2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

ひとこと通信欄

  • (2017/5/11夜) 春って、あわただしく過ぎて行くものなのですね。でも、ようやく身辺が落ち着いて来たような気がします。

ランキング参加中!

  • 記事がお気に召したらクリックしていただけると、作者の励みになります。(1日1回まで)

    (投票せずに順位を確認したい方はこちらから。)

読者アンケート実施中♪

  • 所要時間は5分くらい?
    個人情報の入力はありません。
    よろしくお願いいたします。
    こちらから。

SF「夜景都市」(未完)

最近のトラックバック

プロフィール

  • 城

    雪村月路
    snow.moon.rainbow☆gmail.com
    (☆を@に変えてください)
    Twitter: @ariadne_maze
    ブログ更新量について
    愛読書100冊

    うちの子同盟 うちの子同盟

無料ブログはココログ

« にじむ闇(01) | トップページ | 作者より:「にじむ闇」 »

にじむ闇(02)

 やがて、黒く塗りこめた前方の闇の中、やや上のほうに、女の青白く細い手が2本、にゅっと突き出された。若者たちが剣の鞘を払って構えると、さらに上方に、女の青白い顔が浮かび上がった。顔の下半分は黒いベールで覆われ、闇に溶けている。
 宙に浮かんだ女の、虚ろな深淵のような目が、若者たちを見据えた。まちがいなく、ひと月ほど前に二人が遭遇した<闇姫>だった。ベールの下から、生気の乏しい、かすれた声が告げた。
「ほう・・・。わらわが近づくのに気付いていたか。小憎らしいことよの。だが、今宵のわらわは下僕たちを引き連れておるゆえ・・・たとえ、そのいまいましき宝剣に妨げられ、わらわがこの手で滅することができずとも、わが眷属がそなたらを滅ぼしてくれようぞ」
 <闇姫>は青白いまぶたを半分閉じ、ゆっくりと両腕を広げた。
「さあ、皆のもの、闇より出でよ」
 とたんに、<闇姫>の背後の暗闇は、幾多の気配に満ちた。わらわらと、様々な姿をした妖魔が飛び出して来る――鋭い牙をガチガチと噛み鳴らすもの、骨ばった翼をバサバサと打ち鳴らすもの、尖ったひづめをゴツゴツと踏み鳴らすもの・・・。
 妖魔たちは、焚き火を前にして怯む様子を見せたが、<闇姫>がクツクツと笑って、
「結界なぞ、わらわが解こう。ほれ、このとおり」
 細い爪をツーッと動かすと、ピシリと結界の破れる音がして、同時に火も消えた。すかさず、魔物たちが躍り出る。
 二人の若者の持つ宝剣の刃は、しかし、みずから光を放ち、あるじたちの戦いを助けた。容赦なく襲い掛かって来る妖魔のすべてを、フルートは金色に輝く剣で切り払った。迷いのない刃が、流れるような速さで魔物を屠ってゆく。ジュッと音を立てて千切れた妖魔は地に落ちて、ぶるぶると震え、なおも寄り集まり立ち上がろうとするのだったが、ゼラルドの長剣から放たれる閃光に打たれて、ぶくぶくと泡立ち、黒い靄となって消えて行くのだった。
 そうして、どれだけの妖魔を斬っただろうか、100か?200か? ふと、闇より出でしものたちの攻勢が弱まった。ついで、波が引くようにして、魔物たちは退却を始めた。若者たちは、青白く浮かぶ<闇姫>のほうを見上げた。<闇姫>は無表情だったが、ベールの下から発せられる声には、乾いた憎悪がこもった。
「口惜しや。時間切れじゃ」
 いつのまにか、夜が明けようとしていた。<闇姫>は、闇の中へと、ずぶずぶ後退した。
「待て、<闇姫>!」
 フルートが叫んだが、<闇姫>はそのまま姿を消した。辺りを覆っていた闇の帳が消えると、夜明け前の薄暮の中に、木立の影が戻った。闇の眷属は、こうして去った。

 ふたりの若者は、しばし体を休めた。まもなく陽が昇り、木立の間から光が差し込んだとき、周囲の異変に気づくことになった。
 森の木立は、すっぽりと生命の色を失ってしまっていた。葉はすべて地面に落ちて、黒い炭のようなものに変わっていた。木々の幹や枝は黒灰色に染まっており、触れると脆く崩れた。まるで、闇が森を浸食し、世界の一部に滲み入ったかのような光景だった。
「ゼル、これは偶然だと思うか」
と、フルートがつぶやいた。黒髪の若者は、意味を測りかねた。
「・・・偶然とは、何のことだろうか」
「いや、いい。すまない」
 フルートは打ち消した。そして、ふたりでしばらく辺りを調べてみたが、森の生命を取り戻すすべを見つけることは、ついにできなかったのだった。

(完)

« にじむ闇(01) | トップページ | 作者より:「にじむ闇」 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568827/61832804

この記事へのトラックバック一覧です: にじむ闇(02):

« にじむ闇(01) | トップページ | 作者より:「にじむ闇」 »