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2015年9月

聖なる森(01)

 その森の木々や獣を傷つけさえしなければ、あるいは、そこで強盗や人殺しを働きさえしなければ、別に、どうということはないのだ、と、村人たちは言った。ふつうの森と何ら変わりはない、と。しかし、そうは言いつつも、その森について語る者は、ひとりの例外もなく、おごそかな畏敬の念を顔に浮かべるのだった。
 果たして、その理由は、二人が実際に森に入ると、すぐ明らかになった。もちろん、掟を破って不正を働いた者には、今までに不思議な方法で罰が与えられて来たのだろうし、村人たちの心にも、罰を下した不可視の力に対する恐れが深く根付いていたのだろうけれども、そうしたことの何よりもまず、その森は、現実のものとは思えない神々しさに満ちていたのだ。
 重なり合う木の葉の、穏やかな風に揺れる色。愛らしい小鳥たちの、さやかに鳴き交わす声の響き。そして辺りの空気のたゆたい・・・。
「夢のように美しい、とは、こういうことを言うのだろうな」
 森に入ってまもなく、馬上に揺られながら、金髪の王子がそう言ったのも、だから、まったく無理からぬことだった。すぐ後ろに馬を続かせながら、セレンも肯定して、
「うん。でも、これほど美しい夢を見ることができるとも思えないね」
 賛嘆のためいき混じりにそう言いながら、こちらもすっかり周りの様子に魅せられてしまっている。
 しばらくの間、彼らは景色を楽しみながら、黙って馬の歩を進めていた。森を抜けないことには、目指す街に行き着けないのだ。
 森の空気は、ともすれば威圧感を覚えるほどに荘厳だったが、決して不快なものではなかった。ここでは、世間のあらゆるわずらわしさは、遠く縁のないものだった。早春であるにもかかわらず、春の盛りか、あるいは早い夏を思わせる、うららかな陽気がそこらじゅうに立ち込めていたが、それが一年中変わらないだろうことは、おのずと理解できた。時折、果物のたわわに実る木があったが、どれもみな、見たこともない種類のもので、かぐわしい良い匂いがした。もいでもかまわないことは、村人から聞いている。空腹になったら取らせてもらうことになるだろう。
 今までに森を通った、あまたの旅人たちの踏み固めた道が、ちょうど馬の通れるくらいの幅で、木々の間を縫い、迷いようもなく続いていた。村で聞いた話が正しいならば、このまま行くと、大きな泉に出るはずだった。どれほど美しい泉に出会えるのだろう、と、思わず期待に胸をふくらませながら、セレンはふと、故郷の森の、慣れ親しんだ小さな泉を思い出した。そう、もちろん、どのような素晴らしい情景に出会ったとしても、彼の心の中で、あの懐かしい憩いの場が色あせたりすることは決してないのだけれど。
 前方に、まぶしい光の反射が見えた。そして、木々はやがて唐突にひらけた。フルートの後について、その輝く泉のほとりに出たとき、けれどもセレンは、予想もしていなかった光景を目の当たりにすることになった。

予告:「聖なる森」 & 六本木ブックフェス報告

物語がいったんの終結を見るまでに書くうちの、半分を越えるまでは公開しないでおこうと、ひとつだけストックしていたお話がありました。それを出すことにします。
旅立ちのお話を書くより前に、これを公開してしまって良いのだろうかと、少し迷いもしたのですが。でも、書いた時期は早くて、○○年前に作ったお話ですから。
半分を越えたと判断したのだから、早く作ったものを早く公開しても良いだろう、と思うようになりました。

フルートとセレンのお話です。主にセレンの話。
久しぶりに、長く連載します。おそらく全15回。
いかんせん、○○年前に作ったお話なので、当時ワープロ専用機で作った原稿を見ながら、修正を加えつつパソコンに入力して公開するという手順になりますが、コンスタントに1日おきで連載するつもりでいます。

いつものとおり、連載中は雑談をはさみません。
そうそう、先日の六本木ブックフェスの「ブック・ジャーニー」では、「ブローチ」(内田也哉子)と「約束の森」を包んで出品し、代わりに包みを二つ持ち帰りました。
開けてみると、「アルジャーノンに花束を」と「宇宙に恋する10のレッスン」でした。両方とも我が家には無い本で、特に後者はノーチェックだったので、イベントならではの巡り会いを喜んでいます。
楽しかったので、また参加したいイベントです。ご報告まで。

それでは、全15回、約1ヶ月の長丁場、どうぞよろしくお願いいたします!

風の贈りもの(トーナメント参加用)

