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2016年1月

おかしな縁結び(03)

 令嬢は、目を丸くした。
「え? え? いったい、どういう・・・」
「ぼくは、今でこそ何不自由なく暮らしていますが、貧しい家に生まれました。幸い商才があったおかげで、今はこのように大きな館を建てて住んでいますが、ずっと、姫君と呼ばれるひとと結婚するのが夢でした。黒パンが口に合わない、干し草の上では眠れない、あなたのようなひとこそ、隠していらっしゃるけれども、本当は高貴な姫君に違いない。きっと、侍女と、下男と、じいやを連れて、何か理由があって落ちのびていらっしゃったのでしょう。つらいめにもお会いになったかもしれませんが、今日からは、苦労などさせません。もちろん、本当は羽根布団も用意してあるのです。試すようなことをして申し訳ありませんでした。どうか、ぼくの妻となってください。この館で共に暮らしましょう!」
「まあ」
と言って、令嬢は、気を悪くするふうもなく、はにかんだように笑った。
「そのようなことで気付かれてしまうとは思いませんでした。おっしゃるとおり、ゆえあって落ちのびて参りました。行くあてもなく。もし、このようなわたくしで良いのでしたら・・・」
ぽっと頬を染める令嬢と、しきりに褒め称える若者の周りを、不思議に華やいだ空気が取り巻いている。
 あっけにとられたルークが、思わずぼそっと呟いた声は、隣にいたフィアの耳にだけ届いた――「馬鹿じゃねーの?」
「ルークったら!」
 フィアにとがめられて、ルークは、「いいけどさ」と肩をすくめた。ふたりは黒パンをミルクに浸して食べながら、くすくすと笑った。
「君のこと、侍女だってさ」
「あなたのこと、下男ですって」
 すると、じいやが真面目な顔で言った。
「わしの目は、ごまかせませんぞ」
「え?」
 ふたりが見ると、じいやは頭を下げた。
「旅慣れていらっしゃるようだけれども、あなたがたこそ、ただものではありますまい。お嬢様はどうやらここが気に入ったご様子、我々をここまで連れて来てくださって、どうもありがとうございました」
 旅の王子と王女は顔を見合わせた。そして、
「ただの通りすがりさ」
「お役に立てたなら、良かった」
と、口々に言って、笑った。
 朝食後、ルークとフィアは、すぐに館を発った。じいやだけが、何度も頭を下げながら見送ってくれた。
「あのひとたち、うまく行って、幸せになるといいわね」
と、馬上に揺られながら、フィアが言った。馬を並べているルークは苦笑して、
「まあ、そうだな」
と言った。
 そうして二人は、思うことなどをぽつぽつ話しながら、今日も旅を行くのだった。

(完)

おかしな縁結び(02)

 こんな人里離れたところにある館には、さぞ世捨て人のような主が住んでいるかと思いきや、主人は若く朗らかな若者だった。旅人たちに食事をふるまうテーブルに、自ら姿を現して、彼はにこやかに歓待の意を表した。
「ようこそ、みなさん! この出会いは、きっと運命の導きです。あなた方をお迎えできて、とても嬉しい。さあ、存分に召し上がってください」
 食卓に出されているのは、黒パンとシチューだけだったが、旅人たちはめいめい礼を言って食べた。いくらもしないうちに、令嬢が、泣き出しそうな声で訴え始めた。
「どうして意地悪をなさるのですか? おなかが空いているのに、このパンの固さと来たら。とても人の食べるものとは思えません!」
 食卓に、しばし、気まずい空気が流れた。というのも、そのパンは庶民にはありふれた食べもので、そうと知っている他の3人にしてみれば、文句など言ったら失礼だと思われたからだ。
「ねえ、シチューに浸してみたらどうかしら・・・」
 フィアがおずおずと食べ方を教えようとしたとき、館の主人がパチパチと手を打った。なぜなのか、すこぶる上機嫌な様子だった。
「ふむふむ、そうでしょう、そうでしょう! では、あなたには今すぐ、柔らかなパンを持って来させましょう」
 彼が召使いに何か合図すると、召使いはいったん下がって、それから、1人分のごちそうを運んで来て、令嬢の前に置いた。令嬢の顔が明るくなった。
「ありがとう、わかってくださって。きっと本当は、お優しい方でいらっしゃるのね」
 にこにこしながら令嬢は食事を再開し、残り3人の客人は顔を見合わせた。自分たちも、文句を言えば白パンや葡萄酒にありつけるのだろうか? いや、そうかもしれないが、自分たちは黒パンを食べられるのだから、それでいいではないか。結局、3人は何も言わず、固いパンをシチューに浸して、残さず食べた。
 食事のあとは、ひとりずつ別の寝室に案内された。めいめいの部屋には、干し草にシーツをかけた即席ベッドが用意されていた。長かった1日が終わり、皆ほっとして、体を休めた。
 翌朝。
 館の主人は、朝食の席に再び姿を現して、楽しそうに旅人たちを見回した。
「ごきげんうるわしゅう、旅の方々。ゆうべは、よくお休みになれましたか」
 その視線がフィアの上で止まったので、フィアは笑顔で、よく眠れましたと答えた。主人は軽くうなずいて、次に令嬢の顔を見た。令嬢は、青ざめた顔で答えた。
「いいえ。寝床がでこぼこしていて、寝返りを打つたびにガサガサと音がして、とても眠るどころではありませんでした。とても疲れていたので、休みたかったのに。どうして、このようなひどい仕打ちをなさるのですか」
 じいやが慌てて、とりなそうと口を出した。
「お嬢さ、あいや、姪っ子は、我が家では贅沢をして羽根布団で寝ておりますゆえ。失礼を申し上げて、まこと申し訳ございませぬ。あとで、よく言ってきかせますから――」
 しかし、館の主人は、じいやの言うことなど聞いてはいなかった。
「あなたこそ、ぼくが探していたひとだ!」
 彼は令嬢のもとへと駆け寄って、その目の前にひざまずき、うやうやしく令嬢の手を押しいただいてキスをした。

