してみないと分からないので、1ページずつに区切るのが、かなり大変でした。(プレビューはあるのですが、あまりあてになりません。)
また、できあがったファイルを確認しようとしたら、パソコンでは読めたけど、スマホ(Android)のアプリからは読めませんでした…。
だ、大丈夫かなあ…。
自分のパソコンでPDFファイルを作成できる人は、自分で作成したファイルをそのまま公開するほうが、楽で、確実と思われます。
→ 2015/3/17 追記:エラーの原因は、フォント指定したときに自動生成されたコードの不具合であることが判明。手入力で直して、解決できました。

【EPUB版】
いわゆる「電子書籍」、EPUBファイルも、生成機能が提供されています。
でも、作成されたファイルのエラーを、「EPUB Validator」という外部のチェックツールでチェックしてみたら、エラーがいくつも出ました…。
スマホ(Android)で見てみようとしたら、PDFと同じく、エラーで開けませんでした…。
だ、大丈夫かなあ…。
自分のパソコンでEPUBファイルを作成できる人は、自分で作成したファイルをそのまま公開するほうが、楽で、確実と思われます。
→ 2015/3/17 追記:これも、フォント指定したときに自動生成されたコードの不具合を直したら、解決できました。

【できあがった本】
今回、できあがった電子書籍(無料)は、こちらです! ご興味あれば、どうぞ。
※ 2015/3/13 19:40現在、「Windows8.1 + IE11」で、うまく表示されない現象を確認。
 → その後、Windows Update で修正されました。解決。

【最後に】
もし、「そういえば、ブログでちまちま読むのが大変なあのお話も、こういう形式にしてほしいなあ」などのご要望があれば、、おっしゃってみてくださいね。
もちろん、ブログでの掲載は、やめませんよ~☆

作者より:「人さらいと馬」

フルート(ルーク)が連れている馬のことは、そのうちに書こうと思いつつ、これまできっかけがなく、書かずに来てしまっていました。
神馬の血を引くとしてリーデベルク王家に献上された白馬は、献上されたとき、まだ仔馬でしたが、すでに「リーデア」(貴き自由)という名を持っていました。フルートが名づけたわけではありません。
血統のゆえに、長命な馬です。「夏の訪れ」において、セレンと初めて会った10才のフルートが連れていた仔馬はリーデアです。また、この旅が終わってからも、リーデアはずっとフルートの傍らにあります。

漆黒の、かっこいい黒影は、これも何かいわれのある馬に違いありませんが、具体的なことは不明です。黒影の乗り手である、やせた男の正体も不明です。そういうお話です。
旅先で出会った正体不明の馬と乗り手にまつわる、「読み終わって、なぜか気持ちの落ち着くお話」であれば良いなあ、と思いながら書きましたが、いかがでしたでしょうか。

次回はどんなお話にしようかな。誰のお話にしようかな。悩み中です。

→ 目次に戻る

人さらいと馬(04)

 ルークは、追って来る者たちの姿を確認すると、男に言った。
「あんたは、人買いや人さらいを仕事にしている奴らとは違うようだ。面倒なことにならないうちに、もう行ったほうがいい」
「うむ。わかってもらえて嬉しい。おぬしからは逃げきれんようだからな」
 痩せた男は、ふたたび黒い馬の背に戻り、淡々と話した。
「黒影に追いつける馬はこの世に2頭しかいないと、占い師から聞いたことがある。いずれも神馬の血を引いて、1頭は北の国の王家に、1頭は内陸の国の王家にいると。多くは聞くまい、不思議な縁もあったものだ。健勝でな」
「あんたたちもな」
 男はうなずいて、さっきまで連れて行くつもりだった、鳶色の髪の子供を見下ろした。
「では、元気でな、アルト」
「うん。おいちゃんと、黒影もね!」
 真心のこもった声に、男は口元をほころばせ、もう一度うなずいた。そして、黒馬を走らせて、去って行った。
 ルークが振り返ると、橋の向こうには、追手ふたりの馬が辿り着いていた。どちらの馬も、橋を見ると怯えて、渡ろうとしない。片方の乗り手――少年の父親は、馬から下りて、橋の上を転げるようにして走って来た。
「アルト! アルト! 無事か!」
「父ちゃん・・・」
 少年も、やがて駆け出した。橋の上で、父親は息子をしっかりと抱きしめた。少年は、おそるおそる言った。
「父ちゃん。おいら、父ちゃんの子供?」
「当たり前だ、ばかやろう!」
 少年は口元を震わせて、泣きだした。それから、親子は手をつないで、橋を戻った。ルークと白馬も、橋を渡って戻った。目が合って、セレンがうなずいた。
 村まで帰る道すがら、親子は二人で同じ馬に乗って、いろいろと話しているようだった。家を追い出されたと感じた少年が、かっこいい黒馬に魅せられて村を出る決心をしたことを、おそらく父親は、なにがしか反省をしながら聞いているだろう。
「ゼラルドとフィアは?」
と、ルークが尋ねると、セレンが答えた。
「聖札をめくったら『無事に戻る』と出て、留守番をすると言ったから置いて来た」
「そうか」
 戻ると、話を聞いた村人たちが、みなで出迎えてくれた。フィアが、にこにこしながら、
「きっと取り戻して帰って来ると思ってたわ。ルークって、鞍も手綱もつけずに馬に乗れるのね。かっこいい!」
「リーデアだけだ。こいつとは一心同体だから。ほら」
と言って、ルークは、白馬の背の上で逆立ちをしてみせた。集まっていた村人たちは、もちろんアルトも、わあっと歓声を上げて、手をたたいた。
 あとで、人が散ってから、ルークは、馬の上で逆立ちしたことをセレンに叱られた――「君の将来は、大道芸人ではないのだから」。うるさいなあと聞き流しながら、王子は、愛馬に乗って橋を跳び越えたことは言うまい、と思ったのだった。