 旅する王子と王女は、あるとき、丘がいくつも連なる土地を通りかかった。
 やわらかな緑に包まれた丘を、ふたり、馬に乗って進んで行くと、ひとつめの丘を越えたところで、子供が二人、座りこんでいるのを見つけた。
 子供は、片方が男の子、片方が女の子で、こざっぱりしたお揃いの服を着て、ともに十にも満たない幼さだった。そっくり同じ銀色の髪をしており、疲れ切った様子で草の上にへたりこんでいたが、旅人たちに気づくと、立ち上がり、手を振ったり叫んだりした。
 王子と王女は、子供たちのそばで馬を止めて降りた。あたりを見回したが、ほかに人影はない。見れば、子供たちはふたりとも泣いており、しきりに訴える言葉を聞けば、
「あるじさまを、たすけて。おねがい。あるじさまを、たすけて」
と言うのであった。
 青い髪のフィリシア姫は、かがんで、子供たちの話をよく聞いてみた。どうやら、子供たちは、どこかの令嬢に仕えているらしく、その令嬢が、この先の「ずっとずっと向こう」で立ち往生しているらしい。幼い忠臣たちは、助けを呼びに歩いて来たのだが、誰にも出会うことができないまま、ここまで来て、疲れて歩けなくなってしまったのだという。
 フィリシア姫は、思案して、王子に提案した。
「そのかたを早く見つけてさしあげましょう。私は子供たちと一緒にゆっくり行くから、あなたはその駿馬で、先に行って探してくださらない?」
 金の髪をしたフルート王子は、もっともな意見だと思いはしたものの、この先、丘をいくつ越えるかも分からないのに、非力な姫君と子どもたちを残して行くわけにもいかなかった。
「みんなで行こう。このくらい小さな子供なら、ぼくたちが一人ずつ抱えて乗れるだろう」
 王子は男の子を、王女は女の子を抱えて馬に乗り、出発することとなった。
 ところが、丘をもうひとつ越えたところには、その子らの女主人の代わりに、またもや二人の子供たちがいた。先の二人と同じように銀色の髪をして、べそをかきながら、
「あるじさまを、たすけて。おねがい。あるじさまを、たすけて」
と繰り返すのだった。王子と王女は相談して、自分たちは馬を下り、子供たちを二人ずつ馬に乗せて、ふたたび出発した。
 3つめの丘を越えたところには、誰もいなかった。子供たちは心配そうに、馬の上で、「もっと先! もっと先!」と騒いだ。
 4つめの丘を越えたところにも、誰もいなかった。子供たちは泣きながら、「もっと先! もっと先!」と騒いだ。
 5つめの丘を越えると、丘のふもとに小川が流れているのが見えた。川のほとりには、銀色の髪をした女性がひとり伏していた。4人の子供たちは、口々に、「あるじさま! あるじさま!」と呼ばわって、大騒ぎした。

 王子と王女は、子供たちが馬から落ちないように気を付けながら、急いで丘をくだった。倒れているのは美しい娘で、晴れ着に身を包んでいるが、ほかに付き添いはいないようだ。
 二人は娘を助け起こした。王女は娘を介抱し、王子は騒ぐ子供たちを馬から下ろしてやった。
「あるじさま!」「あるじさま!」「あるじさま!」「あるじさま!」
 子供たちは泣き叫びながら、気を失っている娘に飛びついた。1人は右腕に、1人は左腕に、1人は右足に、1人は左足に。と、次の瞬間、子供たちの姿はすっと消えて、娘の両腕には銀色のブレスレットが、両足には銀色のアンクレットが嵌っていた。
 王子と王女は、驚いて顔を見合わせたが、そのとき、娘は身じろぎして、目を開けた。フィリシア姫が、あわてて覗き込んで、
「だいじょうぶですか」
と声をかけると、ぼんやりと王女の顔を見つめてから、「はい」と答えて微笑んだ。ゆっくりと体を起こし、異国の言葉で何やら言いかけたが、通じないと気づくと、はにかんだように笑いながら、たどたどしく言った。
「ありがとう、ございます。私は、今日は、結婚するでしょう。すでに、朝は、人でした。飛べないを、歩きます。近いでした、とても遠い、休みました」
 フィリシア姫は曖昧に頷いた。嫁ぎ先が思ったより遠い、というような意味だろうか。
 美しい娘は、ほっと息をついて、にっこり笑った。
「心配の助けを、お礼、おまもりです。ほかはありません」
 銀色の腕輪を片方外して、王女に渡そうとした。
 けれども、フィリシア姫は、さっきの子供たちが「あるじさま」をどれだけ慕っていたかを覚えていた。それで、礼を失しないように気を付けながら、そっと言った。
「そのように大切なものを受け取るわけにはいきません。その腕輪もあなたを慕っています。通りかかっただけですから、どうぞお気になさらないでください」
 娘は困った顔をした。
「お礼、本当の心、ほかがありません」
 腕輪を嵌め直しながら、娘は何か考えて、しばらくして、ぱっと顔を輝かせた。
「おまもり、歌は良いですか? 今は人、風でした、変わらない。風を困る、歌って」
 すうっと息を吸って、透き通った声で、不思議な節回しで、歌った。
「風よ、あなたの。娘の、友を。守って。ここに、いるよ――」
 うながされて、フィリシア姫も歌った。繰り返して三度歌うと、やわらかな風が吹いて来て、王女の周りを一巡りしてから、丘と丘の間を吹き抜けて行った。
「優しい、忘れません。風、あなた、私」
 娘は満足そうに言って、立ち上がった。小川の脇の小道に立ち、ほがらかに言った。
「あと少し。心配ありません。元気です。ありがとう。さよなら」
「さようなら。お元気で、お幸せに」
 娘はうなずいて、軽やかに身をひるがえし、飛ぶような足取りで歩き出すと、もう振り返らなかった。
 フィリシア姫は、王子と馬のほうを振り返った。ふと、思いついて言った。
「もしかして・・・風の精だったのかしら? 嫁ぐために、人になったのかしら?」
「そう聞くと、そうとしか思えないな」
と、フルート王子は笑った。
 そして二人は、少し幸せな気分になって、めいめいの馬に乗り、旅に戻ったのだった。