あと1回あります~。

おかしな縁結び(01)

 クルシュタインの王女フィリシアは、自らにかけられた死の呪いを解くために旅をしている。身分を明かさず、フィアと名乗って、一般庶民のふりをすることが多い。同行する隣国の王子フルートも、同じように、ルークと名乗っている。
 あるとき、ふたりが馬に乗って、ぽつぽつと語らいながら街道を進んで行くと、道ばたで、若い娘が座りこんで泣き言を言っていた。
「これ以上、馬に乗るのはいやよ。じいや、私はもう疲れました。このあたりで、通りかかる馬車を待って、乗せてもらうことにしましょうよ」
 質素な身なりをしてはいたが、その言葉からも、身にまとう気品からも、彼女が身分の高い家の令嬢であることは疑いようがなかった。かたわらで、じいやと呼ばれた初老の男は、「このあたりは馬車には不向きな道でございますから」と、困ったように言ってから、ちょうど通りかかった二人を指さした。
「お嬢様、ごらんください。ちょうどお嬢様と同じくらいの年頃の娘さんが、同じように馬に乗って通り過ぎて行きます。お嬢様もお心を強く持って、もうしばらくご辛抱くださいませ」
 じいやが指さしたのは、フィリシア王女、もとい、フィアだった。たしなめられた令嬢は、通り過ぎて行く青い髪を目で追いながら、
「きっと、馬に乗り慣れているのでしょう。一緒にしないで」
 恨めしそうに言ったが、思い立ったように続けた。
「では、あの方たちに同行させてもらおうかしら。声をかけて、お待ちいただいて?」
 じいやは慌てて駆け出して、大声をあげた。
「もし、そこのお二方、お待ちください! もし!」
 旅の二人は、追って来る声に気が付いた。
「ルーク、あれって、私たちのことじゃないかしら?」
「知らん顔して通り過ぎても、ばちは当たらないと思うぜ」
「そうは言っても。旅の空では、困ったときはお互いさまだもの」
と、フィアは言って、馬を止めた。

 そんなわけで、次の街まで、叔父と姪の二人連れ(と、当人たちは言い張った)が、一緒に行くことになった。そして、何度も何度も何度も何度も休憩が挟まれることになり、進む速度は、ぐんと落ちた。
 フィアは文句を言わず、励ましの声をかけ続けた。ルークのほうも怒りはしなかったが、
「なあ、こんなふうだと、今日は街に着かないぞ。いいのか?」
「困ります。野宿するわけには参りません」
「覚悟はしといたほうがいい」
 当然の結果として、陽が沈むころ、まだ街はずっと先にあった。
 不幸中の幸いで、近くに、人の住む館がひとつあり、泊めてもらえることになった。

予告:「おかしな縁結び」

なかなか更新できなくてすみません。
結局、次のお話のタイトルは、「おかしな縁結び」となりそうです。
フルートとフィリシア、というかルークとフィアの、旅の途中の1ページ。
内容的には全1回でまとめたい小さいお話ですが、量的に見て、全2回かな。
1回目は、あさって日曜日にリリースできるように頑張ります。
よろしくお願いいたします♪

