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2015年6月

にじむ闇(01)

 どこかで、フクロウが鳴いている。
 黒い影と化した木々が、ザワザワと梢を揺らしている。
 深い夜の底で、焚き火が燃えている。
 火のそばで、金髪の王子は、長剣を抱いて地面に座り、寝ずの番をしている。

 同行の友人が、眠る前にさりげなく焚き火にまじないをかけ、火が消えぬようにしてくれたらしいことには気がついていた。妖魔や獣が襲って来ないよう、目には見えない結界らしきものを張ってくれたようだ、とも。
 だが、友人が友人にできることをしてくれたように、彼は彼で、自らにできることをする。だから、まぶたを半分閉じて休みながらも、眠りこむことはせず、彼は火を見つめて番をしている。

 黒髪の友は、火を挟んだ反対側で、毛布にくるまって眠っている。旅を始めた頃は、野営をすると、どこへともなく姿を消してしまったものだが、最近は近くにいてくれるようになった。少しは信用してくれるようになったのだろうか? 近くにいるからといって、火の番を代わってくれるわけではないが、それはそれでかまわない、と、彼は思う。
 今ここにいない、別の友人と野に休むときは、交代で番をしたり、二人で話をしたりして、退屈せずに夜を明かすことができる代わり、翌日、寝不足で機嫌が悪くなった友が並べる不平を、はいはいと聞いてやらなければならない。どちらの友人と野宿するのがいいかは、さて、どちらとも言えないが、はっきりしているのは、どちらも大切な友だということだ。

 不意に、火のパチパチとはぜる音だけを残して、周りの音という音が、ぴたりと止んで聞こえなくなった。目を上げると、さきほどまで焚き火の明かりでうっすら見えていた森の木々が、黒く塗りつぶしたように闇に溶け、あたり一面、漆黒の闇と化している。火は変わらずに燃えているのに、映し出されるものは何もない。
 ちり、と焦げ付くような違和感があった。この危険な感覚には、覚えがある。
「ゼル、何か来るぞ」
 低く静かに声をかけると、焚き火の向こうで、黒髪の友も体を起こした。あたりを見回してから、フルートのほうに物憂げな視線を投げ、
「・・・これは、もしや」
と言う。フルートはうなずいた。
「ああ。あのときの<闇姫>が、来る」
 二人は立ち上がり、油断なく長剣に手をかけて、待った。

予告:「にじむ闇」

お待たせしております。予告です。

邂逅」にて登場したまま、それっきりになっている闇姫様に、再度のご登場をお願いするべく、書き始めました。
闇姫に遭遇するのは、「邂逅」のときと同じく、フルートとゼラルドです。
「邂逅」と同じく全2回(たぶん)の、短いお話です。

ただ、仕事の忙しい月末月初に突入するうえ、異動のため後任者に引き継ぎながら作業しなければならず、創作スケジュールには自信がありませんcoldsweats01
1回目のリリースはあさって火曜を予定していますが、予定が狂っても堪忍してくださいねsweat01

ではでは、よろしくお願いいたします☆

表紙ができたよ!「風に揺れる花の中で」

イラストレーターの池田優さんにお願いしていた、「風に揺れる花の中で」の表紙が出来ました!
やっぱり! とっても素敵ですlovely

うれしい…shine 池田さん、ありがとうsign03
いずれ、他のお話の表紙もお願いしたいなあ、と思っています。
電子書籍を作る楽しみが、1つ増えましたnotes

池田優さんに応援メッセージを贈る方は、池田さんのホームページとブログへGo!
F:chocalo (ホームページ)、 F:chocalo (ブログ)

名探偵コナン鳥取ミステリーツアー(2015)に行って来たよ♪

名探偵コナン鳥取ミステリーツアーに行って来ました。2泊3日。
以下、記録と感想です! 興味の無い方はスルーしてくださいね~。

まず、謎解きの感想なのですが、「これ、難しいよね?」でした。
コナンのミステリーツアーに何度か参加したことのある友人と一緒だったのですが、彼女も、「今年は難易度が高い。それに、過去のツアーでは、謎が解けない人のためのお助けスポットがあったのに、今年は無い」と。
2人であれこれ考えて、一応、こんな感じかなあという推理を組み立てはしましたが、ぜんぜん自信がありません。
応募締切は秋だから、もう少し時間をかけて考えてみようかしら…。

