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  • (2017/8/13朝)創作活動が進みません~。少しばかり夏休みをいただきます~。

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2015年12月

ひとやすみ:地下謎への招待状2015

日曜日に、友人と二人で、東京メトロで開催中の謎解きイベント「地下謎への招待状2015」に行って来ました!
去年も同じ友人と参加したのですが、今年もやってるね、行こうよ!と。
10月から12月までの開催だと思っていたので、もうすぐ終わっちゃうと思って慌てて行ったら、どうやら好評につき1月末まで延長されたようです。
これから行こうかなーと思いながらこの記事を読んでいる方がいらしたら、「面白かったですよ、ぜひどうぞ」。ただ、いろんなイベントを制覇している謎解き上級者さんには、少し易しすぎるかもしれません。
以下、ネタバレなしのレポートです。

当日は、朝10時に駅で待ち合わせて、まずは謎解きキットを購入。(東京メトロ一日乗車券込みで、2160円。発売駅は銀座・上野・池袋・新宿・渋谷です。)
キットは、こんな格好をしています。メトロに乗っている人がこれを持っていたら、謎解き中ということ。

2015
マクドナルドで飲みものを飲みながら、まずは作戦会議。キットの中身を取り出してみると、去年より洗練されていて、嬉しくなっちゃいます。
去年は、バラバラのカードがたくさん入っていて扱いづらかったのですが、今年は、冊子1冊、カード1枚、路線図シート1枚。使いやすいです。また、一日乗車券と鉛筆にも定位置が出来ています。

最初の問題を解くと、いくつかのチェックポイントが分かるので、回る順番を決めて、いざ出発!
問題の難易度は、スムーズに解けるものから、しばらく考えて解けるものまで。
2人で知恵を出し合って、まずまず順調にチェックポイントを周り、その後も、お昼をはさんで、次の目的地へ、次の目的地へと、謎解きしながら進んで行けました。
問題は、全体的によく考えられていて、「解いて気持ちいい」です。
対象年齢は、中学生以上かな?
Webサイトにヒントも用意されているようですが、一度も使わずにクリア。午後3時20分でした。
つまり、謎解き中級者の所要時間は、実質4時間~4時間半くらい、でした。

まとめ。面白かったです。よくできてます。満足です!
制限時間がなく、自分のペースで、お茶休憩を入れたりしながら進められるイベントですから、とくに謎解き初心者さんにおすすめ!
この手のイベントに一度も参加したことがない初心者さんは、お友達と一緒に行って、力を合わせてクリアするのがいいと思います。きっと、すごく楽しい。
各種の脱出ゲームなどで鍛えられている上級者さんだったら、1人でタイムアタックするつもりで、でも少し易しすぎると感じるかもしれません。

おみやげにドーナツを買って帰宅したけど、写真とりわすれちゃった。
来年も、こんな感じで、あるといいな、と思います。
以上、レポートでした♪

宝物:しおり(フィリシア)をいただきました!

なぎ風呂。の、なぎさんが、配布物のご請求で切手を送ってくださったので・・・

封を開けたら、ですね・・・

こんな素敵なサプライズが出て来ました!

Photo_2

栞です! フィリシアの! きゃーん、可愛い!lovely
着てる服、覚えてますか? 前に描いていただいたときにデザインしてくださったお洋服です。お洒落なの~shine

ご厚意により元データもいただきましたので、オリジナルの栞は永久保存版にして、がんばって自力で複製栞を作って、そちらを実用に使わせていただこうかと。
そして、叶うことなら、これから配布物を請求してくださる方にも、1枚ずつプレゼントさせていただきたい・・・!

なぎさんからは、「煮るなり焼くなり」と、広い心でおっしゃっていただいております。
皆様! なぎさんの絵の栞ですよ! めちゃ可愛いフィリシアですよ!
えっと、まずは、私が栞の作成スキルを身につけるまで、辛抱して待っていてくださいね・・・coldsweats01

なぎさん、どうもありがとうございましたsign03

作者より:「泥より出でしもの」 & トーナメント結果:「見えない守り手」

静かな短いお話でしたが、いかがだったでしょうか。
前半と後半の間隔が空いてしまって、申し訳ありませんでした。

気づけば、サイト開設から丸5年経っています。時の過ぎるのは早いものですね。
物語の半分を書いた、という実感があります。その割に、初めのほうに置かなければならないお話を、いろいろ書けていませんけれど…。