トーナメント結果:「始まりの物語」

ブログ村の自作小説トーナメントに「始まりの物語」を出していましたが、今回は参加作品数が少なく、いきなり準々決勝から始まって、初戦敗退でした。
参加受付終了ぎりぎりに滑り込むと、読んでくれる人の数が減る傾向があるみたいなので、不利だったかもしれません・・・が、それ以上に、今回は対戦相手の方の小説がとても素敵だったので、これは仕方ないや、と思いました。

小奈鳩ユウさんという方の書かれた、「夢の卵」という小説が、それです。
そのまま最後まで勝ち進んで優勝でした。
つめたくて、あたたかくて、かなしくて、やさしい。私のとても好きなお話confidentheart04
よろしければ、皆様も、ぜひ読んでみてください。→こちらからどうぞ。
いろんな方がコメントを付けてるので、お気に召したときの一言も残しやすいですよ♪

ところで、お待たせしております次のお話ですが、次回の更新で、予告を出そうと思います。
フルート(というよりルーク)と、フィリシア(というよりフィア)の、日常系の短いお話です。
タイトルは、んー、「縁結び」かなあ。
ルークとフィア自身の縁のことではないので、その線は期待せずにお待ちくださいcoldsweats01
「田舎パン」のほうがいいかなあ。タイトルに悩むなあ。

こぼれ話:「気にしない」

 旅先で、フィリシア姫がパーティーに呼ばれて、フルート王子は呼ばれない、ということが、ないわけでもない。そんなときは、フィリシアのパートナーとして、セレンが付き添って行く。また、そういうパーティーに参加している人々は、えてして、フィリシアの祖国クルシュタインのことは知っていても、フルートとセレンの祖国リーデベルクのことには疎く、リーデベルクで一番の大貴族であるディア家のことも、その跡継ぎ息子のセレンのことも、よく知らないのだった。そうして、仕方のない成り行きなのかもしれないが、とりわけ長髪の男性が珍しいような地域では、彼らはわざとセレンに聞こえるように、「髪など伸ばして、いかにも軟弱だ」などと悪口を言うことがあって、フィリシアはそのたびに心を痛めていた。
 けれども、フィリシアが見たところ、神経質なところのある割に、セレンはその手の当てこすりには、まるで動じなかった。慣れているのかしら、と思いながら、フィリシアは、少し不思議に思っている。たとえば、セレンが話し上手・聞き上手を発揮すれば、その場の一同に彼の価値を認めさせることができるだろう、が、必ずしもそうしているわけでもなくて、むしろ、単にフィリシアに静かに付き添い、何も聞こえませんというふうに、澄まして微笑んでいることのほうが多いのだ。

 それで、あるとき、フィリシアは尋ねてみることにした。少し大きな館のバルコニーで、ふたり、夜空にかかった三日月を眺めながら。
「ねえ、セレンは、いやではないの? さっきも嫌味を言われていたでしょう」
「髪のことなら慣れているし、線が細く見えるのも本当のことだし」
と、フィリシアの予期したとおりにセレンは答えて、月と同じ色の髪をかきあげながら、にこ、と笑った。
「そう言う君は不服そうだね、優しいフィリシア」
「不服というか・・・悲しいし、腹が立つわ。あなたは、そう感じないの? 慣れたから?」
「ふふ、はっきり物を言うお姫さまだね」
 セレンは、くすくすと笑ったが、どうやら少し気が向いて、丁寧に答えてくれる気になったようだった。
「ええとね。子供の頃、気になって、フルートに相談したことがあるんだ」
「相談?」
「そう。髪が長いという、ただそれだけの理由であれこれ言われるのは不愉快だから、切ろうと思うのだけれど、フルートはどう思うかって」
「・・・それで切るのも、何だか癪にさわるわ」
「ふふ、そうだね。そうでなければ、ぼくも、相談などせずに切ってしまっていたかもしれないけれど。それでね、フルートが言うことには、彼はぼくの、この綺麗な長い髪がとても気に入っているのに、『友達のぼくが言うことより、悪口を言う奴らの言うことを気にするなんて、セレンはどちらが大切なんだ』と言うんだ」
「・・・」
「ね、フィリシア。君も、ぼくの髪を褒めてくれたことがあったよね」
「ええ。キラキラして、さらさらして、とても綺麗だもの!」
「うん。そうしたらね、君と一緒にいるとき、誰かがぼくの髪のことを悪く言っても、ぼくは、そいつよりも、君のことが大事だから。君が褒めてくれた髪だから、悪口なんて気にしない。わかる?」
「・・・ええ」
「そういうこと。さあ、広間に戻って、踊りませんか、お姫さま」