2泊3日で、どんなふうに観光したのか、これから行く方のご参考になるかもしれないので、行程を載せておきます。

※☆印は観覧ポイント、赤字はミステリーツアーのチェックポイントです。
※チケットは、JR西日本から、出雲発「鳥取ミステリーツアーきっぷ」を電話で購入し、郵送してもらいました。
※現地では、いろんなスタンプラリーが開催されていました。どこでスタンプを押して、どこで引き換えるか、しっかり管理してグッズをもらいましょう。
バス時刻表は、現地バス停の時刻表が分かりづらいことがあるので、事前にWebでチェック・印刷して持って行くことをおすすめします。

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【1日目:飛行機で米子へ→三朝泊】

 羽田空港~米子空港(飛行機) AM着

 米子空港~米子駅(空港連絡バス)

 米子駅~とっとり花回廊(花回廊シャトルバス)

  とっとり花回廊&昼食(約2時間)
  途中で雨に降られましたが、屋根のついた回廊やドームがあるので安心でした。
  お昼は、園内のレストランで。「いのしし丼」は豚丼に似たお味。
  園内売店で「梨ソフトクリーム」を食べて、とても美味しかったnotes
  お花は、この季節、百合がすごく綺麗でしたlovelysign03 紫陽花も良かったです。

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 とっとり花回廊~米子駅(花回廊シャトルバス)

 米子駅~倉吉駅(快速とっとりライナー)

 倉吉駅~三朝宿泊施設(宿泊施設の送迎車) 17:30頃着

  陣所の館(宿泊施設から徒歩)
  見るのにそれほど時間はかかりません。

 三朝泊 … 温泉でリラックスspa

【2日目:三朝から出発→鳥取泊】

 宿泊施設(8:00頃)~三徳山(タクシー)

  三徳山にお参り(約1時間)
  体力に自信がないと、投入堂まで登るのは大変そうです。
  本堂まで行ければ良いという人は、タクシー60分コースが断然便利!
  投入堂をふもとから見上げて、本堂まで上ってお参りしました。

 三朝~なしっこ館(無料巡回バス)

  なしっこ館(約1時間)
  二十世紀梨に関する情報いろいろ。梨の試食もあり。
  私達が行った日は、スイカの試食もありました。

 なしっこ館~大岳院(徒歩20分くらい)

  大岳院(10分くらい)

  白壁土蔵観光案内所(10分くらい)

 昼食
 「久楽」さんで「ぴん麺」をいただきました。1日に限定20食。コラーゲンたっぷり。
 麺を食べ終わったあと、ごはん・卵・薬味を入れて雑炊にします。美味しかったです。

 赤瓦・白壁土蔵~倉吉駅(バス)

 倉吉駅~鳥取駅(スーパーまつかぜ)

 鳥取駅~宿泊施設 徒歩・15:00頃着

 宿泊施設~すなば珈琲(徒歩)

 ☆ すなば珈琲
  20分並んで待って、コーヒーとパンケーキで一息。

 すなば珈琲~鳥取駅(徒歩)

 鳥取駅~鳥取砂丘(バス)

 ☆ 鳥取砂丘(約50分)
  「馬の背」に上りました。
  あいにくの曇天。過ごしやすい気温ではありましたが、いい写真が撮れなかったー。
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 ☆ 砂の美術館(約1時間)
  砂の彫刻が、すてき、すてきheart04
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 砂の美術館前~鳥取駅(バス)

 夕食 20時頃
  「田久」さんで、夜のサービスセットをいただきました。
  おそばが美味しくて、量もあって、良かったです。

 鳥取泊

【3日目:鳥取から出発、羽田へ】

 宿泊施設(8:00頃)~鳥取駅(徒歩)
  朝食は宿泊施設で。

 由良駅~青山剛昌ふるさと館(徒歩20分くらい)
  通りにあるコナン関連のオブジェなど見つつ。
  駅のホームの待合室も、こんな感じ。
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  青山剛昌ふるさと館(約1時間)
  思っていたより楽しかったです。クイズラリーにも参加しました。

 青山剛昌ふるさと館~由良駅(シャトルバス)

 由良駅~鳥取駅

 昼食(約40分)
  「駅前市場」さんで、海鮮丼をいただきました。美味しかったです。

 鳥取駅~鳥取空港(空港連絡バス)

 鳥取空港~羽田空港(飛行機) 夕方着

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以上です。
2日目の三徳山観光に、タクシー60分コースを利用したことで、一気に余裕ができました。
3日目に行く予定だった鳥取砂丘と美術館を、繰り上げて2日目夕方に。
空いた3日目に、行かないはずだった、コナンふるさと館を入れることができました。
なお、この日程を参考に計画を立てる場合は、必ず各種時刻表と照らし合わせてくださいね

