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  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

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(封じられた剣)(04)

 セレンが次にその剣に触れたのは、何年も後のことだった。壁の剣をなんなく掛け外しできる、背の高い若者に成長していた彼は、やや複雑な思いで剣を手に取った。というのも、友が、城の宝物庫で、これと似た、ただし紛れもない宝剣を手に入れたと知ったからだった。
 王子の剣は、柄の部分に紅い宝石が嵌めこまれており、他の者では抜くことができない。セレンも試させてもらったが、やはり無理だった。では、もしや、セレンが図書室で見つけた剣も、友が手にすれば抜けるのだろうか? それを確かめたくて、彼は剣を壁から下ろしたのだった。
 果たして、剣は、王子が試しても抜けなかった。王子は残念そうだったが、セレンは少し、ほっとした。長く忘れていたとはいえ、これは自分が見つけた、宝物だった剣なのだから。もし誰かがこの鞘を外せるとしたら、それは自分でなければならない。もっとも、相変わらず、剣は空気のように軽く、中身があるとは到底思えなかったし、もちろんセレンが試しても、いっこうに鞘は外れないのだったが。
 きっと、よく出来た模造品なのだろう、と、セレンは思った。城の宝物庫にあったという王子の剣は本物で、ディア家の屋敷にあった剣は装飾用の模造品。そう考えるのが、一番現実的で、納得のいく説明ではないか。
 と、そう思ったのは確かなのだが、さて、その半年後、急に王子と旅に出ることになってみると、セレンは、寝室の壁に飾ってある剣が、気になって仕方なかった。今こそ持って出なければ、この剣を見つけた意味がない、という気がしてならないのだった。だが、「意味」とは何だろう? 中身のない、飾りの剣なのに。
 結局、セレンは胸のざわめきに負けて、剣を壁から取り外し、どうあっても抜けないと念を入れて確かめたうえで、なお、旅の荷物に加えたのだった。幸い、すばらしく軽かったから、さほど邪魔にはならなかった。

 むろん、そのときの彼には、知る由もなかった。旅が終わってのち、この剣の封印のことを、どれだけ繰り返し、何度も振り返ることになるのかを。ずっと剣が抜けなかったのは、幼い自分が抱えていた自死願望のせいだったろうか。それとも、剣自身が拒んでいたのだろうか、あの輝くように美しい姫君と自分とを引き合わせないようにと。
 結果から言えば、封印は解けたのだ。旅の仲間を助けたいと、彼が願ったときに。だが、彼が助けた、その仲間は・・・。そして、剣が引き合わせてくれた、麗しき姫君は・・・。
 いずれにしても、その剣は、封印の解けたあとは生涯、彼の傍らにあり続けた。たくさんの思い出と共に、今度こそ本当に、彼の宝物として。
 ――そのような未来を思い描いたわけではなく、ただ漠然とした予感を胸に、セレンは、古代レティカ王国の宝剣の1本を携えて、旅に出たのだった。

(完)

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コメント

ああ・・。
ずっと余韻に浸っていたい気分です・・。
何だかとても真剣な気持ちで読み終わりました・・。
(=^・^=)

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

書き終わって、反省点もありますが、ともあれ、フルートと出会う前のセレンのことを、きちんと書けて良かったな、と思います。
淡々として、いまひとつ盛り上がりには欠けるエピソードですけれど、受け止めていただけて嬉しいです!happy01

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