(完)

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第10回 自作小説ブログトーナメント参加用です。今回はさらっと、旅の1ページを。
約2,400字。コメントはお気軽に♪

こぼれ話:筋道の、道しるべ

貴重なご意見をいただきました。
「呪いを解く為の鍵とか、ひとつひとつ克服していく具体的な試練などが、ぼんやりとでも示されると読者として、筋道が立てやすい気がします」
ありがとうございます! 本当にそうだと思いました!
が、しかし…。「段階を踏んで乗り越えて行く試練があるけど、見せてない」なら修正しやすいのですが、そういう種類の試練は、実は無いのです。本来なら、最初に物語の構想を立てるときに当然組み込んでしかるべき要素かと思います…、申し訳ありません。
呪いを解く鍵は、「始まりの物語」に示されている、あれが全てですし、いずれ彼らが直面する試練は、いっぺんにドカッと来る試練なので、「そのうち試練が来る」ことを仄めかすくらいしかできなくて。
マイルストーン的なイベントの連なりを、これからでも用意したほうがいいかしら、とも考えましたが、物語の半分を書いちゃった後なので、ちょっと厳しいです…が、引き続き検討はしようと思っています。隙あらば組み込む感じで!

それはそれとして、冒険譚の基本的イメージは、次のようなものです。
「世界各地の民話と伝承を集めていたら、なんだか、数人の、特定の人物にまつわる話がいっぱい混ざっているような気がした。
それで、意識して、該当すると思われる話を探したり選んだりしていたら、もう、絶対そうだとしか思えなくなった。
各人の性格も分かって来て、頭の中で動き出して、互いに会話して、これはもう、物語にせずにはいられないよ!」
いかがでしょう。そう聞くと、断片の寄せ集めのような構成も、今までより少し、得心が行く方がいらっしゃるでしょうか。

また、少しでも読者の方の助けになるように、「筋道を立てる」のに多少なりとも使えそうな要素について、挙げておこうと思います。
ひとつめは、季節。
何度かお話したこともありますが、彼らの冒険は、春に始まり春に終わる、約1年の旅です。(聖泉は「世界の果て」と言われていますが、意外と近いですねsweat02
なので、季節の描写が出てきたら、「まだまだ旅の序盤だな」とか「もうすぐ解呪の聖泉に辿りつきそう」とか、旅の進み具合について見当を付けることができます。
ふたつめは、人間関係。
「ミルガレーテの人見知りが解けて来たみたい」とか、「セレンてば、そんなことまでゼラルドに喋っちゃうんだ」とか、旅が進むにつれて、各人の距離感が少しずつ変わって行きます。これにより、時間の経過と、それに伴う変化を意識することができます。
いえ、ふたつとも、時間的な目安を示すだけで、「筋道」っていうのはそういうことじゃないんだよ、と言われれば、おっしゃるとおりなのですが。
それでも、物語の進行に関する手がかりが何もないよりは、今ある何かを手がかりにしていただけたら良いな、と思いました。

分かりづらいこともあると思いますが、こんな道しるべを見ていただいて、お話が「あ、進んでる」と感じていただけたら、嬉しいと思います。
どうぞよろしくお願いいたしますclover

作者より:「滝遊び」

旅の後半、フィリシア&ゼラルドのお話でした。
以前リクエストでいただいた、「フィリシアとゼラルドが手をつなぐお話」でもあります。
旅が始まる前には、「姫君の護衛など面倒なだけだ」と言っていたゼラルドですが、フィリシアとは、ずいぶん仲良くなりました。

なお、文中、一行が「北に向かって」いる旨の記述があります。
読者の方々の中には、「そうだっけ。東に向かってる気がしてた」という方がいらっしゃるかもしれません。
どちらも正しく、一行は、春から夏にかけて東へ進み、その後、北へ向かう進路を取っています。
わざわざ冬に寒い地方に向かっているのは、真冬の限られた期間のみ覗くことのできる聖泉が寒いところにあるからで、仕方がないのです。

次のお話は、どんなのにしようかな。
雑談を挟みながら、考えます。

→ 目次に戻る

滝遊び(02)