梨ソフトクリームは本当に美味しかったです~。
鳥取ではあちこちの観光名所で売られているふうでした。
今まで他で見かけたことはないのだけれど、また食べたいなあ。

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トーナメント結果のご報告

第8回 自作小説ブログトーナメントに、「跳ぶ」を出品しましたが、予選落ちでした~。
心の中で応援してくださった皆さま、どうもありがとうございましたconfident
他にどんな小説が出品されているのか、ご興味のある方は、リンクを辿ってトーナメントを見に行ってみてくださいね。
ブログ村のメンバーでないと投票はできませんが、たしか、読むだけなら誰でも読めるようになっています。
こういうイベントが、もっと多くの、読み物好きさんの目に触れたらいいと思います。
できるだけ参加することで、イベントを応援できたらいいな、と思っていますnotes

今のところ、トーナメントの都度、少しずつ色の違うお話を出しています。
「光り姫」以外は予選落ちしているので、投票者さんたちとの相性は良くないのかもしれませんが、中に1人でも2人でも、楽しみにしてくれる人がいてくれたら、いいなあと思って。
来月は「海」がテーマの作品募集らしいので、またまた色の違う「海を映す庭」を出そうかな、と。それとも、「海辺にて」に手を入れる良い機会なのかしら。んー。

進捗状況報告(2015/06/13)

闇姫イベントがあまりにも進んでいないことに愕然として、闇姫様に二度目のご登場を願いたく、思いをめぐらせているところです。
ちゃんと書けた場合には、フルートとゼラルドのお話になりますが…、んー、たぶん地味なお話になるし、うまく書けるかなあ。
次作が闇姫2回目のお話になるか、別なお話になるかは、まだ五分五分というところ、です。

来週は、仕事以外のところで少し取り込む予定なので、あまり更新できなかったり、馴染みのサイトさんを巡回できなかったりしそうです。お許しくださいませ~。

ひとやすみ:600個目の記事です♪

サイト開設から4年半経っていることを考えれば、必ずしも早いとはいえない、600個目の記事です。でも、継続の証です。
いつも温かく励ましてくださる皆様のおかげです。どうもありがとうございます!

うっかりと、すごく季節外れな「跳ぶ」をトーナメントに出品してしまったところですが、振り返ってみれば、「跳ぶ」を連載していたあたりから、コメントをいただくことが増えて来たのでした。3年前のことなのですね、懐かしい。初めてブログランキングで1位を取ったのも、「跳ぶ」連載中でした。
あのころは、まだ、セレンの本命も明らかになっておらず、ゼラルドが国を出たときの逃避行も書けておらず…、そう思うと、なんだかんだ言って、少しずつ物語は進行しているのだなあ!と思います。逆に、闇姫関連のイベントは全然進んでいないのか…と、あらためて気づかせられていますcoldsweats01

今年は、うちの王子様・王女様たちが旅に出た、まさにそのときの話、を書くのが目標なのですが、もう6月。半年経ってしまいました。ほんとに今年中に書けるかな…sweat02
ちなみに、もうひとつ今年のプライベートの目標に、友達を呼べる程度に家の中を片付ける、というのがあるのですが、これまた達成できるかどうか非常に怪しい…sweat02

でも、うん、まあ、いつもどおり。ベストを尽くします。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたしますheart04

跳ぶ(トーナメント参加用)

