2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

ひとこと通信欄

  • (2017/10/15夜)ご心配おかけして申し訳ありません。疲れて色々おっくうになっていますが、ごはんと睡眠はちゃんとしていますので、ご安心ください。

ランキング参加中!

  • 記事がお気に召したらクリックしていただけると、作者の励みになります。(1日1回まで)

    (投票せずに順位を確認したい方はこちらから。)

読者アンケート実施中♪

  • 所要時間は5分くらい?
    個人情報の入力はありません。
    よろしくお願いいたします。
    こちらから。

SF「夜景都市」(未完)

最近のトラックバック

プロフィール

  • 城

    雪村月路
    snow.moon.rainbow☆gmail.com
    (☆を@に変えてください)
    Twitter: @ariadne_maze
    ブログ更新量について
    愛読書100冊

    うちの子同盟 うちの子同盟

無料ブログはココログ

« 進捗状況報告(2016/01/08) | トップページ | こぼれ話:「気にしない」 »

始まりの物語(トーナメント参加用)

 あるとき、大陸の北東に位置するイルエンという国に、二人の姫君がいた。
 二人はいとこ同士で、北方特有の美しい青い髪と青い目をしており、顔かたちや雰囲気が良く似ていたので、周りの人々はしばしば二人を取り違えることがあった。また、二人のほうもそれを承知していて、わざとお互いに似せて楽しんでいるふうなところがあった。姫君たちは、年上のほうがアイリーン、年下のほうがマデリーンという名前だった。

 その頃、悪しき魔女がイルエンを訪れた。魔女は高い山の上に居を構え、国王を脅した。王家の財と、アイリーン姫、マデリーン姫を差し出さねば、国民をみな石に変えるというのだった。国王は、国で一番力のある、魔法使いと、月の聖者と、太陽の聖者を呼んで対抗しようとしたが、魔女の力は強大で、抗いようがなかった。かろうじて、魔女の魔法を退けることのできる盾が二枚用意できただけで、誰かがこの盾を持って魔女を倒しに行かなければならなかった。

 ところで、魔女が二人の姫君を望んだのは、自らの予言の力によって、二人のうちのどちらかが自分を滅ぼすと知り、己の手でこの姫君たちを葬ろうと決意したからだった。また、その予言は、国王側の術者たちにも知りうるものだったので、二人の姫君は予言どおりに魔女を倒しに行かなければならなくなった。しかし、どのようにすれば魔女を倒せるのかはわからなかったうえ、魔法を防ぐ盾は重すぎて姫君たちには使えなかった。

 ちょうどこのとき、内陸のふたつの国、リーデベルクとクルシュタインの王子は、それぞれ花嫁を見つけるべく、共に旅をしてイルエンにたどり着いたところだった。二人の王子は、アイリーンとマデリーンを正しく見分けることができ、リーデベルクの王子はアイリーンと、クルシュタインの王子はマデリーンと、それぞれ将来を誓いあった。二人の王子は、二枚の盾を持って、姫君たちとともに魔女を倒しに行くことにした。

 王子たちと魔女との間に、熾烈な戦いが繰り広げられた。だが、魔法を防ぐ盾が役に立った。石の魔法も、火の魔法も、雷の魔法も、王子たちを傷つけることはなかった。ついに、王子たちは魔女の首を胴から切り離し、勝利を収めた。予言とは異なる結末だったが、みな安心し、その場を離れて、疲れ切った体をしばし休めた。

 ひとり、マデリーンだけが、不安を覚え、勇気を振り絞って、魔女の首の転がっているところまで戻って行った。すると、どうだろう、魔女の首はぶつぶつと呪文を唱えている最中だった! マデリーンは悲鳴をあげて、魔女の首を、近くを流れている小川に押し込んだ。魔女は小川の中で、カッと目を見開いてマデリーンを見つめた。
「おまえだったのか。おまえが私を滅ぼす娘だったのか。おまえは・・・」
 マデリーンは、とっさに機転を利かせて、肩越しに振り返って叫んだ。
「こっちに来ちゃだめよ、マデリーン!」
「おまえは・・・アイリーンだね」
 魔女はにたっと笑った。
「おまえの現在ではなく、未来を呪ってやろう、アイリーン。おまえには子は生まれない。もし生まれたとしても、すぐに死ぬる。もし生き延びたとしても、年頃になったとき、自分の国の自分の城で、気がふれて、やっぱり死ぬるだろう」
 そして、魔女はごぼごぼと水を飲んで溺れ、今度こそ滅んだ。

 他の三人が駆けつけて来たとき、マデリーンは小川のほとりで泣いていた。彼女はクルシュタインの王子を愛していたし、その花嫁になる資格がなくなったような気がしたからだ。アイリーンも話を聞いて顔を曇らせた。もしかしたら魔女の呪いは、名を呼ばれたアイリーンにかかっているかもしれなかったからだ。