先日、ブログ村のトーナメントに出品した「見えない守り手」は、一回戦敗退でした。
毎回少しずつ違う雰囲気のお話を出すようにしているので、トーナメントの傾向が見えるような見えないような。
今までで成績が良かったのは、「光り姫」(準優勝)と「風の贈りもの」(優勝)。どちらもフィリシアのお話ですが、偶然かしら。

次のお話は、フィリシアか、ミルガレーテのお話を書きたいな、と思います。
何かと忙しい年末年始ではありますが、ゆるゆると考えます。

泥より出でしもの(02)

 ゼラルドは首をかしげて、尋ねた。
「ひとの姿かたちを真似て、何を望むのか」
「あなたがたと、わかりあいたい。そして、わたしの寂しさを埋めたい」
 泥の女の答えは、淡々として静かだった。ゼラルドは、しばらく黙っていた。もし、泥の女が人への害意を持っていたら、討たねばならなかっただろう。だが、少なくとも今は、その必要はなさそうだ。ならば。
「ひとの命を奪わずとも、ほんの少しの間だけ、その姿かたちは変えられるかもしれない」
 ゼラルドは、儀式用の長い針を取り出して、自らの指を突き、ひとしずくの血を沼地に落とした。月の聖者であり、太陽の聖者であり、聖王家の一員である彼の、血のひとしずく。
 泥の女は、何を言われたのかよくわからない様子だったが、やがて、ああ、と声をあげた。
「これは・・・、何を・・・」
 言いながら、泥の女は自らの姿を見下ろした。その肌の色が、足元から徐々に、白く染まって行く。両の足、両の手、やさしい面立ちの顔が、人間らしい色に染まったあと、続けて、その唇は薄赤く、長い髪は漆黒に、どんどんと染まって行く。
 泥の女は、変わってゆく我が身をまじまじと眺めていたが、
「もしや」
と言って、立ち上がった。沼地の上を何歩か進んで、
「こんなに歩ける――!」
 驚いた顔で振り向いた女に、ゼラルドは冷ややかに問うた。
「さあ、姿かたちを真似ることは叶ったが、汝の寂しさは少しでも埋まっただろうか」
「・・・!」
 女は目を見開いてゼラルドを見つめ、それから、理解の色を瞳に浮かべて、ゆっくりと目を伏せた。溜息のように、答えた。
「どうなのでしょう。よくわかりません・・・」
「その姿を、とどめたいと望むだろうか。また、その姿を得て、この沼地を去り、どこか別の場所に向かいたいと望むだろうか」
「・・・いいえ」
 女は再び、溜息のように答えた。それから、目を上げて、こう言った。
「うれしかった。でも、もう、わかりました。いりません。そして、どこにも行きません」
 女の姿から、さきほどとは逆に、色が消えて行く。髪の色が、顔の色が、両の手が、両の足が、泥の色に戻って行く。そして、女の足は沼地に沈み始め、膝まで沈み、腰まで沈み、胸まで沈み――。
 沈み切る前に、泥の女はゼラルドに向かって、両腕を広げて、微笑んだ。
「こんなところでも、わたしの故郷なのです・・・」
 そして、溶けるようにして沼の中に消えて行った。あたりには、元の静寂が満ちた。
 泥より出でしものは、泥に還った。
 討伐は必要ないと判断して、黒髪の王子は、旅へと帰る。

(完)

泥より出でしもの(01)

