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風の贈りもの(トーナメント参加用)

 旅する王子と王女は、あるとき、丘がいくつも連なる土地を通りかかった。
 やわらかな緑に包まれた丘を、ふたり、馬に乗って進んで行くと、ひとつめの丘を越えたところで、子供が二人、座りこんでいるのを見つけた。
 子供は、片方が男の子、片方が女の子で、こざっぱりしたお揃いの服を着て、ともに十にも満たない幼さだった。そっくり同じ銀色の髪をしており、疲れ切った様子で草の上にへたりこんでいたが、旅人たちに気づくと、立ち上がり、手を振ったり叫んだりした。
 王子と王女は、子供たちのそばで馬を止めて降りた。あたりを見回したが、ほかに人影はない。見れば、子供たちはふたりとも泣いており、しきりに訴える言葉を聞けば、
「あるじさまを、たすけて。おねがい。あるじさまを、たすけて」
と言うのであった。
 青い髪のフィリシア姫は、かがんで、子供たちの話をよく聞いてみた。どうやら、子供たちは、どこかの令嬢に仕えているらしく、その令嬢が、この先の「ずっとずっと向こう」で立ち往生しているらしい。幼い忠臣たちは、助けを呼びに歩いて来たのだが、誰にも出会うことができないまま、ここまで来て、疲れて歩けなくなってしまったのだという。
 フィリシア姫は、思案して、王子に提案した。
「そのかたを早く見つけてさしあげましょう。私は子供たちと一緒にゆっくり行くから、あなたはその駿馬で、先に行って探してくださらない?」
 金の髪をしたフルート王子は、もっともな意見だと思いはしたものの、この先、丘をいくつ越えるかも分からないのに、非力な姫君と子どもたちを残して行くわけにもいかなかった。
「みんなで行こう。このくらい小さな子供なら、ぼくたちが一人ずつ抱えて乗れるだろう」
 王子は男の子を、王女は女の子を抱えて馬に乗り、出発することとなった。
 ところが、丘をもうひとつ越えたところには、その子らの女主人の代わりに、またもや二人の子供たちがいた。先の二人と同じように銀色の髪をして、べそをかきながら、
「あるじさまを、たすけて。おねがい。あるじさまを、たすけて」
と繰り返すのだった。王子と王女は相談して、自分たちは馬を下り、子供たちを二人ずつ馬に乗せて、ふたたび出発した。
 3つめの丘を越えたところには、誰もいなかった。子供たちは心配そうに、馬の上で、「もっと先! もっと先!」と騒いだ。
 4つめの丘を越えたところにも、誰もいなかった。子供たちは泣きながら、「もっと先! もっと先!」と騒いだ。
 5つめの丘を越えると、丘のふもとに小川が流れているのが見えた。川のほとりには、銀色の髪をした女性がひとり伏していた。4人の子供たちは、口々に、「あるじさま! あるじさま!」と呼ばわって、大騒ぎした。

