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ひとこと通信欄

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お姫様と猫(トーナメント参加用)

 大きくて賑やかな街の外れにある、小さくて静かな宿で、フィリシア姫はぼんやりと目覚めた。あまり体調がよくない。まだ眠いし、出かけることを考えると憂鬱だ。
 目覚める場所が城の自室でないことには、もうだいぶ慣れた。旅の毎日も、わくわくして楽しい。でも、弱っている日には、少しだけ城が恋しくなる。こんな日は、自分の部屋で、静かに丸まっていたい・・・。
 それでも、彼女は心を奮い立たせて、起きて、部屋の窓を開けた。すがすがしい朝の陽射しを浴びると、ほのかに気持ちが明るくなった。できるだけ頑張ろう。ただ、旅の仲間たちには、今日はあまり移動しないように、お願いしてみよう。
 波打つ青い髪を丁寧に梳き、いつもよりゆっくりと身支度をして、ドアを開けて部屋の外に出てみると、廊下には、月色の髪をした若者が立っていた。フィリシアを見て、セレンは、にこ、と笑った。
「おはよう、お姫様」
「おはようございます、セレン。もしかして、私を待っていらしたの?」
「そう。確かめようと思って。君は今日、本当は出かけたくないよね?」
「えっ」
 フィリシアはびっくりした。それから、ためらいがちに、うなずいた。
「ええ・・・その・・・そうなの。・・・どうして?」
「昨日から調子が悪そうだったから。女性との付き合いが多いせいで、なんとなく分かるんだ、そういうの。いやだったら、ごめんね」
 やさしい口調で、さらっと言われた。こんなふうなら、別に、いやではない。フィリシアがそう言って礼を述べると、セレンはほっとしたようだった。
「よかった。そうしたら、無頓着な王子様たちには、ぼくから話しておくよ。ゆっくり休んで。食事、いま持って来てあげる。そんな顔しないで、大丈夫だよ」
 ふんわり笑ってくれたセレンの言葉に甘え、フィリシアは部屋に引きこもることにした。
 運んでもらった食事は、ゆっくり食べた。あまり食欲はないけれど、食べておいたほうがいいだろう。パンと、ミルクと、シチューと、サラダ。ふと視線を感じて窓のほうを見ると、ひらいた窓のところに、きれいな白い猫がいて、金色の瞳でこちらを見ていた。
 フィリシアは、小さな声で「にゃおん」と呼びかけた。白い猫はフィリシアを見つめながら、可愛らしい声で「にゃおん」と返事をした。フィリシアは思わず微笑んだ。
「猫ちゃん、ミルク飲む?」
 コップに入っていたミルクを皿にあけて床に置き、顔を上げると、猫は窓枠からこちらを見たまま、「にゃあ」と言って、動かない。
「何か気に入らない? ごめんなさい、私、猫の言葉は話せないのよ」
 フィリシアが言うと、白い猫は、可愛らしい声で、
「あら、そうなの?」
と言った。窓枠から、しなやかに飛び降りて、ミルクの皿の前まで歩いて来た。
「それじゃ、私が人の言葉で話すわね。特別よ。ミルクはいただくわ。ありがと」
 おいしそうにミルクを飲む白い猫を、フィリシアはしげしげと眺めた。猫が流暢に人の言葉をしゃべったような気がしたが、夢でも見ているのだろうか。
 白い猫は、ミルクの皿を空にすると、満足そうに目を細めてグルグルと喉を鳴らした。フィリシアは、おそるおそる聞いた。
「どうして、人の言葉が喋れるの?」
「そりゃあ、人と一緒に長いこと暮らしているもの」
と、猫は何でもないことのように、
「あなただって、猫と一緒に長いこと暮らしたら、猫の言葉が話せるようになるわ。それと同じことよ」
 そうかしら?とフィリシアは考えてみたが、よくわからなかった。それで、
「人の言葉を話す猫に会ったのは、あなたが初めてよ」
と言ってみた。白い猫は前足を舐めながら、
「みんな、話せないふりをしているのよ。そのほうが、何かと都合がいいから」
「あなたが私と話してくれるのは、どうして?」
「ちゃんと猫の言葉で、こんにちは、って言ってくれたから。ミルクも分けてくれたし。あなたのような人を探していたの。実は――」
 言いかけて、猫は口を閉ざし、扉のほうを見た。トントンと控えめなノックの音がした。
「・・・フィリシア?」
 静かな声は、ゼラルドのものだ。フィリシアは、重い体を引きずって、ドアを開けた。