 ある晴れた日の昼下がり。
 少し空き時間が出来たので、少年は屋敷を出て街へ行き、広場をのぞいてみた。すると、そこでは同年代の友人たちが、何やらおかしなことをやっていた。一定の間隔を空けて並びながら、膝は伸ばして、腰を折り曲げて、頭は引っ込めて・・・。
「あれ、セレン? 久しぶり」
 見つけてくれたのは、端っこに立っていたルークだった。
「ルーク。みんな何やってるの」
「これから馬跳び。広場を端から端まで跳んで行こうって。混ざる?」
「馬跳びって何?」
「知らないのか。ええと・・・ティム、ちょっと来て」
 ルークは近くの少年を手招きして、
「セレンが馬跳び知らないんだって。見本に馬やってくれる? セレンはちょっと離れて」
 ティムは素直に、腰を曲げて手を膝に当て、頭を引っ込める。セレンは後ろに数歩あとずさった。
「よし。見てろよ、馬の背中に、こう手をついて、こう跳んで」
 ルークはティムをひょいと跳び越えてみせ、
「並んでる馬を全部跳び終わったら、今度は自分が馬になるんだ」
 言いながら、ティムと同じように馬の姿勢になる。
 今度はティムが体を起こして、ルークの背中の上を跳び越えた。
「どう、わかった?」
「・・・うん、たぶん」
 セレンは緑色の目をぱちくりさせた。わかったけど、これって、要するに・・・ルークの上を――身分を隠した王子殿下の頭の上を、みんなが跳び越えることにならないか?
「じゃ、試しに跳んでみろよ」
といって、ルークはセレンの前で馬になった。
「え・・・う、うん」
 セレンはおそるおそる、ルークの背中に手をついた。あたたかい。当たり前か。
「勢いつけて。跳んでみな」
「うん」
 セレンは腹をくくった。ぐっとルークの背を押して、跳び越えた。難しいことなんて何もなかったけれど、なんだか頭がくらくらする気持ちがした。ああ、この国の王子殿下の上を跳び越えてしまった・・・。
 ルークは気にするふうもなく体を起こして、
「そ。簡単だろ? じゃ、馬になってみ。あー、それでいいんだけど・・・」
 ルークは手を伸ばして、流れ落ちるセレンの長い髪を掬い取った。
「この髪、なんとかならないか?」
「あ、そうか」
 背中まである月色の長い髪は、たしかに邪魔だ。セレンは髪を束ねて持って、
「片手で押さえてればいいかな? 今度、切って来るね」
 ルークはぎょっとした顔をした。
「えっ! 俺、そんなつもりじゃ」
「あたし、編んだげようか」
と言ってくれたのは、馬跳びに参加しない女の子たちを代表したエリナだった。最近少し大人びて綺麗になったエリナは、雑貨屋の娘だ。
「ね、ひとつにまとめて、三つ編みにしたらいいと思う。どう?」
「三つ編み・・・なんだか格好悪いけど、仕方ないか。お願いしていい?」
「うん! やった! あたし、セレンの髪、一度編んでみたかったんだ。きらきらして、さらっさらの髪」
 言いながら、エリナはセレンの髪を手で梳いて、手早く三つ編みに編んでくれた。
「できたよ。カッコ悪くなんてないよ」
「じゃ、始めるぞー!」
 ルークは陽気に大声を張り上げる。
「途中で怒られたら、解散して鬼ごっこなー!」
 そうして、セレンはみんなの上を跳んだし、自分もみんなの馬になった。セレンの上を跳ぶとき、誰もが少しためらっているようだったのは、自分がルークに対して感じたのと同じためらいだ、とセレンにはわかったが、そうやって跳んだり跳ばれたりするのは、思った以上に、とても楽しかった。自分のてのひらに感じる友達の背のぬくもりも、自分の背に感じる誰かの手のぬくもりも、セレンには新鮮な感覚だった。
 結局、馬跳びの列は、広場の端に着くより先に、大人たちに邪魔だと怒られて、解散して鬼ごっこになった。馬跳びには入らなかった女の子たちも、鬼ごっこには混ざって一緒に走った。
 狭い路地で、セレンをつかまえたのは、髪を編んでくれたエリナだった。
「つかまえた!」
 息を弾ませて笑ったエリナは、きょろきょろと辺りを見回して、路地に二人きりなのを確かめると、真面目な顔になった。小さな声で、
「あのね、セレン。聞いてくれる?」
「うん、何?」
「言おうかどうしようか、ずっと迷ってたの。そのう、あたしね・・・」
「うん」
 やさしく応じながら、セレンは内心、ああエリナもルークのことが好きなんだ、と、苦笑した。実のところ、女の子たちからこうして相談を寄せられることには、すっかり慣れっこになっていた――「ルークって誰か好きな子がいるの?」とか、「ルークってどんな女の子が好みなの?」とか。当の、金髪碧眼の王子様は、全然、まるっきり、むしろ感心するくらい、彼女らの気持ちに気が付きはしないのだけれど!
「あたしね・・・手の届かないひとだって、わかってるんだけどね・・・」
と、エリナは細い声で言った。あれ? まさかエリナは、ルークの正体を知っている?
「わかってるんだけど、でも・・・でも、あたしね、セレン、あたし、あなたのことが・・・」
と、そこまで言って、エリナは真っ赤になった。
 セレンは、いろいろな物語を読んでいたし、それなりに気の回る性質だったから、親友なら気付かなかっただろう、その先の言葉がちゃんと想像できた。半ば不意打ちだったので、どうしたらいいのか、とっさには思いつかなかったが、ともかく! ありったけの誠意をこめて、エリナがその先を言う前に彼女の手を取った。
「ごめんね、エリナ。でも、ありがとう」
 ささやいて、指先にそっと唇をふれると、エリナはへなへなと路上に座り込んでしまった。
 セレンは自分も路上に膝をついた。
「大丈夫? ねえ、エリナ、これからも友達でいてくれるよね?」
「・・・うん。ごめん。ごめんね。ありがとう。セレン」
 エリナは泣きそうな顔で、笑った。その様子が、あまりに可愛らしくて、いじらしくて、いっそ抱きしめてしまいたいくらいだ、と思ったけれども、セレンは立ちあがって手を差し伸べた。
「戻ろう? みんなのところに」
「うん・・・。えっとね、あのね、もし迷惑でなかったら、また髪の毛、編ませてね」
 それがエリナのせいいっぱいなのだ、とわかったから、セレンはうなずいて、
「いいよ。それなら当分、切らずにおくよ」
と言った。
「ありがと!」
 エリナはうれしそうに笑って、差しのべられた手につかまって立ち上がると、自分から手を離し、顔を上げ、先に立って路地から走り出して行った。