 あるとき、黒髪の王子は、友とふたり、荒れ果てて怪しい気配のする沼地を通った。道を誤れば、得体の知れない怪物に、馬もろとも引き込まれてしまいそうな気がした。
 ふたりは用心しながら馬を進め、幸い何事もなくその地を通り抜けた。だが、ゼラルドの中には強い違和感が残った。間違いなく、やわらかな泥の底には何かが潜んでいた、が、人とも動物とも、生霊とも死霊ともつかないそれは、旅人たちが通り過ぎるのを、ただ黙って見つめていただけだった。あれは、何だったのだろう。
 ゼラルドはそっと、その場所に、自分だけにわかる目印をつけておいた。そして、あとで自由な時間ができたとき、ひとり、空間を跳んで戻った。目印のある既知の場所になら、よほどの障害に隔てられない限り、彼は何の苦労もなく一瞬で跳べる。
 あらためて沼地に立ち、見回して、そこに棲むものを探しながら、彼はふと、自らの変わりようを思った。かつては、何も見ないように、何も聞かないように、ただ日々が無事に過ぎてくれることを祈るばかりだった自分が、今はこうして、誰に咎められることもなく、自らの好奇心に従っている。好奇心。自分にもそのようなものがあったとは!
 ほどなく、彼は違和感のもっとも強い場所を見つけた。ぬかるんだ泥に向かって、彼は静かに呼びかけた。
「そこに在るのは何者か。姿を現せ」
 すると、沼地の表面が泡立って、泥で出来た人の顔らしきものがひとつ、浮かび出た。その口が動いて、女の声がした。ぶくぶくと泥が泡立つせいで聞き取りにくかったが、こう言っていた。
「もうあきらめました。引き止めませんから、お行きなさい」
 ゼラルドは少し考えた。そして、結局、尋ねた。
「あきらめたとは、何を」
 女の顔は、泡を吐きながら答えた。
「あなたがたと、わかりあうことを。ともに過ごすことを。あなたがたが泥の中では生きられないと、知りましたから。もう、泥の中へと連れ去ることは、いたしますまい」
 ゼラルドは、また少し考えてから、言った。
「では、そなたのほうが泥の外に出てはどうか」
「難しいことですが、それでは、やってみましょう」
 泥に浮かんだ顔が、少し持ち上がった。と思うと、やがて、泥でできた頭全体が、ぬっと突き出た。頭はさらに持ち上がり、首が、肩が、腰が、足が、徐々に現れて、最後には、ひとりの女が沼地の上に立っていた。泥でできた女は、つま先を泥に浸したまま、近くにあった苔むした岩に腰かけて、口を開いた。
「この姿かたちは、わたしが最後に引き止めたひとのもの。わたしには重くて、思うように動かすことができません。色合いも、真似ることができません。あるいは、さらに多くのひとを呑み込めば、より多くを似せることができるのかもしれませんが、命を奪ってまで望むことではありません」

予告:「泥より出でしもの」

大変お待たせしております。
ここのところ、平日は仕事が忙しくて、帰宅後、創作する時間も気力もなくて…。
でも少し、落ち着いて来たかな。今週は少し、早く帰れるといいな。

そんな感じで、ようやく書き始めたところです。全2回の、短いお話になります。
前半は、あさって火曜日に出せると思います。たぶん。
後半は、また週末になるかもしれません。
のろのろ運転ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

見えない守り手(トーナメント参加用)

 日が暮れたころ、小さな町に着いた。
 宿を尋ね当て、馬を預けて、ふたりの若者は食堂に行った。あまり客はいない。
 向かい合ってテーブルにつき、食べものと飲みものを注文してから、
「それで? 結局これは、どういういやがらせなんだって?」
と、セレンは不機嫌に尋ねた。さらさらと長い髪は明るい金色、瞳は綺麗な緑色、つまり本来なら、彼が都を迂回して田舎道を通らねばならない理由は何もない。
「別に」
と、そっけなく答えたゼラルドは、黒髪に黒い瞳。この国の都には入れないから、迂回路をたどるのは予定通りだ。
「別に、とは?」
 セレンはいらいらと聞き返した。細い指先でテーブルをトントンと叩いて、
「お互い、一緒に行動したって不愉快なだけだろう? それを、わざわざ付き合わせたからには、何か理由があるだろう!」
「ない。単純に、いやがらせだ」
 言い切ったゼラルドの口元には、かすかな冷笑が浮かんでいる。
 むっとして、セレンがさらに言い募ろうとしかけたとき、厨房のほうから、こんな声が聞こえて来た。
「ほらほら、邪魔をしないで、マリカ。ミリカも。これはお客さんに出す食事なんだから」
 ほどなく、両手に盆を持った女性がやって来て、給仕をしてくれた。セレンがふと見ると、女性の後ろには、10才くらいの女の子が一人、隠れるようにして付いて来ている。
 女の子は、栗色の髪を二本のおさげにしており、母親なのだろう女性の陰から、セレンとゼラルドをチラチラと見比べていた。ゼラルドは無視したが、セレンは目が合ったので、にこ、と微笑んでみた。女の子は恥ずかしかったのか、タタッと厨房に駆け戻って行った。
 給仕の女性が料理を置いて立ち去ったあと、ゼラルドは目を伏せたまま、静かに言った。
「あの双子には、関わらないほうがいい」
「え?」
と、セレンは厨房のほうを振り返った。子供の姿が見えなかったので、向き直って訊いた。
「一人しか出て来なかったのに、どうして双子だとわかるんだ?」
「一人?」
 ゼラルドは、ちらりとセレンを見たあと、再び視線を落として、つぶやいた。
「では、一人は生きており、一人は亡くなっている、ということなのかな」
「えっ」
 セレンは今度は、ぎょっとして体を引いた。
「おどかさないでくれ。君の席からだと二人見えた、というだけだろう」
「君は、今までに幽霊を見たことはあるか」
「幽霊! あるものか!」
 不自然なほど思いきり否定してから、我に返って、セレンは、もごもごと取り繕った。
「いや、一度だけ。子供のとき、亡き母に招かれて、書庫に行ったことがあるけれども。でも、いま思えば、夢だったのだと思うから」
 聞いて、ゼラルドは首を傾げた。
「・・・もしかして、君は幽霊が怖いのか」
「違う! 見たことがないから信じられないだけだ」
 セレンは答えたが、ゼラルドは無言で、ふっと笑った。セレンはゼラルドをにらみつけたが、言うべき言葉もなく。そのあとは食事が終わるまで、二人とも、もう一言も口をきかなかった。