 一行はともかく山を下りて、国王に報告をした。国王は魔女の滅んだことを喜ぶとともに、二人の姫君のことを心配し、呼び集めた魔法使いと、月の聖者と、太陽の聖者とに、呪いのかかり具合を調べるように命じた。二人の姫君は呪いの影響の少ないことを祈った。
 やがて結論が出ると、代表して魔法使いの老婆が報告をおこなった。
「申し上げます。魔女の呪いはお二方にかかっておりますが、名前を取り違えたせいで、だいぶ和らいでおります。
 まず、魔女の三つの呪いのうち、一つ目の、子が生まれない呪いは、アイリーン様にかかっております。が、和らげられておりますので、おひとりのお子を授かることはできましょう。そして、そのお子は健やかにお育ちになるでしょう。
 残りの二つの呪いは、マデリーン様の最初のお子にかかっております。
 二つ目の呪い、子が生まれてもすぐに死ぬる呪いは、和らげられておりますので、すぐに死ぬることはありますまい。ただ、代わりに、たいそう体が弱くてお生まれになるでしょう。よくよく気を付けてお育てにならなければなりません。
 最後の呪い、自分の国で気がふれて死ぬる呪いについてですが、これだけは、弱まることなく効力を発揮してしまいます。たとえお子が結婚して別の国に住まわれたとしても、今度はそこが、そのお子の「自分の国」。人間の国にいる限り、逃れることはできますまい。われらが知恵を絞って考えました結果、このようにするのはいかがでしょう。

 この三つ目の呪いは、お子の誕生日を契機として発動するものと見受けられます。われらは、これを事前に察知できるよう、ナイフを一本用意いたしました。お子が生まれましたら、このナイフにて、髪一筋を切り落としてくださいませ。その後、このナイフの刃が磨かれて泉のように清らかな間は、お子の身は安全でございます。しかし、このナイフの刃が血に濡れたように赤く染まりましたなら、次の誕生日を迎えさせる前に、必ずお子を国から出して、聖泉<真実の鏡>を目指させるのです。そして誕生日を迎えてから<真実の鏡>を覗けば、呪いは目に見える形で立ち現れることになりましょう。蛇か、鎖か、鍵か。いずれにしても、その呪いを滅ぼせば、お子は自由の身となりましょう」
 姫君たちは魔法使いたちに礼を言って、マデリーンはナイフを受け取った。アイリーンはマデリーンに、
「あなたの子が聖泉を目指すときには、私の子も一緒よ」
と約束した。マデリーンは力づけられ、ありがとうと微笑んだ。
 かくして、リーデベルクの王子はアイリーンを、クルシュタインの王子はマデリーンを、それぞれ伴って祖国に帰り、華々しい結婚式がとりおこなわれた。

 1年後、アイリーンは男の子を出産した。予言通り、健やかな王子だった。
 さらに1年後、マデリーンは女の子を出産した。予言通り、病弱な王女だった、が、数年後に妖精たちの助力を得、健やかに育つこととなった。マデリーンは毎晩、王女の髪を切ったナイフを眺めては、刃が泉のように清らかなのを見てほっとするのだった。

 そして月日は流れ、ある晩ナイフは血のように赤くなり、王子と王女は旅に出ることになる――。

(完)

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

ブログ村 第12回 自作小説ブログトーナメントに参加しています。
約2,765文字。コメントはお気軽に♪

« 進捗状況報告(2016/01/08) | トップページ | こぼれ話:「気にしない」 »

コメント

こんにちは♪
コメントをありがとうございました♪
私も雪村さんの作品は読ませて頂いていますよ♪

私は、雪村さんの作品に童話やファンタジーというよりも、神話のような、まるで何処か遠い過去(或いは未来)の、遠い遠い国で実際に起こった事を綴ってあるかのような雰囲気を感じています。
それは、淡々と重ねる文体が「悠久」のイメージを紡ぎ出しているからだろうと思うのです。
当然ながら私の中にも響くものがあります♪

それでは、来月もまた、自作小説トーナメントでお会いしましょう~♪ (私は、変なものを書くかも知れませんが…w)

小奈鳩ユウさん、
コメントありがとうございます♪

ああ、メルヘンの要素を感じ取ってくださっているのですね。
読み手の方々に肉付けしてもらうべく差し出している、物語の「骨」と「空白」を。
そう思ってみると、私も小奈鳩さんの物語に「骨」と「空白」を感じている気がします…。

それと、小奈鳩さんほど柔軟に変化してはいませんが、私もトーナメントには、少しずつ色合いの異なるものを出品させていただいているんですよ。
トーナメントって、色とりどりなところが楽しくて、ついそういうことをしたくなる雰囲気があります。
はい、またお会いしましょう。お越しいただき、どうもありがとうございました☆
(あ、結果が出てる。優勝おめでとうございます!)

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568827/63035446

この記事へのトラックバック一覧です: 始まりの物語(トーナメント参加用):

« 進捗状況報告(2016/01/08) | トップページ | こぼれ話:「気にしない」 »