(完)

創作のような、 こぼれ話のような。

始まりの物語(トーナメント参加用)

 あるとき、大陸の北東に位置するイルエンという国に、二人の姫君がいた。
 二人はいとこ同士で、北方特有の美しい青い髪と青い目をしており、顔かたちや雰囲気が良く似ていたので、周りの人々はしばしば二人を取り違えることがあった。また、二人のほうもそれを承知していて、わざとお互いに似せて楽しんでいるふうなところがあった。姫君たちは、年上のほうがアイリーン、年下のほうがマデリーンという名前だった。

 その頃、悪しき魔女がイルエンを訪れた。魔女は高い山の上に居を構え、国王を脅した。王家の財と、アイリーン姫、マデリーン姫を差し出さねば、国民をみな石に変えるというのだった。国王は、国で一番力のある、魔法使いと、月の聖者と、太陽の聖者を呼んで対抗しようとしたが、魔女の力は強大で、抗いようがなかった。かろうじて、魔女の魔法を退けることのできる盾が二枚用意できただけで、誰かがこの盾を持って魔女を倒しに行かなければならなかった。

 ところで、魔女が二人の姫君を望んだのは、自らの予言の力によって、二人のうちのどちらかが自分を滅ぼすと知り、己の手でこの姫君たちを葬ろうと決意したからだった。また、その予言は、国王側の術者たちにも知りうるものだったので、二人の姫君は予言どおりに魔女を倒しに行かなければならなくなった。しかし、どのようにすれば魔女を倒せるのかはわからなかったうえ、魔法を防ぐ盾は重すぎて姫君たちには使えなかった。

 ちょうどこのとき、内陸のふたつの国、リーデベルクとクルシュタインの王子は、それぞれ花嫁を見つけるべく、共に旅をしてイルエンにたどり着いたところだった。二人の王子は、アイリーンとマデリーンを正しく見分けることができ、リーデベルクの王子はアイリーンと、クルシュタインの王子はマデリーンと、それぞれ将来を誓いあった。二人の王子は、二枚の盾を持って、姫君たちとともに魔女を倒しに行くことにした。

 王子たちと魔女との間に、熾烈な戦いが繰り広げられた。だが、魔法を防ぐ盾が役に立った。石の魔法も、火の魔法も、雷の魔法も、王子たちを傷つけることはなかった。ついに、王子たちは魔女の首を胴から切り離し、勝利を収めた。予言とは異なる結末だったが、みな安心し、その場を離れて、疲れ切った体をしばし休めた。

 ひとり、マデリーンだけが、不安を覚え、勇気を振り絞って、魔女の首の転がっているところまで戻って行った。すると、どうだろう、魔女の首はぶつぶつと呪文を唱えている最中だった! マデリーンは悲鳴をあげて、魔女の首を、近くを流れている小川に押し込んだ。魔女は小川の中で、カッと目を見開いてマデリーンを見つめた。
「おまえだったのか。おまえが私を滅ぼす娘だったのか。おまえは・・・」
 マデリーンは、とっさに機転を利かせて、肩越しに振り返って叫んだ。
「こっちに来ちゃだめよ、マデリーン!」
「おまえは・・・アイリーンだね」
 魔女はにたっと笑った。
「おまえの現在ではなく、未来を呪ってやろう、アイリーン。おまえには子は生まれない。もし生まれたとしても、すぐに死ぬる。もし生き延びたとしても、年頃になったとき、自分の国の自分の城で、気がふれて、やっぱり死ぬるだろう」
 そして、魔女はごぼごぼと水を飲んで溺れ、今度こそ滅んだ。

 他の三人が駆けつけて来たとき、マデリーンは小川のほとりで泣いていた。彼女はクルシュタインの王子を愛していたし、その花嫁になる資格がなくなったような気がしたからだ。アイリーンも話を聞いて顔を曇らせた。もしかしたら魔女の呪いは、名を呼ばれたアイリーンにかかっているかもしれなかったからだ。