 あまり食べないゼラルドが先に食事を済ませて出て行ったあと、セレンも、出された料理を食べ終わって食堂を出ようとした。が、背後でパタパタと足音がして、
「待って、おにいちゃん」
 声をかけられて、振り向いた。声の主は、さっきの、おさげの女の子だった。とても真剣な顔で、長身の若者を見上げている。セレンはかがんで、目線を女の子に合わせ、やさしく声をかけた。
「どうしたんだい」
「あのね・・・、あたし、マリカっていうの」
「うん。ぼくはセレン」
「あのね・・・、あたしと一緒に、ミリカを探してくれない?」
「ミリカっていうのは・・・」
 セレンは顔を曇らせ、言葉を濁した。ゼラルドが言ったことが本当なら、ミリカはこの世の者ではないということになる。だが、給仕の女性は、厨房で二人の子の名前を呼んでいた。「マリカ」と「ミリカ」。きっと、ちゃんと二人とも生きていて、セレンの席からはもう一人が見えなかっただけなのだ――と、思いたい。
 マリカは真剣なまなざしのまま、セレンの期待を打ち砕いた。
「ミリカは、あたしの双子の妹。去年、死んじゃったの。でも、いつもそばにいて、あたしと母さんを守ってくれてるの」
「そばに、って・・・今も?」
 セレンはぞわっと鳥肌が立つのを感じながら、あたりに視線をさまよわせた。マリカは首を振った。栗色のおさげが揺れた。
「ううん。さっきまで一緒にいたんだけど、外に出て行っちゃった。おにいちゃんのせい。おにいちゃんが、ミリカには笑ってあげなかったから。あたし、ミリカを追いかけたいの。お願い、おにいちゃんも、一緒に来て」
 ふと視線を感じてセレンが目を上げると、厨房の入口で、給仕の女性がこちらを見ており、セレンと目が合うと深々とお辞儀した。マリカと一緒に行ってくれ、ということだろうか。たしかに、危険な夜道を子供ひとりで行かせられはしないが。
 傍らのマリカに視線を戻すと、少女は泣き出しそうな顔をしていた。
「おにいちゃんが一緒に行ってくれなかったら、マリカ、泣いちゃうよ。おにいちゃんに意地悪された、って言いながら泣くよ。そしたら、ミリカはすぐに戻って来て、おにいちゃんを呪う。あたしはミリカさえ戻って来てくれればいいけど、おにいちゃんは、呪われたくないでしょ?」
 もちろんだ、と思ったセレンに、マリカは小さな手を差し出した。おずおずと、
「手、つないでも、いい?」
「・・・ああ」
 セレンは仕方なく、手を差し出した。マリカはその手をぎゅっと握った。
「行こう、おにいちゃん。ミリカの行きそうな場所はわかってるから。あたし、道案内するね」