「大丈夫だよ、フィリシア。命にかえても、落としはしないから」
 穏やかな声に力づけられて、フィリシアは思い切って踏み出した――踏み出せた。特に何かを踏みしめた感じはなかったが、落ちることもなかった。もう一方の足もそろえた。これで、フィリシアも宙に浮いている!
 フィリシアは、手をつないだまま、ゆっくりと緊張をほどいた。ふと、フルートとセレンのほうを振り返ってみると、フルートはこちらに背を向けており、セレンとは目が合った。軽く咎めるような視線で見られたが、文句は言われなかった。
 傍らのゼラルドを見上げると、静かな黒い瞳に見つめ返された。何か話しかけたい気がしたが、自分が何を話したいのか、よくわからなかったので、ただ頷いた。ゼラルドが、
「下りてみよう」
と言って、何か唱えると、二人は、水の流れ落ちるすぐそばを、ゆるゆると下降し始めた。
 フィリシアは、つないだ手とは反対の手を伸ばし、水しぶきに触れた。つめたい。さらに下りて、滝の中ほどのところまで来ると、突き出た岩に水がはね、虹が出ていたので、歓声を上げた。
「見て、虹!」
 服が濡れないように距離を取りながら、滝つぼまで下りきると、あちらにも、こちらにも虹が出ていて、フィリシアは大喜びだった。
「フィリシア、ごらん」
と言って、ゼラルドが楽しそうに指さした先を見ると、滝の裏に、人が入れそうな岩棚がある。滝の横から回り込むようにして、二人で中に入ってみると、水のカーテンに区切られた、秘密の場所に遊んでいる気持ちになった。ごうごうと水音の轟く中で、フィリシアはゼラルドを見上げた。このようなときには、やっぱり、兄ができたかのように思えるのだった。
「ありがとう、お兄さま!」
 ゼラルドは何も言わずに頷いたが、優しい瞳をしていた。きっと故国では、こんなふうにして、本当の妹姫に接していたのだろう、と、フィリシアは思った。今だけは、私も、二番目の妹でいさせてください。
「では、戻ろうか」
「はい」
 元の場所に戻るのは、一瞬だった。気がつけば、崖の端に立っていた。ぼんやりしていると、静かに言われた。
「フルートに見られたくないなら、もう手を離さないと」
 はっとして、つないでいた手を離した。えっ、いえ、見られて困ることはないけれど・・・。
 ゼラルドが、小さく、くすりと笑った。フィリシアは何か言い返そうとしたが、セレンが向こうから、出発するよと声をかけて来たので、なんとなく言いそびれた。
 よく晴れた秋の日のこと。
 旅の目的地は、少しずつ、近づきつつあった。

(完)

滝遊び(01)

 空気が冷たく感じられる季節を迎えていたが、旅の一行は、解呪の聖泉を目指し、北へと向かっていた。
 ある日、山をひとつ越えなければならず、朝から馬を連ねて登った。木々は燃えるような赤や黄に色づいており、旅人たちの目を楽しませた。また、山道を登る途中、見晴らしの良い場所に出ると、切り立った崖を流れる大きな滝を望むことができ、素晴らしい眺めだった。自分たち以外に人通りのないことが、もったいないと思われるほどだった。
 昼近くには、その滝の、てっぺん近くに辿り着いていた。目の前をさらさらと流れる水が、崖淵から落ちて行く。
「このあたりで食事にしよう」
と、フルートが言った。馬をつなぎながら、
「滝を覗き込むのは危ないぞ」
と言ったのは、青い髪の姫君が、そろそろと崖近くのほうへ歩いて行こうとしたからだ。フィリシアは、ちょっぴり残念そうな顔で引き返し、おとなしく食事を広げた。
 話題は、それぞれの知っている滝のことになった。フィリシアの故国クルシュタインにある、冬場は見事に凍結する大きな滝の話。フルートとセレンの故国リーデベルクにある、5本に分かれて注ぐ優美な滝の話。
 ローレインには山が少ないから、滝らしい滝も無いように思う、と、ゼラルドが言った。このように大きな滝を、間近に見たり、源まで登ったりするのは、今日が初めてだ、と。
 食事のあと、フルートとセレンが何か相談しているのを良いことに、黒髪の若者はすたすたと崖の端まで歩いて行った。心配したフィリシアが追いかけて、数歩後ろから、
「危ないわ」
と声をかけると、ちらと振り向いて、
「大丈夫だよ」
と言い、崖の向こうへ踏み出した。フィリシアは悲鳴をあげそうになって、呑み込んだ。黒髪の若者は、何事もないように立っており、つまり、宙に浮いていた。そうだった、このひとは、こういう不思議な術を使えるのだった。
 ゼラルドは、フィリシアのほうに向きなおって、首を傾げた。
「君も、滝を近くで見たいのだろう」
「ええ・・・」
「では、一緒においで」
 ゼラルドは、ほのかに笑って、手を差し伸べた。めったに見られる光景ではなかったので、フィリシアは少しばかり驚いたが、戸惑いよりも喜びのほうが大きかったので、素直に手を伸ばして、差し伸べられた手を取った。
「こちらに来て、踏み出してごらん。落ちることはないから」
 言われて、崖のふちに立ち、ぎゅっとゼラルドの手を握った。足元に何もないと思うと、落ちないと思っていても、緊張する!

予告:「滝遊び」

旅の1ページ、ゼラルドとフィリシアがメインのお話を書きます。
秋のお話。全2回です。
1回目は、明日か明後日に更新します。
よろしくお願いいたします☆

ひとやすみ:六本木ブックフェス(2015) & 進捗状況報告

今度の連休に、六本木の東京ミッドタウンで、「六本木ブックフェス」という催しがあります。
近くまで行く別の用事があるので、30分くらいだけですが、寄ってみようと思います。

お目当ては、「ブック・ジャーニー」というコーナー。
本をラッピングして、中身が分からないようにして、おすすめコメントを付けて、持ち寄って、交換するというイベントです。
今回は、会場で包装紙をくれるそうなので、手順としては、
 1.お気に入りの本を、お嫁に出す決意で持って行く
 2.中が見えないようにラッピングし、おすすめコメントを添える(書名・著者名はNG)
 3.提出する
 4.他の人たちが持ち寄った本を見て、コメントを頼りに1冊選び、持ち帰る
という手順になります。
どんな本が出て来るかは、開けてのお楽しみ~happy01