(完)

人さらいと馬(03)

「おぬし、子供を返せと言ったな」
と、人さらいが穏やかに言う。
「ああ、言った」
と、ルークが応じる。
「だが、この子供は、わたしの息子だ。そうだな、アルト」
 男が腕の中の少年に問いかけると、少年は硬い表情でうなずいた。
「うん。おいらは今日から、おいちゃんの子供になった」
「そういうわけだから放免してくれ。見てのとおり、無理強いなぞしていない」
 言われて、ルークは、しげしげと二人を眺めた。
 男のほうは、いくらか風変わりな様子だが、嘘をついているふうではない。また、少年のほうも、不安でいっぱいの顔をしてはいるが、自分が何を言っているかを理解しているようだ。ルークは、少年と話してみることにした。
「おまえ、おやじさんとケンカでもしたのか?」
「ケンカじゃないよ」
と、少年は答えた。口をへの字にして、
「おいらが牛の世話をさぼったから、父ちゃんが怒っちゃったんだ。もう俺の子じゃないって、言われちゃったんだ・・・」
「どうして、このおいちゃんの子供になったんだ?」
「黒い馬がカッコよかったから、村はずれまで付いて行ったら、おいちゃんちの子供になればずっと一緒にいられるぞって、言われたから」
「そうか。でも、おやじさん心配してたぜ。息子がさらわれた、って大騒ぎしてたぞ」
「えっ・・・。でも、おいら、もう父ちゃんの子供じゃなくて・・・」
「一緒に帰らないか」
「えっ、でも・・・」
 少年は、自分を抱えている男を見上げた。男は少し寂しそうな顔で見下ろした。
「帰りたいのか?」
「・・・うん。・・・ごめんなさい」
「まあいいさ。せっかく、黒影もアルトを気に入っていたのだがな」
 少年は、馬のたてがみを撫でて、つぶやいた。
「・・・ごめんな、黒影」
 男は、少年を連れて、馬から下りた。ルークも馬から下りて、少年を引き取った。
「あんたが話のわかるやつで、助かったよ」
「黒影に乗っていて追いつかれたのだからな。こういう巡りあわせだったのだろう」
 男の視線がそれたので、ルークが振り返ってみると、向こうの丘を、少年の父親とセレンが、それぞれ馬に乗って下って来るところだった。もう少ししたら、橋まで辿り着くことだろう。

はみ出て、あと1回あります。

人さらいと馬(02)