 一行はともかく山を下りて、国王に報告をした。国王は魔女の滅んだことを喜ぶとともに、二人の姫君のことを心配し、呼び集めた魔法使いと、月の聖者と、太陽の聖者とに、呪いのかかり具合を調べるように命じた。二人の姫君は呪いの影響の少ないことを祈った。
 やがて結論が出ると、代表して魔法使いの老婆が報告をおこなった。
「申し上げます。魔女の呪いはお二方にかかっておりますが、名前を取り違えたせいで、だいぶ和らいでおります。
 まず、魔女の三つの呪いのうち、一つ目の、子が生まれない呪いは、アイリーン様にかかっております。が、和らげられておりますので、おひとりのお子を授かることはできましょう。そして、そのお子は健やかにお育ちになるでしょう。
 残りの二つの呪いは、マデリーン様の最初のお子にかかっております。
 二つ目の呪い、子が生まれてもすぐに死ぬる呪いは、和らげられておりますので、すぐに死ぬることはありますまい。ただ、代わりに、たいそう体が弱くてお生まれになるでしょう。よくよく気を付けてお育てにならなければなりません。
 最後の呪い、自分の国で気がふれて死ぬる呪いについてですが、これだけは、弱まることなく効力を発揮してしまいます。たとえお子が結婚して別の国に住まわれたとしても、今度はそこが、そのお子の「自分の国」。人間の国にいる限り、逃れることはできますまい。われらが知恵を絞って考えました結果、このようにするのはいかがでしょう。

 この三つ目の呪いは、お子の誕生日を契機として発動するものと見受けられます。われらは、これを事前に察知できるよう、ナイフを一本用意いたしました。お子が生まれましたら、このナイフにて、髪一筋を切り落としてくださいませ。その後、このナイフの刃が磨かれて泉のように清らかな間は、お子の身は安全でございます。しかし、このナイフの刃が血に濡れたように赤く染まりましたなら、次の誕生日を迎えさせる前に、必ずお子を国から出して、聖泉<真実の鏡>を目指させるのです。そして誕生日を迎えてから<真実の鏡>を覗けば、呪いは目に見える形で立ち現れることになりましょう。蛇か、鎖か、鍵か。いずれにしても、その呪いを滅ぼせば、お子は自由の身となりましょう」
 姫君たちは魔法使いたちに礼を言って、マデリーンはナイフを受け取った。アイリーンはマデリーンに、
「あなたの子が聖泉を目指すときには、私の子も一緒よ」
と約束した。マデリーンは力づけられ、ありがとうと微笑んだ。
 かくして、リーデベルクの王子はアイリーンを、クルシュタインの王子はマデリーンを、それぞれ伴って祖国に帰り、華々しい結婚式がとりおこなわれた。

 1年後、アイリーンは男の子を出産した。予言通り、健やかな王子だった。
 さらに1年後、マデリーンは女の子を出産した。予言通り、病弱な王女だった、が、数年後に妖精たちの助力を得、健やかに育つこととなった。マデリーンは毎晩、王女の髪を切ったナイフを眺めては、刃が泉のように清らかなのを見てほっとするのだった。

 そして月日は流れ、ある晩ナイフは血のように赤くなり、王子と王女は旅に出ることになる――。

(完)

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進捗状況報告(2016/01/08)

更新が途切れ途切れで申し訳ありません。
脈絡なく断片が浮かぶばかりで、なかなかお話がまとまらないでいます。

断片というのは、たとえば、
フルートがコインを投げあげながら誰かと話しているけど、相手はフィリシアかな、ゼラルドかな。
とか。

フィリシアがおやつを食べているけど、前後の流れがさっぱり…?
食べているのは、半分に割った丸い果物で、柔らかくてスプーンですくえて、甘いよ。
とか。

長い爪をした魔女が、おそろしげな表情で話しているのは、あれは、たぶん…、
でも、まだ書くには時期尚早ではないかしら。
とか。

今年の目標は、去年達成できなかった「みんなが旅に出るときのお話を書く」こととするので、そちらも進めたいのですが、集中できずにいます。

うーん。
こんなときには、かえって創作以外のことをいろいろ楽しんだほうが、まとまって来るように思います。
のんびり取り組ませていただきます。もうしばらく、お待ちくださいね。

本年もよろしくお願いいたします♪

新年早々、工作をしています。
なぎさんの作ってくださったオリジナルに敬意を表して、オリジナルより少し小さいサイズで、フィリシアの栞を作成中。簡単ですが裏面も作ったよ。
あとは、穴を開けてリボンを通せば出来上がり。
(写真左上が、いただいたオリジナルです。)

Photo

でもねえ、ほんとに私、不器用なのです…。
100円ショップのラミネートコーティングフィルムで、試行錯誤しながら何枚も作ったのですけど、空気が入っちゃったり、ホコリが入っちゃったり、指紋が付いちゃったりして、どれを見ても、どこか失敗していますsweat02
いつかお手に取ってくださる方が、「なんかこれ、失敗してるみたい…」と思われることがあったら、ごめんなさい、比較的良くできたほうのをお送りしているはず!なので、大目に見てやってくださいませsweat02
こういう作業をしていると、ラミネーターの機械が欲しくなっちゃうなー。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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