そういうイベントが世の中に存在するということは、話に聞いて知っていたのですが、参加するのは初めてです。
雨が降ると中止になってしまうので、当日晴れるように祈っています。
どの本を持って行こうかなbookheart04

---

冒険譚の進捗状況は…、
まだ書き始めていませんが、フィリシアとゼラルドの、短い、日常系のお話を書く予定。
連休に入ると、ちょこちょこ出かけるのと休息を取るのとで、あまり創作の時間は取れない気がします、が、1ページか2ページで終わりそうなので、きっと書けるだろうと思っています!
次回、予告を出したいと思います。

ひとやすみ:なぞともカフェ(新宿)に行って来たよ

新宿の歌舞伎町、ドン・キホーテの上に、「なぞともカフェ」というお店があります。
先週、平日に仕事をササッと切り上げて、会社の友人と一緒に、1時間弱くらい遊びに行って来ました。
今日はそのレポートです。

友人と二人、到着したのは18時頃。
エレベーターを降りると、飲食物を注文するカウンターと、受付パネルがあります。
(ちなみに飲食物の持ち込みは禁止です。だって、カフェだもんね。)
受付パネルで、「どの謎にチャレンジしたいか」を申込み、整理券を受け取る仕組みなのですが、
「どの謎が、どんな雰囲気かっていうのは、どこで分かるんですか?」と係の人に聞くと、
「テーブルのメニューに載っていますよ」とのこと。
いったんカウンターと受付パネルをスルーして、フロア真ん中のカフェスペースへ行けばいいみたい。
空いているところに、好きに座ります。

2人~4人掛けくらいの丸テーブルが、んー、いくつくらいあったかなあ。8個くらい?
印象としては、こぢんまりしたカフェ、という感じでした。
埋まっていたテーブルは3つくらい。平日の、半端な時間だから空いていたのかも。
テーブルの上にあるメニューを取って開くと、なるほど、飲食物の案内のほかに、いま遊べる謎の紹介が載っています。
カフェスペースを取り囲むように、小部屋(キューブ)が10個あって、それぞれ違う謎解きを遊べるようになっています。制限時間は、いずれも765秒。(ナムコの施設だから…。)
友達とメニューを見ながら、どの謎解きを遊びたいか相談して、どことなくファンタジーっぽい、「タカラッシュ!調査団と魔女の館の禁じられた秘薬」を選んでみました。
受付パネルの所に行って、受付して、整理券ゲット。
待ち行列は無かったけれど、開演まで10分ほど時間があるというので、友達はカフェラテを買って飲んでいました。
(ちなみに、謎解きキューブの中では飲食禁止です。)
そのうち、カウンターで整理番号を呼ばれて、お会計(どれでも1人1回1,080円)をして、いざキューブへ。

魔女の館という設定のキューブで、謎解き、面白かったです!
導入ムービーを見て、謎解きをして、最後に解説を見られます。
童心に帰って遊んじゃいました。謎を解くって、気持ちいい。
しかし、惜しくも、クリアならず…。
いいところまで行ったんだけどな…。ほんとに惜しかった。楽しかった。

面白かったので、もうひとつ遊んでみよう、ということに。
今度は、会社員らしく(?)、「残業代を取り戻せ!」というタイトルの謎を。
再び、待ち時間が10分。んー、どういう時間割なのかは、よくわかりませんでした。
カウンターで整理番号を呼ばれて、さっきとは違うキューブへ。

ブラック企業を舞台とした謎解き、難しかったー。というか、時間ぜんぜん足りなかった!
魔女の館の3倍くらい難しかった気がします。
でも、遊ぶ人によって、謎の向き不向きもあるんだろうな、と思いました。
論理的なパズルが好きな人は、こういうのがいいのかもしれない。

というわけで、結局、クリアはできなかったけど…、
たっぷり遊んだ気持ちになって、満足して引き上げました。
うん、これは、たまに遊びたくなるかもしれないね。
謎は時々入れ替えているとのことなので、しばらくしてから、また行ってみようと思います♪

表紙ができたよ!「夜を越えて」

電子書籍の表紙、第二弾が出来上がりましたhappy01 今回は、「夜を越えて」です。
前回に引き続き、イラストレーターの池田優さんの絵を使わせていただいています。
見て、見て、すごく綺麗heart01 (※読み込みに少し時間がかかることがあります)

今回は、新しく描いていただくのではなく、既に描かれていた絵の右半分をお借りしました。
タイトルは「祈り星」。絵の左半分には、とても繊細な女の子が描かれているんですよ。
ご興味ある方は、ぜひ一度、池田優さんのホームページに行って、「祈り星」の全体をご覧になってみてくださいね!

