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(海を映す庭)(01)

 海辺の大国ウェルザリーンの城には、いくつかの庭があった。散策して楽しむための、花の咲く庭。眺めを愛でるための、孔雀のいる庭。そして、物思いにふけるための、静かな砂の庭。
 砂の庭は、城の敷地の外れにあった。風に舞わぬようまじないをかけた白砂を広く敷き詰め、白壁に青いタイルを嵌めた小さなあずまやを配した、簡素な庭だ。砂の下に土があるため、1年を通して、そこかしこに薄青い平たい花が咲いた。何代か前の王が好んで訪れたという静寂の庭を、ゼラルド王子はことのほか気に入っているようで、天気の良い日の昼下がりには、しばしば、あずまやの中に黒髪の王子の端正な姿を見ることができた。
 王子はそこで、護衛や従者を遠ざけて、書物を書き写したり、聖札をめくったり、あるいは単に思索したりしていた。おひとりでは危険なのではないか、と言う者もあったが、とにかく周りは開けた砂地である。もし不遜な輩が近づこうとしても、王子に気づかれずに済むとは思われないし、また、王子は優れた<月の力>の使い手だ。したがって、心配は無用であろうというのが、大勢の見方なのだった。
 義妹のユリア王女が、あずまやにいる王子を訪ねて来ることもあった。王女も、この場所ではお付きの者たちを遠ざけるのだが、こちらも<月の力>を縦横に駆使する聖者であるから、あえて押しとどめる者もない。聖王家の兄妹が、小さなあずまやの中、ふたりきりで何を語らっているのかについては、良からぬ憶測をする者もないではなかったが、表だって口に出されることはなく、それというのも聖王家、ことに王子について陰口を叩けば、原因不明の体調不良を患うことになると、皆が暗黙のうちに了解していたのだった。

「ごきげんよう、お兄さま」
 ユリア姫は、いつもと同じように、あずまやの入口で愛想よく言って、優雅にお辞儀をした。丹念にくしけずってある、つやつやした黒髪が揺れた。むろん、兄王子のほうは、庭を横切って近づいて来る妹姫に早くから気づいていたが、声をかけられてから初めて顔をそちらに向け、妹が頭を上げるのを待って、無言で頷いた。彼には、妹を迎えるときに掛けるべき言葉というものが、よく分からなかった。彼に近しい者たちが次々と病に伏す原因が、妹の嫉妬による呪いなのだと知っているから。そして、やめるように何度言っても逆効果なのだと、暗く苦く悟っているから。
 だが、それでも、不思議なことに、彼は、他の場所ではなくこのあずまやでなら、妹と過ごすひとときを、それほど嫌いではなかった。他者に聞かれる心配なく、思うままを語らうことのできるこの場所で、いつか自分の言葉が相手に届く日が来るのではないかと、心のどこかで期待しているのかもしれない――違うのかもしれない、よくわからない。
「ねえ、お兄さま」
と、ユリアは、尊敬と憧憬をこめたまなざしで兄を見つめて言った。
「わたくし、お兄さまに以前言われたことについて、考えました。聞いてくださる?」
 わけもなく胸のざわつきを感じながら、王子は静かに、「話してごらん」と答えた。

おそらく全2回。

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