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(封じられた剣)(01)

 ディア家の当主が再婚したとき、息子のセレンはまだ幼かった。生母にそっくりの、月の光のような金色の髪と、魔除けの宝石のような緑色の瞳をした優しい子どもだったが、母を亡くした悲しみからなかなか立ち直ることができず、よく涙していた。父親は政務で忙しかったが、これではいけないと思い、1年の喪が明けてすぐ、息子のためだけに、新しい妻を迎えたのだった。
 血のつながらない真面目な母が、将来の当主である義理の息子のために用意した時間割は、周囲の目から見て、まだ少し早いのではないかと思われるくらい、みっちりと勉学によって埋まっていた。もっとも、当の子供は、学ぶこと自体は嫌いではなかったので、選ばれて招かれた教師たちが代わる代わる教えてくれる事柄を、素直に吸収した。とりわけ、古い言葉で綴られた物語を紐解いたり、遠い国の、不思議な形をした文字を読み書きしたりすることが好きだった。馬術や剣術については、言われたことを言われたようにしていたが、教師たちは「あまり興味がおありでないようだ」と嘆いており、そのとおりだった。
 少年にとって問題だったのは、勉強時間が増えたことではなく、同じ年頃の子らと遊ぶ時間がなくなったことだった。屋敷の中で、あるいは街で、鬼ごっこや隠れんぼうをして楽しく過ごすための時間は、全て取り上げられてしまい、そもそも、新しい母は、息子が周りの子供たちと交流することを嫌がった。「身分が違います」と、彼女は言うのだった。
 最初のうち、セレンは、教師が休んだときなどに、寂しさに負け、こっそり部屋を抜け出して遊びに行った。だが、そうと判明すると、咎められたのはセレンだけでなく、相手の子供と、その親までもが罰せられた。セレンは小言を言われるだけだったが、相手の親子は、ともすれば、手を鞭打たれたり、給金を下げられたりした。すぐに、セレンは避けられ、嫌われるようになった。
 セレンの姿を見ると、子供たちは一目散に逃げた。それで、セレンも嫌い返すようになった。母のことも、もとの友達のことも、それ以外の、母の言いなりになる人々のことは全て。多忙で滅多に家に戻らない父も、まるで頼りにならず、敬愛の念は徐々に薄れた。
 そうして、少年は、自分の住む世界に失望していった。代わりに、物語で読んだ、精霊たちの集う別世界への憧れが育った。あるいは、数々の伝説を生んだ、いにしえのレティカ王国への。あるいは、<太陽の聖者><月の聖者>たちの住まう、はるかな東方諸国への。あまりにも熱心に繰り返し読むため、教師たちが子供用に編纂しなおしてくれる数々の伝承を、端からみな、そらんじてしまうほどだった。
 眠る前のひととき、セレンはよく、誰か心優しい精霊が、自分を迎えに来てくれないだろうかと想像した。
(それとも、もし、屋敷のてっぺんから飛び降りたなら、ぼくの体は砕けても、魂はどこか別の世界に、生まれ変わることができないかしら・・・)
 ぼんやりと、そう考えることもよくあった。だが、どれだけ頼りなく、どれだけ身勝手であっても、両親は、自分が死ねば嘆くだろう、と。そのことだけは疑ったことがなかったので、本当に飛び降りることはしないのだった。今のところは。

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