今月末あたりに、印刷に出そうと思っています。
首尾よく小冊子になったら、またお知らせしますwink

こぼれ話:私の創作は「趣味」ですよ~

最近、なんとなく感じていること。
「Webで小説を書く人は多いけど、意外と、趣味で書いてる人って少ないのかな?」と。
それというのも、私は趣味で書いているのですが、あんまり仲間を見かけない気がして。
プロを目指している人は、たくさん見かけるのにな…。

たとえば、「作家を目指す」「いつかは作家に」「叶うなら作家に」と、よく見かけます。
でも、私は思っていません。できることなら、今の会社で今のお仕事をしながら、今のとおり細々と、趣味としての創作を続けたい、と思っています。
子供の頃に、夢は作家と言ったこともありました、が、それは、将来何になりたいなんてまだ何も決まっていないのに何か言わなければいけなかったからで、「習字の先生」「ピアノの先生」などとも言っていました。どれも別に、本当になりたいわけじゃなかった。

それとか、「書店に自分の本が並ぶところを見たい」という表現も見かけます。
これも、私は特に思っていません。紙の本自体は好きなので、「本にしたい」思いはありますが、書店に並ぶか並ばないかは重要ではありません。
むしろ、誰かに渡せる形になるなら、「今まで過ごして来た中でご縁があって、いま近くに集まってくれている人たち」に渡して、喜んでもらいたい。
冊子を少部数作って配り始めたのも、そういう思いからです。

「作品を作るのは楽しいけど、ものすごく苦しい」というのも、プロ志向の人たちの言葉だと思っています。
趣味で書く私は、苦しいとか無くて、だって、お話を思いつかないときは思いつくまで放っておけばいいし、納得いかない個所はスキルが上がってから修正すればいいので。
お仕事だとそうはいかないだろうと思うので、プロ志向の方の言葉としては自然なのだろうと理解していますが。
「下手な作品を公開するのは、皆の前でお尻を出すくらいに恥ずかしい」という言葉もありますね。
えっ、私は、みんなの前でお尻は出せないけど、下手な作品は見せちゃうよ、と。
下手なテニスプレイヤーが町内テニス大会に出たっていいし、下手なピアノ演奏者が人前で弾いたっていいじゃない、そんなに恥ずかしいことかなあ、と。
いえ、お金をもらってたら、たぶん、恥ずかしいだろうと思います。だから、プロ志向の人が言いたくなる気持ちは、わかります。

いちばん疎外感を感じるのは、「この作品は自己満足だから駄目だ」という類の言葉かな。
趣味で書いている私にとっては、「自分が読んで楽しい」ことが何よりも大事なので、自己満足を否定されると、すごく複雑な気分になります。
自己満足な水泳は、人の目に触れるところで泳いじゃいけませんか。自己満足な口笛は、人の耳に聞こえるところで吹いてはいけませんか。私はブログでお話を書いちゃいけませんか。という気持ちになります。
いや、お金をもらってたら、たぶん、そう、自己満足では駄目なのでしょうね。だから、プロ志向の人がよく口にするのだよね、とわかっています。でも、私は趣味だから。

…と、こんな感じで、創作コミュニティの中に入っていけなくて。
「創作は趣味」という人がなかなか見当たらないことが、さびしく感じられることがあります。
…でも、趣味として! こつこつ頑張りますよ!
プロ志望の方々とは目指す場所が違っても、私は私の道を行きます。
恥じずに、顔を上げて進むよ。

目次・改

新しい目次を作ってみました。ご意見・ご感想があればコメントにどうぞ♪

初めてお越しの方には → 試し読み用の目次 のほうを強くおすすめします。

※ 下の目次は作品発表順になっておりますが、お話の時系列順とは一致しません。
※ 比較的読みやすいのは、cloverマークの付いた青字のタイトルです。
※ タイトルにカッコが付いているのは番外編です。 

