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(封じられた剣)(02)

 季節は一巡りして、ある寒い日のこと。朝早く目が覚めたセレンは、いつものように、まといつく孤独を肌に感じながら、ぼんやりと空想の世界に遊んでいた。前の日に義母と言い争ったため、現実に戻ることが常よりいっそう憂鬱に感じられた。ふと、今日こそが、この世界を去って、別の世界に旅立つべき日ではないか、という思いにとらわれた。
 少年は、寝間着の上にガウンを羽織ると、部屋を出て、屋敷で一番高いところにある部屋に向かった。早朝だったせいか、誰にも見とがめられることはなかった。本当は入ることを禁じられている、最上階の廊下を歩いて行って、突き当たりの角部屋の扉を開けた。
 部屋には、朝日が差し込んでいた。日差しを取り込んでいる窓は、明るく、まぶしく、すてきに輝いて見えた。少年は、うっとりと思った。では、この窓にしよう――。
 なにげなく首をめぐらせて、しかし、セレンはぎょっとした。日の当たらない暗がりに、誰かが立っていた。いや、違う・・・鏡があるのだ。長い金色の髪をして立ち尽くす、輪郭の曖昧な人影は、なんだ、自分の影か。
 と、思ったとき、おぼろな人影は、ゆっくりと手をあげて、横のほうを指さした。セレンは驚いて、息の止まる思いがした。よく見れば、自分とは違う服を着ている。いや、そもそも、背丈だって違う。どうして自分の影だと思ったのだろう。あれは・・・、あれは・・・、亡くなった、母さまだ。
 そう気づいたら、何かがこみあげて、涙があふれた。見てはならないものを見ているせいで鳥肌が立っていたが、言いようのない懐かしさに胸が詰まった。視界がぼやけたので、あわてて手で涙をぬぐい、もう一度目をこらすと――、もう、そこに母の姿はなかった。代わりに1枚の鏡があって、少年自身の小さな姿を映しているばかりだった。
 セレンはしばらく鏡を見つめたあと、さっきの人影が指さしていたほうを見た。そこには、入って来たのとは違う扉があった。ためらったあと、部屋を横切り、その扉を開けた。長い、下りの階段があった。黙々と階段を下りると、また別の扉に行き当たる。重たい扉を、思い切って、体全体で押し開けた。中に入って、思わず「わあっ」と声をあげた。
 そこは、朝日の差し込む、こぢんまりとした図書室だった。円形の壁は、窓を残して全て書棚になっており、ぎっしりと書物で埋め尽くされていた。どれほどが原本で、どれほどが写本なのかは分からなかったが、ともかく、長い時間をかけて集められたに違いなかった。そっと何冊か抜き出してみると、歴史や地理の本が多そうだが、神話の本もある。
 少年は、本棚を見上げながら歩き、床の段差につまずいて転んだ。痛みに顔をしかめながら立ち上がろうとしたとき、書棚と書棚の間に、ひどく場違いなものが挟まっているのを見つけた。気になって引っ張り出したそれは、黄金の鞘に納められた長剣のように見えたが、非常に軽いところを見ると、玩具か飾りものだろうと思われた。試しに鞘から抜いてみようとしたが、やはり、抜ける気配はなかった。きっと、中身など無いのだ。
 それでも、その鞘にほどこされている美しい装飾は、少年の興味を引いた。柄の部分には、深い緑色をした魔除けの宝石が嵌っていた。宝物にしようと思い、セレンは剣を自分の部屋に持ち帰った。そうして、さしあたり、彼はこの世界に繋ぎ止められたのだった。

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