 王子と王女は、子供たちが馬から落ちないように気を付けながら、急いで丘をくだった。倒れているのは美しい娘で、晴れ着に身を包んでいるが、ほかに付き添いはいないようだ。
 二人は娘を助け起こした。王女は娘を介抱し、王子は騒ぐ子供たちを馬から下ろしてやった。
「あるじさま!」「あるじさま!」「あるじさま!」「あるじさま!」
 子供たちは泣き叫びながら、気を失っている娘に飛びついた。1人は右腕に、1人は左腕に、1人は右足に、1人は左足に。と、次の瞬間、子供たちの姿はすっと消えて、娘の両腕には銀色のブレスレットが、両足には銀色のアンクレットが嵌っていた。
 王子と王女は、驚いて顔を見合わせたが、そのとき、娘は身じろぎして、目を開けた。フィリシア姫が、あわてて覗き込んで、
「だいじょうぶですか」
と声をかけると、ぼんやりと王女の顔を見つめてから、「はい」と答えて微笑んだ。ゆっくりと体を起こし、異国の言葉で何やら言いかけたが、通じないと気づくと、はにかんだように笑いながら、たどたどしく言った。
「ありがとう、ございます。私は、今日は、結婚するでしょう。すでに、朝は、人でした。飛べないを、歩きます。近いでした、とても遠い、休みました」
 フィリシア姫は曖昧に頷いた。嫁ぎ先が思ったより遠い、というような意味だろうか。
 美しい娘は、ほっと息をついて、にっこり笑った。
「心配の助けを、お礼、おまもりです。ほかはありません」
 銀色の腕輪を片方外して、王女に渡そうとした。
 けれども、フィリシア姫は、さっきの子供たちが「あるじさま」をどれだけ慕っていたかを覚えていた。それで、礼を失しないように気を付けながら、そっと言った。
「そのように大切なものを受け取るわけにはいきません。その腕輪もあなたを慕っています。通りかかっただけですから、どうぞお気になさらないでください」
 娘は困った顔をした。
「お礼、本当の心、ほかがありません」
 腕輪を嵌め直しながら、娘は何か考えて、しばらくして、ぱっと顔を輝かせた。
「おまもり、歌は良いですか? 今は人、風でした、変わらない。風を困る、歌って」
 すうっと息を吸って、透き通った声で、不思議な節回しで、歌った。
「風よ、あなたの。娘の、友を。守って。ここに、いるよ――」
 うながされて、フィリシア姫も歌った。繰り返して三度歌うと、やわらかな風が吹いて来て、王女の周りを一巡りしてから、丘と丘の間を吹き抜けて行った。
「優しい、忘れません。風、あなた、私」
 娘は満足そうに言って、立ち上がった。小川の脇の小道に立ち、ほがらかに言った。
「あと少し。心配ありません。元気です。ありがとう。さよなら」
「さようなら。お元気で、お幸せに」
 娘はうなずいて、軽やかに身をひるがえし、飛ぶような足取りで歩き出すと、もう振り返らなかった。
 フィリシア姫は、王子と馬のほうを振り返った。ふと、思いついて言った。
「もしかして・・・風の精だったのかしら? 嫁ぐために、人になったのかしら?」
「そう聞くと、そうとしか思えないな」
と、フルート王子は笑った。
 そして二人は、少し幸せな気分になって、めいめいの馬に乗り、旅に戻ったのだった。

(完)

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第10回 自作小説ブログトーナメント参加用です。今回はさらっと、旅の1ページを。
約2,400字。コメントはお気軽に♪

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コメント

10月10日開催、第10回自作小説トーナメント
優勝おめでとうございます。
例のごとく、結果まとめページにリンクを貼らせて頂きましたので、ご了承くださいませ。
トーナメントへのご参加、誠にありがとうございました。

みんもっこすさん、
ご連絡ありがとうございます♪ 毎回のおとりまとめに感謝しております。

今回は、投票にあたって読んでくださった方が多くて、とても嬉しかったです!
月初の開催、じわじわ認知&定着が進んで行くといいですね。
自作小説トーナメントの、ますますの発展を、心よりお祈り申し上げております。

月路さん

トーナメント優勝おめでとうございます!

再読させていただきましたが
翡翠のように美しい輝きを持った作品ですね。

これから益々のご発展をお祈りしていますbell

montiさん、
コメントありがとうございます♪

翡翠! まあ! なんと素晴らしい、お褒めの言葉なのでしょう!
感激です、ありがとうございます…!

いささか身のまわりの落ち着かない秋を過ごしておりますが、
そのうちにお茶とケーキをご一緒させていただきたく、お声をかけさせてくださいねhappy01restaurant

紅葉の並木を眺めながら、tea roomで・・

いいですね!
一度ご一緒しませんか?
湯島、神楽坂あたり・・・

この時期はいいと思いますよ。
良かったら、お友達もご一緒にいかがhappy01

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