 その年の暮れ近く、セレンは13才になった。リーデベルクでは、貴族の嫡子は13才で社交界に出ることが許される。その際、王と王妃に謁見し、男子であれば国王に剣を捧げ、女子であれば王妃に花束を捧げるのが習わしだ。
 新年のパーティーに参加できるようにと、セレンの謁見の儀は暮れのうちにおこなわれることになった。国で一番王家に近い家柄とあって、次期当主の人となりに興味を持つ貴族は多く、何かと忙しい時期にもかかわらず、社交界ではいろいろな噂話が咲いた。セレンの、分け隔てなく人に接する習慣はすでに広く知られており、そのことを良く言う者もあれば、悪く言う者もあった。少女と見まごう長い髪についても、愉快と言う者があれば不愉快と言う者もあった。
 もっとも、長い髪については、当然のように切ろうと思っていたのだ、セレンは。それを止めたのは、まだセレンが誕生日を迎える前に、セレンとエリナの会話に割り込んで来たルークだった。
「そろそろ、この髪、切ろうと思うんだ。国王陛下にお目通りがかなうから、その前に」
と、セレンが義理堅くエリナに話していて、
「そうなの? こんなにさらさらで綺麗なのに」
と、エリナが悲しそうな顔をしたとき、
「ばか、切るなよ!」
とルークが勢い込んで横入りして来たのだ。セレンが驚いて、
「ルーク?」
と聞き返すと、ルークははっとしたようで、きまり悪そうな顔になりながら、
「いや、見た目が変わっても、セレンはセレンだけど。でも、ほら、エリナの言うとおり、せっかく綺麗な髪なんだからさ」
「・・・? まあ、君たちがそう言うなら」
 というわけで、セレンは父親と、切れ、切らない、の押し問答をする羽目になったが、どうにか友人たちのために「切らない」という選択を貫いたのだった。

