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(封じられた剣)(03)

 図書室は、その後、セレンが自由に使って良いと許可をもらうことができた。もっとも、図書室から持ち帰った飾りものの剣については、父も母も、何も知らなかった。そのようなものがあっただろうか、と不思議がりながら、父は、剣の鞘が外れないことを確かめて、セレンの好きにして良いと言ってくれた。セレンは剣を自室に置いた。手が届く場所にあってほしかったので、壁には飾らず、書棚の脇に立てかけておくことにした。
 そうして、年齢が十を数えるまで、セレンは古い物語を数多く読んで、ひとりで夢の世界に遊んだ。孤独とも憂鬱とも親しかったが、神々や精霊や英雄たちの物語に浸っている間だけは、そのどちらも忘れることができた。勇ましい物語。怖ろしい物語。なまめかしい物語。等々。
 時折、子供心に、自分が何のために生きているのか分からなくなると、宝物の剣を手に取った。いつからか、「必要なときが来れば、この剣は抜ける」と考えるようになっていた。抜けないなら、まだ「そのとき」ではないのだ。手に取ったつど、まだ「そのとき」ではないことを確かめて、再び書棚の脇に立てかけておくのだった。
 そのまま、いつまでも続いて行くかに思われた、夢見る灰色の日々――。だが、変化は突然、訪れた。
 十才の夏の初め、彼は思いがけなく、友を得たのだった。

 陽光のように明るく快活な少年と友達になってから、セレンを取り巻く世界は鮮やかに色づき、音と光にあふれた。セレンは、長い夢から覚めたような心持ちで、それまで貪るように読んでいた神話や伝承のことを、無用のものだと思うようになった。所詮、人間が妄想によって作り出した、子供だましのお伽噺ではないか。それよりも、史実や地理について学ぶほうが、よほど将来、友達の、つまりこの国の王子の、役に立つだろう。セレンは、かつて物語を読むために覚えた外国語の知識を、現実の世界について学ぶために使うようになった。また、剣術や馬術についても、少しでも友に追いつきたいと熱心に取り組んで、順調に腕を上げた。
 大事な宝物だと思っていた剣は、役に立たない玩具にしか見えなくなった。刀身のない剣などを大切にしていたとは恥ずかしい、とさえ思った。とはいえ、その鞘と柄の細工の美しさは尋常でなく、美しいものを愛する心は残っていたので、剣を手放すことはせず、ただ、寝室に引っこめて、壁の上方に飾ってもらうことにした。
 飾ってもらう前に、念のため、形ばかり確かめたが、もちろん、それはただの玩具の剣なのだから、鞘が外れるはずもなかった。そして、その後、ずいぶん長い間、その剣はただ壁に飾られてあるだけで、セレンはそれを手に取ることなど、考えもしなかったのだった。

収まりきらず、あと1回あります。

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