金の砂の塔 : フルート王子とフィリシア姫の、旅の1ページ。

ゆがんだ城 : ゼラルドとセレンが遭遇した怪異の話。

(妖精の首飾り) : フィリシアの幼少時のエピソード。

(夏の訪れ) : セレンが初めてフルートと出会ったときのエピソード。

(海辺にて) : ゼラルドの幼少時のエピソード。

赤い小鳥の姫君 : 二手に分かれたあと、フルート&フィリシア組のお話。

竜王の館(前編) : フィリシアが主役のお話。他の仲間たちは、ちらりと。長めのお話。

竜王の館(後編) : フィリシアが主役のお話。フルートを始めとする、他の仲間たちも。

(仲たがい) : セレンとフルートの子供時代のお話。「夏の訪れ」の続き。

(月の娘) : ゼラルドの過去のエピソード。ユリア姫登場。

化身の魔女 : フルートとセレンのお話。長め。少年に道案内を頼んだ二人は…。

三つの果実 : 旅の仲間たち4人の、童話風の短いお話。

clover (光り姫) : フィリシアが初めてミルガレーテに出会ったときのエピソード。

(凶宴) : ゼラルドの過去のエピソード。「月の娘」のあと。

花園の夢 : 旅の仲間たち4人のお話。迷い込んだ庭園跡で…。

clover 始まりの物語 : 全体のプロローグにあたる、短いお話。

華飾の町 : 旅の仲間たち全員登場回(ミルガレーテ含む)。

邂逅 : フルートとゼラルドが「闇姫」と出会う、短いお話。

(仲直り) : セレンとフルートの子供時代のお話。「仲たがい」の続き。

命令の指輪 : 旅の仲間たち4人のお話。フィリシアが馬車に連れ去られて…。

勇者パックス : セレンの話。フルートとゼラルドも、ちらりと。

暖炉 : フルートとゼラルドのお話。道に迷った先で聞かされる、昔語り。

(雪) : 旅に出る前、リーデベルク滞在中のゼラルドの話。フルートも少し。

訪問者 : フルートとセレンが、初めてゼラルドに出会ったときの話。

clover 空色のドレス : フィリシアが主役の話。フルート、セレン、ゼラルドも少し。

clover (跳ぶ) : フルートとセレンの少年時代のエピソード。

(幼きもの) : フルートの幼少時のエピソード。

clover 救出の報酬 : セレンが主役のお話。

clover (従者試験) : ゼラルドの過去のエピソード。

クルミの行方 : フルートとフィリシアの話。セレンとゼラルドも少し。「竜王の館」の続き。

断章:数える… : セレンとゼラルドの話。

clover 夜を越えて : フルートとゼラルドが活躍する話。囚われの巫女のもとへ。

clover 髪を編む : セレン、フィリシア、ミルガレーテの、日常のひとコマ。

花嫁候補 : セレンの話。フルートも少し。「救出の報酬」の続き。ロマンスあり閲覧注意。

夢の牢 : 旅の仲間たち(ミルガレーテ含む)の全員登場回。

(満月の夜に咲く花) : フィリシアとミルガレーテのエピソード。

暗殺者 : ゼラルド、セレン、フルートの話。

甘い、すっぱい : フィリシアとフルートの、日常系のお話。

clover (あの子どこの子) : 少年時代のフルートとセレンのエピソード。

石の大蛇 : 旅の仲間たち4人の話。メインはフルート。

clover 火の鳥 : 旅の仲間たち4人の話。メインはフルート、セレン、ゼラルド。

clover (逃避行) : ゼラルドが故国をあとにしたときのエピソード。

clover 髪を編む(ルーク編) : フルートとフィリシアの話。

小人のお茶会 : フルートとフィリシアの話。旅の序盤、春の森で。

clover 風に揺れる花の中で : セレンとミルガレーテの話。

金と銀の翼 : 旅の仲間たち4人の話。ゼラルドの誕生日のこと。

雨やどり : ミルガレーテを含む仲間たち全員登場回。ゼラルドの故国に関する短いお話。

clover 夏の日の青い空 : フルートが主役の、軽快な話。セレンも少し。

clover お姫様と猫 : フィリシアが主役の話。フルートとセレンもちらりと。

clover 見えない守り手 : セレンとゼラルドの遭遇した怪異についての、短いお話。

clover 風の贈りもの : フルートとフィリシアの旅の1ページ。

霧の中 : 旅の仲間たち4人の、短いお話。

clover (夢みたもの) : フルートとセレンのエピソード。

clover 朝の鈴 : ゼラルドとフィリシアの話。

笑わない娘 : セレンがメインの話。嵐の晩に泊めてもらった家で…。

黄昏色の旋律 : 旅の仲間たち4人の、短いお話。

野に休む : 旅の仲間たち4人の、短いお話。初めての野宿。

一角獣の角 : ミルガレーテを含む仲間たち全員登場回。主にゼラルドとミルガレーテ。

大道芸人の賭け : フルートがメインの話。セレンも少し。ナイフ投げの芸人と出会い…。

辻占い : フィリシアとゼラルドの、短いお話。フルートとセレンもちらりと。

夢のような : 旅の仲間たち全員登場回。セレンがミルガレーテに出会う話。

人さらいと馬 : フルートの話。他の3人はちらりと。

あかずの扉 : フィリシアが主役の話。

さまよう人形 : セレンが主役の怪異譚。旅の仲間たち4人の登場回。

(海を映す庭) : ゼラルドとユリアのエピソード。

にじむ闇 : フルートとゼラルドが再び闇姫に遭遇する、短いお話。

誕生日の姫君 : 旅の仲間たち4人の話。フィリシアの誕生日。

clover (封じられた剣) : 主にセレンの子供時代~少年時代の話。フルートも少し。

滝遊び:旅の1ページ、フィリシアとゼラルドのお話。

聖なる森:フルートとセレンのお話。メインはセレン。帰り道での出来事。

泥より出でしもの:ゼラルドが主人公の、短いお話。

おかしな縁結び:フルート(ルーク)とフィリシア(フィア)が遭遇した、旅先での出来事。

憩いの時間:フィリシアとミルガレーテの二人が、ほっと一息ついているところ。

clover聖者の護符:ゼラルドがメインのお話。

雨の日の窓辺で:フィリシアとセレンがメインの、日常の1ページ。

幻術の塔 :ルーク、フィア、ゼラルドのお話。セレンはちらっと。

星降る夜に :セレン、フィリシア、ミルガレーテの、短いお話。

人魚の歌 :フィリシアの解呪後…。ゼラルドと、フィリシアのお話。

clover竜に乗って :ルークがメインの、短いお話。

三本角の怪物 :ゼラルドがメインの、短いお話。

目は口ほどに :セレンとフィリシアとフルートの雑談。

冬の森、ひとやすみ :セレンとミルガレーテを中心に、森の中、みんなで一休み。

忘れられた町  :フルート、フィリシア、セレン、ゼラルドの、短いお話。

冥婚騒動 :フルート、フィリシア、セレン、ゼラルドのお話。メインはセレン。

旅へ :フルート、フィリシア、セレン、ゼラルドの、旅の始まり。フィリシアを中心に。

なりゆきの英雄 :フルートの単独行動時のお話。

 

うちの子同盟

こぼれ話:また悩む、冒険譚の歩き方

今は目次に青字表記があるぶん、青字表記がなかった頃よりは、途中参加のお客様も少しはとっつきやすくなっているはず。…とは思うのですが。

すぐに全部を読み切れない人のために、気になる登場人物別の案内とか、あったほうが良いのかなー、と思ったりしています。
つまり、「途中から読み始めて○○が気に入った人は、これと、これと、これを読んでおくといいよ~」みたいなのは、需要あるでしょうか…?