 マリカは、右手でセレンの手をしっかりと握り、左手にはカンテラを提げた。子供を連れて夜道を歩くのだから気をつけなければいけないな、とセレンは思ったが、しばらく歩いて、ふと気が付くと、どこをどう歩いて来たのか、よくわからなくなっていた。
 木々のまばらな林の中。行く手の小道を、月が照らしている。夢の中にいるようだ。
「あとちょっとだよ、おにいちゃん」
 マリカが安心したように言った。そうか、良かった、とセレンは思ったが、何かを忘れているような気がした。思い出すのは億劫だったが、大切なことだと思えたので、苦労して記憶をたぐった。そして、思い出した――「あの双子には、関わらないほうがいい」。
 セレンは足を止めた。マリカは驚いたように彼を見上げた。
「どうしたの、おにいちゃん。もうすぐだよ」
 待て。幽霊に会いに行って、いいのか?・・・いや、幽霊など、いるはずがない。妹を亡くした可哀想な少女の妄想だ。気の済むようにさせてやろうではないか。
 再び歩き出そうとしたとき、右腕を誰かにつかまれた。ぎょっとして、息が止まった。人の気配はまったくない。振り向いても誰もいないだろうと、なぜか、わかる。
 マリカは、セレンの右後ろのあたりを見て、いぶかしそうに、
「あなた、だれ?」
と言った。
「おにいちゃんを離してよ」
 セレンが右腕を振り払おうとしたとき、後方から鋭い声が飛んできた。
「セレン! 動くな!」
 ゼラルドの声だった。一瞬ののち、セレンの右腕をつかんでいた何者かはセレンから離れ、代わりに、ゼラルドがセレンの右隣に並んで、その同じ場所をつかんでいた。
「帰りが遅いと思えば、なぜこうも愚かな・・・。見たまえ、君がどこに立っているのか!」
 ゼラルドは前方を薙ぎ払うように手を振った。目の前に続いていた道は煙のように消え、セレンは驚いて数歩あとじさった。彼が今まで立っていたのは、崖のふちだった。すぐ先に、深い深い谷。
「マリカ。君は・・・」
 セレンは、左手をつないだまま少女を見下ろしたが、少女は別のものを見ていた。
「ミリカ? どうしたの? どこに行くの? あたしを置いて行くの?」
 崖のほうに歩み出そうとする少女を、セレンとゼラルドは二人で押さえた。
「放して! ミリカが行っちゃう!」
「当然だ。死者なのだから」
 ゼラルドの冷ややかな声。マリカは何かを視線で追いながら、泣いた。
「ミリカ。ミリカ。母さんが、きっと悲しむわ・・・」
 嘆き悲しむ少女を落ち着かせ、三人で宿屋に引き返した。帰り道は意外なほど、すぐだった。双子の母親は食堂の前で待ち構えており、彼らが戻ると、きょろきょろと辺りを見回した。
 マリカはセレンの手を離して母親の前に立ち、うなだれた。
「母さん、あのね。ミリカはね・・・行っちゃったの。止められなかった。ごめんなさい」
 母親は、うめくように「ああ」と言った。それから、かがんで少女を抱きしめた。
「そう。そうだったのね。つらかったわね、マリカ。でも・・・よかったのかもしれない」
「何がいいの、母さん! あたしはミリカと、ずっと一緒にいたかった。母さんだって!」
「ええ、ええ。でも、引き止めてはいけないって、本当はわかってたから。大丈夫、母さんにはマリカがいるもの」
 少女は驚いたように母親を見上げた。それから、母親にしがみついて、わあっと泣いた。セレンとゼラルドは、そっとその場を離れた。
「ゼラルド。その・・・」
 セレンが口ごもりながら言いかけた言葉を、ゼラルドは冷ややかに遮った。
「謝辞は不要だ。君などどうなっても良かったが、君に何かあったらフルートに恨まれる。それが嫌だっただけだ」
「・・・人がせっかく」
「君は、母親似と言われているのだろうね」
「え? 生き写しだと、よく言われるけれど。なぜ、君がそれを?」
「別に。そのような気がしただけだ」
 ゼラルドは、静かにそう言ったきり、あとは何も言わなかった。

(完)

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進捗状況報告(2015/12/05)

仕事が忙しくて、くたびれている作者です…。
それでも、年末までに、もうひとつくらい、何かお話を書きたいな。

泥のお話を書こうかな…?
たぶん、ゼラルド単独主人公の、1ページか2ページの短いお話で、番外編に似た雰囲気の本編になります。

見込みが立ったら予告を出しますね。
うまく時間を割り振ることができますように。

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