 果たして、セレンの謁見の儀の当日は、見物しようと参列を希望する貴族たちがあまりに多いため、身分の高い順に入りきるところまで謁見の間に入れてもらい、残りは次の間に控えて出待ちをするという、例を見ない盛り上がりとなった。両親とともに謁見の間に通されたセレンは、ひそひそ声の真ん中を通り過ぎながら、帰りにはこの人々すべてと言葉を交わさなければならないのかと思って、内心、少しうんざりした。怖いものなしの出身で、かつ、もともと社交的な素養を備えていた(と最近明らかになって来た)セレンでさえ、だ。
 もちろん、おくびにも表情には出さなかった。白と金を基調とした正装で、金色の長い髪を後ろで束ね、微笑をたたえて歩みゆく少年の姿は、大変美しく印象的で、後日、宮廷画家が何枚も絵に描いてくれたほどだ。
 謁見の間では、王と王妃と、フルート王子が、椅子に座って待っていた。レ・ディア夫妻がお辞儀をして左右に分かれた中を、セレンはまっすぐに進み出て、優雅にひざまずいた。国王一家に対して失礼のないよう、視線は伏せたままだったが、ちらと視界の端に映ったフルートが、自分よりも緊張しているように見えて、おやと思った。
 気のせいだろうか? いずれにしても、今のセレンに出来ることは、大過なく儀式を済ませることだけだ。それでフルートが安心してくれれば良いのだが。
「セレン・レ・ディアでございます、陛下」
 セレンは柔らかな、しかしよく通る声で、型どおりに挨拶を始めた。
 もともと、この儀式に必要な口上は、あまり難しいものではない。自己紹介から始まり、国王に剣を捧げる定型文で終わりさえすればよく、その間に挟み込まれる装飾的な文言については、幾通りかのパターンの中から、好みのものを選択すればよい。
 家柄の都合上、セレンは一番長いパターンを選択せざるを得なかったが、それでも、少年が暗記に苦労するような長さではなく、少しくらい緊張したからと言って消し飛んでしまうような複雑さもなく、セレンは余裕をもって一度も言い淀むことなく装飾文言を述べ終えた。
 さあ、あとは顔をあげて、剣の誓いをすれば良いだけだ。セレンは頭を上げて、初めて国王一家の顔を正面から見た。陛下も妃殿下も、やさしい表情で微笑んでいらっしゃる。その隣にいるフルートは――。
 王子の姿が目に入った瞬間、セレンははっとした。フルートは、かろうじて社交辞令用の笑みを口元に貼り付けてはいたが、その視線は自らの足元をじっと見つめたまま微動だにせず、ちらりともセレンのほうを見ようとはしなかった。というより、明らかに、見たくないものを見まいとして必死に目を伏せているのだった。椅子の肘掛に乗った腕はぎゅっと強張っている。
 何か自分がとんでもない間違いを犯したのではないか、という疑念にとらわれて、セレンは自分の述べたことを慌てて思い返したが、これといって思い当たることもなく。困惑しながら国王に向き直り、最後の誓約を述べようとして、セレンははたと気が付き、開きかけた口を閉じた。
 ああそうか。セレンがこうして、フルートの目の前でひざまずき、臣下の礼を取って、忠誠の誓約を述べようとしている、まさにそのことが、フルートを傷つけているのだ。セレンにとっては、こんなこと、別に何でもないことなのに。言ってみれば・・・そう、馬跳びの馬と同じようなものだ。
 あのときセレンに、何の屈託もなく「跳んでみろよ」と言って馬になったフルートが。少しばかりスケールが大きくなった馬跳びの、跳ぶ側に立ったからといって、惑うことなど何もない。でも、髪を切るなと言ったのも、同じ惑いの表れだったのだろうか。
 跳んでごらん、と。そう言いたい。あのとき君がぼくに言ってくれたように。
「・・・おそれながら、もし、陛下のお許しを賜ることができますならば」
と、セレンは言って、言葉を切った。予定にはなかった台詞だった。緊張して、血が逆流するような気がしたが、言ってしまったからには後戻りはできなかった。
 国王は穏やかに促した。
「申してみよ」
 フルートはまだこちらを見ない。セレンは知識を総動員して、この場にふさわしい故事を選び出し、言った。
「いにしえの剣聖アイオンの例にならい、我が剣を王子殿下に捧げることをお許しいただきたく、お願い申し上げます」
 ざわ、と、列席者たちがどよめいた。このようなことは前例がない。いや、前例なら今、少年が口にしたではないか。では、剣聖アイオンとは、どのような人物なのか?
 国王の目配せに応じて、宮廷仕えの学者が、おほんと咳払いして説明をおこなった。かの剣聖は、古代レティカ王国に現れた英雄の一人であり、賢人として名高い王の治世に、ともすれば見落とされがちだった第一王子の聡明さを見抜き、この王子に剣を捧げて生涯仕えた。このときレティカはまさに黄金時代。たいへん重畳な故事でございます、と締めくくって、学者は説明を終えた。
 国王は満足そうにうなずいた。
「良かろう、セレン・レ・ディア。そなたが王子に剣を捧げることを許す」
 セレンがフルートに目を移すと、フルートは青ざめた顔でこちらを見つめており、もはや取り繕おうともせずに、きゅっと唇を引き結んでいた。まさかフルート自らがセレンの誓いを受けることになるとは予想もしていなかったのだろうし、よりいっそう苦痛に感じてもいるのだろうと、セレンには理解できた。ごめん、フルート。でも、ぼくは、君に「跳んで」もらいたい。
 父王にうながされ、フルートは椅子から立ち上がってセレンに歩み寄り、真正面に立った。仮面のように無表情になってしまったフルートの前で、セレンはひざまずいたまま、儀礼用の剣を両手に捧げ持ち、誓いの言葉を述べた――ただし、「我が忠誠の証として」から始まる通常の定型文は使わずに、柔らかな口調で、このように述べた。
「我が命は、常に縛られることなく御身の傍らにあり、御身の輝ける命を守り奉らん。
 我が魂は、常に自由の翼によりて御身の傍らにあり、御身の天翔ける魂を守り奉らん。
 御身に異存なくば、この剣を受け給え」
 フルートがその意味を理解するまで、セレンは黙って待った。それから・・・フルートの瞳に、ゆっくりと驚きの色がのぼって来て、王子はセレンの顔をまじまじと見下ろした。
 セレンはまなざしだけで肯定した。そうだよ、フルート。君とぼくとは友人だ。剣の誓いなんて、少しも怖いことはない。傍からは忠誠と服従の誓いに聞こえるだろうし、それなら周りにはそう思わせておけばいいさ。君はこの剣を取ることで、ぼくの剣の主になる、でも、その剣にぼくが何を誓ったのか、君にはわかるだろう?
 セレンはにっこり笑って、これは型どおりに、抜き身の剣を恭しく差し出した。さあ、君が跳ぶ番だ。
「どうぞお受け取りください、フルートさま」
 フルートは捧げられた剣をしばし見つめた。それから、そっと手を伸ばして、その剣を取ると、落ち着いた動作で、決まりどおりに、剣に軽く唇を当て、向きを変えて、セレンに返した。
 セレンが剣を鞘に収めて頭を垂れると、聞き慣れた、凛と晴れやかな声が降って来た。
「ふがいない主だろうが、よろしく頼む。心遣いに感謝する、セレン・レ・ディア」
 そう、フルートは、たしかに、軽やかに跳び越えたのだ。
 王子が自分の席に戻ると、大臣が儀式の終了を告げた。
「では、これにて、ディア家セレンの謁見の儀、終了といたします」
 国王一家は退出し、そのあとに大臣や学者たちが続き、最後に高齢の筆頭博士が、何を思ったか、戸口で振り返り、ふがふがと、
「たいそう、よろしゅうございました」
と言いおいて去ったのは、これは異例のことだったので、のちのちまで語り継がれた。
 立ち上がって振り向いたセレンとその両親の前に、貴族たちは列を作って、順番に祝辞を述べた――おめでとうございます、レ・ディア。おめでとうございます、セレン・レ・ディア。
 セレンは一人ひとりに笑顔で挨拶をした。また、当然その夜はディア家の屋敷で祝賀の宴が催されたので、そこでも、次々とやって来る客たちに礼を尽くさなければならなかった。すっかり疲れ果てたセレンは、あくる日は一日眠っていたくらいだった。
 両親からは、勝手に儀式の進行を変え、誓いの言葉までも変えたことを叱られた。が、覚悟していたほどではなかったのは、あの筆頭博士のおかげかもしれなかった。