気になる組み合わせ別、という考え方もあってですね。
フィリシアとフルートの関係が気になる人は、このへんの話を押さえとくといいよー、とか。
子供時代のフルートとセレンのお話は、このへんが続き物だよー、とか。
主役級全員がそろっているお話は、これと、これと、これと…、とか。
需要あるでしょうか…?

いつものことですが、途中参加の皆様に快適に散策していただくために、何ができるかなあ、と悩みます。
たぶん、相当長くお付き合いいただいている読者様でも、「まだ全部読んでない」方は結構いらっしゃるだろうと思いますし。
なので、もし本当に、「そういう案内が欲しい」とお思いのことがありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね。

作者より:(封じられた剣)

久しぶりに、目次に青字で載せられるお話(=単品でも読みやすい)を書けたよ!
ただ、淡々と進行するお話なので、つまらなかった方には、ごめんなさい。
あと、「宝物の封印」というタイトルは、なんとなくピンと来ないので、そのうち変更するかもしれません。
※ 2016/9/16、「封じられた剣」と改題しました。

それはそれとして、他のお話とのつながりにも、ちょこっと触れておきますね。
セレンがフルートと友達になったときのお話→「夏の訪れ」(初期作品で拙くてすみませんsweat02
宝剣が使えるようになったときのお話→「ゆがんだ城」(これまた初期作品で読みづらい…sweat02
セレンのお母さんの幽霊のお話→「見えない守り手」(比較的読みやすいはず!)
と、なっています。
ご興味おありの方は、覗いてみてください。

読者の方々の中に、セレンびいきのかたが3人くらいいらっしゃるように思っています。
もっとも、同じように、ゼラルドびいきのかたも3人くらい、いらっしゃるっぽい。
次のお話には、ゼラルド出しますね。
雑談を少し挟んでからになると思います。よろしくお願いします。

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(封じられた剣)(04)

 セレンが次にその剣に触れたのは、何年も後のことだった。壁の剣をなんなく掛け外しできる、背の高い若者に成長していた彼は、やや複雑な思いで剣を手に取った。というのも、友が、城の宝物庫で、これと似た、ただし紛れもない宝剣を手に入れたと知ったからだった。
 王子の剣は、柄の部分に紅い宝石が嵌めこまれており、他の者では抜くことができない。セレンも試させてもらったが、やはり無理だった。では、もしや、セレンが図書室で見つけた剣も、友が手にすれば抜けるのだろうか? それを確かめたくて、彼は剣を壁から下ろしたのだった。
 果たして、剣は、王子が試しても抜けなかった。王子は残念そうだったが、セレンは少し、ほっとした。長く忘れていたとはいえ、これは自分が見つけた、宝物だった剣なのだから。もし誰かがこの鞘を外せるとしたら、それは自分でなければならない。もっとも、相変わらず、剣は空気のように軽く、中身があるとは到底思えなかったし、もちろんセレンが試しても、いっこうに鞘は外れないのだったが。
 きっと、よく出来た模造品なのだろう、と、セレンは思った。城の宝物庫にあったという王子の剣は本物で、ディア家の屋敷にあった剣は装飾用の模造品。そう考えるのが、一番現実的で、納得のいく説明ではないか。
 と、そう思ったのは確かなのだが、さて、その半年後、急に王子と旅に出ることになってみると、セレンは、寝室の壁に飾ってある剣が、気になって仕方なかった。今こそ持って出なければ、この剣を見つけた意味がない、という気がしてならないのだった。だが、「意味」とは何だろう? 中身のない、飾りの剣なのに。
 結局、セレンは胸のざわめきに負けて、剣を壁から取り外し、どうあっても抜けないと念を入れて確かめたうえで、なお、旅の荷物に加えたのだった。幸い、すばらしく軽かったから、さほど邪魔にはならなかった。

 むろん、そのときの彼には、知る由もなかった。旅が終わってのち、この剣の封印のことを、どれだけ繰り返し、何度も振り返ることになるのかを。ずっと剣が抜けなかったのは、幼い自分が抱えていた自死願望のせいだったろうか。それとも、剣自身が拒んでいたのだろうか、あの輝くように美しい姫君と自分とを引き合わせないようにと。
 結果から言えば、封印は解けたのだ。旅の仲間を助けたいと、彼が願ったときに。だが、彼が助けた、その仲間は・・・。そして、剣が引き合わせてくれた、麗しき姫君は・・・。
 いずれにしても、その剣は、封印の解けたあとは生涯、彼の傍らにあり続けた。たくさんの思い出と共に、今度こそ本当に、彼の宝物として。
 ――そのような未来を思い描いたわけではなく、ただ漠然とした予感を胸に、セレンは、古代レティカ王国の宝剣の1本を携えて、旅に出たのだった。

(完)

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