 さて、ルークのほうは、林をすぐに通り抜けて荒野に出ると、飛ばせるだけ馬を飛ばせた。もとより、神馬の血を引くと言われている馬だ。今は馬具も付けていないから、ことさらに、風のように速く走る。ルークはただ、白馬のたてがみを軽くつかんで、馬に任せているだけだ。
 やがて、人さらいと思しき後ろ姿が、遠くに小さく見えて来た。ルークとは対照的に漆黒の馬を駆っており、濃灰色のマントをひるがえして、さらった子供は前に抱いているのだろう、後ろからはよく見えない。連なる丘を上ったり下りたりするたび、ちらちらと見え隠れする人馬の姿は、思ったよりも遠くを走っており、追いつくには時間がかかりそうだった、が、徐々に距離を詰めている。
 あちらの馬も尋常でなく速いようだが、と気づきながら、ルークはいくつめかの丘を越えた。人さらいの行く手に、大地の裂け目と、木でできた橋が見えた。あれが、少年の父親の言っていた「橋」か。橋の向こうは、じきに森になっているようだ。森に入ったら、視界が悪くなるうえ、速度も出なくなるだろう。なんとかして橋の手前で追いつきたいが、ぎりぎり追いつけるか、追いつけないか。
「馬2頭が同時に渡ったら落ちそうな橋だぞ」
と、ルークは馬に聞かせるかのように、声に出して言った。
「向こうの馬が橋を渡り始めたら、俺たちは橋の手前で、みすみす見逃すようだな」
 言葉がわかったのかどうか、白馬はぐんと速度をあげた。
 彼我の距離は、いっそう縮まって、もういくらも離れてはいない。だが、橋ももうすぐだ。あと少しのところで、前方の黒馬は、橋を渡り始めてしまった。仕方ない。
「リーデア、止まれ。橋の手前で待たないと、双方が谷に落ちる」
 ルークは声をかけながら馬を止めようとしたが、ふだんなら言うことをきく白馬が、今日は従わなかった。軽快に突き進むその様子は、まるで――
「おい。まさか、跳ぶ気か?」
 ルークは驚いて言ったが、無理には止めなかった。果たして、白馬は橋の手前で、地を蹴って跳躍した。並の馬には跳び越えられるはずもない、ぽっかり裂けた大地の上を。
 ルークは、こわいもの知らずにも、跳び越えながら真下の谷を見下ろした。そして、さしもの彼も、少々、肝を冷やすことになった。切り立った崖の下は、まさしく、奈落。
 白馬は、橋を跳び越えて、ゆうゆうと着地し、再び駆けた。前を行く黒馬は、橋を渡ったときに速度を落としたらしく、すかさずルークは馬を並べる。
「おい、おっさん! 止まれよ! 子供を返せ!」
 ルークが声を張ると、人さらいは振り返り、ほう、と驚嘆したようだった。
「黒影に追いついたのか。たいしたものだ。いいだろう、止まれ、黒影!」
 二頭の馬は、速度を落とし、やがて止まった。人さらいは馬の向きを変え、ルークに向き直った。痩せて背の高い男で、体の前に少年を抱いており、少年は不安そうな顔でルークを見ている。

人さらいと馬(01)

 一行は昼過ぎに、小さな村に着いた。次の村までは一日かかると聞いたので、今日は先に進むのをやめておくことにした。村のはずれに、良い牧草地があったので、村人たちの許しを得たうえで、馬具を外した馬たちを連れて行き、放しておくことにした。
 のんびりと草をはむ馬たちを眺めながら、自分たちものんびりと雑談を交わしていた旅人たちの平穏は、しかし、そう長くは続かなかった。
 牧草地に隣接する林を通って、向こうから、「おーい、おーい」と呼ばわりながら駆けて来る者があり、何だろうと旅人たちが目をやると、小太りな男が1人、ぜいぜいと息を切らせながら辿り着き、涙目で訴えたのだ。
「・・・人さらいだ! 頼む、追ってくれ! やつは馬で逃げた。わしの息子が・・・」
 林の向こうを指さすのを見て、ルークが素早く応じた。
「俺が行く。その子の名前は?」
「アルト。9才。鳶色の髪」
「わかった。来い、リーデア!」
 ルークが呼ぶと、白馬が頭を上げて、駆け寄って来る。
 鞍も手綱もつけぬまま、ルークは慣れた様子で愛馬に飛び乗った。
「道は一本か?」
「橋を渡るまで一本道だ。なんとかして、橋の手前でつかまえてくれ!」
「やってみる」
 ルークは馬の首をめぐらして、あっというまに林の中へ消えた。
 男は、心配そうに見送ったが、こんな時だというのに、やや感じ入ったようだった。
「街の人でも、裸馬に乗れる人はいるんだな。しかも、素晴らしく良い馬だ。頼もしい」
「とても足が速い馬だから、きっと追いつくと思うわ」
と、フィアが、力づけるように言った。さらに励まして、あれこれと言葉をかけている、そのすぐそばで、ゼラルドは首をかしげてセレンに訊いた。
「君も、裸馬に乗れるのか」
「乗れなくはないけれど・・・得意ではないな。でも、もし君がルークに感心しているのだとしても、ルークが戻って来たとき、絶対に、そのことは褒めるなよ」
「・・・?」
 けげんそうな顔をした黒髪の若者に、セレンは細い眉を寄せながら説明する。
「褒めると図に乗るから。あの馬の上でなら、ルークは手を離して立ち上がることもできるし、逆立ちすることもできるんだ。でも、どう考えたって、彼のような立場でやるべきことではないだろう! 調子に乗って遊んでいるうちに、もし落馬して万一のことでもあったら、ぼくは陛下に何と報告すればいい?」
「・・・わかった」
と言って、ゼラルドは、小さな溜息をひとつついた。セレンは軽く睨んだが、うなずいた。
「ともかく、鞍を置いて、ぼくたちも追ってみることにしよう」

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