 新年のパーティーではお互いに忙しくて、それこそ形式的な挨拶を交わしただけだったから、次にフルートと話ができたのは、雪の積もったある日、街で「ルーク」に会ったときだった。
 もう空は晴れていて、街の雪かきも終わっていて、でもまだ雪はたっぷり残っていて、いくらでも雪合戦ができそうな日。女の子たちは雪だるまや雪うさぎを作って喜んでおり、三つ編みの編み方を覚えたセレンがエリナの栗色の髪を編んでやっていると、いきなり背中に雪玉をぶつけられて・・・振り返ったら、ちょっと離れたところに、ルークが笑いながら立っていたのだ。
 セレンはエリナの髪を編み終えてから、自分も雪を拾って、ルークに投げ返した。ルークがひょいと避けて、また投げて来るから、セレンも避けて、投げ返す。どこからともなく、我も我もと子供たちが集まって来て、またたくまに、大・雪合戦になった。
 大騒ぎの中、気がつくと、ルークは敵陣ではなく、セレンのすぐ隣にいた。防壁の陰で雪玉を作りながら、こそっと何を言うかと思えば、
「セレンはさ。暮れの、あれって、緊張した?」
「当たり前だろう! 誰のせいだよ・・・」
 セレンは敵陣に向けて雪玉を放る。ルークも投げて、
「君のせいだろ。でも俺、気が付いたんだけどさ」
 自分のせい? セレンは鼻白んだが、考えてみると、なるほど否定もできないのだった。言い返すのはあきらめて、代わりに、ルークが言いかけている言葉をさらった。
「わかってる。今、先生たちにコネを作ってもらっているから。もう少し待っていて」
「え?・・・っと」
 ルークは飛んできた雪玉を避けた。
 セレンはルークのほうを見ずに、雪をかき集めながら、
「これからあちこちで顔を合わせるのに、よく知らないふりをするの、いやなんだろう」
「うん」
「ぼくが時々、君のうちに遊びに行っておけばいいんだろう」
「うん」
「本当は、特別扱いって、いやなんだけどさ。でもまあ、うちは元々が特別扱いみたいなものだし、例の儀式もあんなふうになったから。とりあえず、何をどう遊びに行くか筋道をつけるから、待っていて。たぶん・・・剣術、馬術、外国語あたりかなあ」
「げっ、外国語? 遊びじゃないだろ、それ!」
「うちも体面があるからさ、あんまりぼくが苦手な教科は外に出してくれないと思うんだよね。はい、雪玉10個」
「ああ、うん」
 ルークは気圧されたように雪玉を受け取り、全部投げて、いくつか命中させた。敵陣から、「うおっ」とか「ぎゃっ」とか「ルークのやつ、いつからあっちに行ったんだ?」とか声がする。あはは、と、ルークが楽しそうに笑う。
 こうして皆で転げ回って遊べる時間は、もうそれほど残っていないのだろうけれど・・・と、セレンは思った。最近、同い年くらいの少年たちは、「家の仕事を手伝う」ことに時間を割くようになったし、同い年くらいの少女たちは、綺麗になって、別行動することが多くなった。でも。
 皆が大人になったとき、一緒に遊んだ思い出が、どうか一人ひとりの生きる力の糧となりますように。と、セレンは願った。ぼくにとっても、ルークにとっても、街の仲間たちにとっても。そして今は、今だけは。この幸せな光景が、少しでも長く続きますように。
 セレンは考え事をやめて、自分も雪合戦に集中することにした。
 冬の日差しの下で、キラキラ白く光る雪と、大切な仲間たちと、たわむれながら。

