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聖なる森(06)

 ――その言葉は、ほとばしるように女王の口から放たれて、次の瞬間、セレンの心に深々と突き刺さっていた。セレンは動揺し、その一瞬、世界は崩れていた。それを崩れないように支えていられるためには、彼はあまりにも最近に、あまりにも深く傷ついてしまっていた。
 彼はその瞬間、自分がどこにいて、何をしているのかもわからなくなっていた。ただ、自分が遥かな時をさかのぼって、幼い少年の日の夢の中にいるのだと感じていた。彼がかつて狂おしく待ち望んだその夢を、目の前の精霊は何らかの手段によって知り、それを無条件に叶えてくれようとしているのだった。そして彼は――彼は、しかし、この夢を何とかして抜け出して、現在の彼がいたはずの世界を、もう一度構築したいと望んでいるのだった。そのすべを何としても知りたいのだった。そう、精霊の女王は何もかも知っている・・・けれど同時に、何ひとつ知ってはいない。なぜなら、彼は「帰りたい」のだから。帰らなければならない、ではなく、帰りたい、のだから。
 セレンは、もしもあの憂いに満ちた幼い日にこの夢が立ち現れていたならば、自分がためらわずにこの精霊の申し出を受けただろうことを知っていた。けれど、その遠い日にこの夢に出会えなかったことを、嘆こうとは思わなかった――それどころか、出会わなかったことはむしろ、今の彼にとっては喜ばしいことだった。もし、少年の彼がこの美しい幻を現実として休息を見出していたならば、彼は決して、彼が今帰りたいと望んでいる世界が、自分にとって本当はどのような意味を持ち得たのか、知ることはなかったのだ。その世界で、彼は今どれほど幸福であることだろう。どれほど、その世界にいる自分を誇りに思っていることだろう。たとえ時には、悲しみの底に沈むことがあったとしても、それでも。
 そのことを、そのゆえを、精霊の女王は知らなければならなかった。そして・・・世界はゆるやかに、元通りの姿を取り戻しつつあった。
「――たしかに、少しばかり難儀することもございますけれども、陛下」
 世界が再びよみがえったとき、いましがた逆巻いた混乱のすべては一瞬のうちに生まれて去ったのだと、セレンは知っていた。彼は女王の前にひざまずき、穏やかに申し述べた。
「それでも、わたくしはこれまで、人の世に生きて参ることができましたし、もしもこのような矛盾した言い方をお許し願えますならば・・・わたくしが今、陛下のもったいないご厚意に甘えて留まりたいと望みますほど、人の世の憂き目を嘆いておりましたなら、わたくしは今頃、もうここに生きて在ることはなかったと思うのです。たしかに、過ぎ去りし日々において、自分が人の世を生きるのに向いていないと、感じたこともございましたから」

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コメント

あー・・。
この回のセレン・・。
すごく好きです・・。

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

がんばって書いたので、そうおっしゃっていただけて嬉しいですheart04
セレンには、生きることの痛みと誇りを知る人であってほしいと願っていますclover

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