(完)

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約8,050字。第8回 自作小説ブログトーナメントに出品します。コメントはお気軽に♪
独立して読めそうな作品を選び、元は連載記事だったものを1つにまとめてみました。

こぼれ話:自分へのごほうびに…

毎月初はお仕事が忙しくて、色々おろそかになって申し訳ありません。
でも、がんばっているし、がんばりすぎないように気をつけてもいます。
体調が安定しているのは、しみじみ嬉しいですconfident

そして。
残業代が少し入って来たので、自分にごほうびをあげよう、と思いつきました。
何にしようかと思ったけれど。あのね。
電子書籍の表紙を、発注して描いてもらったら、どんなふうになるかしら?

それというのも、先日、ヨコハマハンドメイドマルシェに行ったとき、F:chocaloの池田優さんの絵が、とても素敵だったので。
こういう方に、表紙の絵を描いてもらったら、どんなふうになるかしら、って、思って。
…生まれて初めて、絵の発注というものをしました。

今までに作った電子書籍のうち、一番読まれているお話(作者には閲覧数が見えます)の表紙を、お願いしてみました。
なんと読んでいただくことができて、引き受けていただけました。
わあ、ほんとに?
1ヶ月くらいで描いてくださるそうです。とても楽しみですheart02 お値段は内緒☆

ターゲットは、「風に揺れる花の中で」。
ダウンロード数はたいしたことないけど、閲覧数が一番多いお話です。
無事に表紙を差し替えられたら、またお知らせしますね!

ひとやすみ:ニャシュマロが届いたよ♪

3ヶ月くらい前?に記事に書いた、大手通販フェリシモの企画・販売による「ニャシュマロ」。あのとき注文したのが、数日前に届きました。
3か月待っただけのことはあるインパクトでした。じゃーん!

Dsc_0123
なんというか、食べ物とは思えないほどの、くっきりした、猫、猫、猫。
12個入り、ぜんぶ模様が違うんですよ~。
1個の大きさは、かなり大きくて、食べごたえのあるマシュマロです。

Photo
中には、チョコクリームが入っています。
マシュマロ部分も美味しいです。
残念ながら、現在は販売終了している模様。来年も販売されるのかなあ?
遊び心のあるギフトに良いと思います。子供も喜ぶと思います。
ちょっぴり、食べもので遊びすぎな気もするけど…。

以上、ご報告でした! もぐもぐ。

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