「休んでいるところを、すまない。妹が障りのときに飲んでいた薬があったから、渡しておく。少し眠くなるが、楽になるだろうと思う」
 黒髪の若者が、薬を一包みくれて立ち去ったあと、猫はフィリシアを見上げた。
「あなた、具合が悪いのね。そういえば、顔色が悪いわ。気付かなくて、ごめんなさい」
「大丈夫よ。何を言いかけていたの」
「その前に、薬、お飲みなさいな」
 猫の声が優しかったので、フィリシアは水差しの水で粉薬を飲んだ。猫は話を続けた。
「今日、何匹かの猫が、あなたを訪ねてやって来るわ。あなたが寝ていたら、起きるまで待つわ。あなたは、私に話しかけたのと同じように、一言、話しかけてあげてほしいの」
「同じように?・・・にゃおん。って?」
「そう! すばらしいわ。きっとよ。お願いね」
 白い猫は、嬉しそうに念を押し、ひらりと窓枠を跳び越えて、行ってしまった。フィリシアは、薬が効いて眠くなったので、ベッドに横になり、丸くなって、うとうとと眠った。
 ときどき目を覚ますと、部屋の中に猫がいて、床に座ってフィリシアを見ていた。猫は、黄色かったり、黒かったり、ぶちだったり、縞模様だったりしたが、そのたび、フィリシアは「にゃおん」と声をかけた。猫はみな、「にゃおん」と返事をしてから、はっとしたようにピンと耳を立てて、ひらりと窓枠を跳び越え、外に出て行くのだった。
 夕方頃、フィリシアが目覚めると、部屋には、あの白い猫がいて、金色の瞳でフィリシアを見つめていた。フィリシアが体を起こすと、猫なりに姿勢を正して、可愛らしい声で、
「どうもありがとう。必要なことは、全部済んだわ」
と言った。
「そうなの? お役に立てたなら良いのだけれど」
「すごく役に立ったわよ! それでね、きっと明日、あなたに来客があるわ。その人は何か私の話をするかもしれない。でも、私が人の言葉を喋れることは、内緒にしておいてね」
「わかったわ」
 フィリシアが頷くと、白い猫は笑って、窓枠を跳び越えて去って行った。
 翌朝。
 前日より体が楽になったので、食堂の朝食を食べに行くと、陽光色の髪をした王子がいた。
「フィリシア。もう、その、大丈夫なのか? すまない、ぼくは、まったく気づかなくて」
 ぎこちなく言われると、こちらも気まずいのに、と思いながら、
「ありがとう、フルート。昨日よりだいぶ良いのだけれど、もし叶うなら、もう少し――」
「もちろん! 体調が良くなるまで、ゆっくり休んでくれ」
 食事のあと、姫君が部屋に引っ込むと、じきに、セレンが呼びに来た。
「ごめんね、フィリシア。君を訪ねて、来客があるんだ。出られそう?」
「どのような方?」
「身分の高そうな美人が、宿泊中の『青い髪の姫君』に会いたい、と。心当たりはある?」
「少しだけ。着替えて行きます。お客さまに、お待ちいただいてください」
 フィリシアは、荷物の中から、おとなしい藍色のドレスを取り出して着替えた。宿の外に出て行くと、見るからに高貴な女性と、数人の従者がいて、皆が「おお」とどよめいた。
 フィリシアは、その人々に面識がなかったので、「はじめまして」と挨拶をした。高貴な女性、おそらくは異国の姫君も、挨拶を返した。
「はじめまして。でも、本当は、お会いするのは初めてではありません」
 異国の姫君は微笑んで、続けた。
「私たちは、ひと月ばかり前に、南の国から旅をして、この街を通りかかりました。街の入口で、白い猫に会い、従者が棒で追い払いました。祖国では、猫は災厄を招くと言われていたので・・・。猫は、何かニャーニャーと遠くから鳴きたててから去って行きました。気が付くと、私たちは、自身が猫の姿になっていました。
 魔法を解くには、人間から、猫の言葉で『こんにちは』を言ってもらうことが必要でした。私たちにはそれが分かりましたが、人間の言葉を忘れ果て、誰にも伝えることができません。そうこうするうち、元は人であったことさえ、夢と思われるようになりました。
 そうしたら、きのう、あの白い猫が現れて、この宿に泊まっている青い髪の姫君を訪ねるようにと言うのです。私たちは、あなたの部屋を訪ね、あなたから猫の言葉で『こんにちは』をいただいて、自分たちが人であったことをはっきり思い出しました。
 おかげさまで、今朝の日の出とともに、みなが人間に戻ることができました。1人も欠けてはおりません。みな、あなたのおかげです。どうもありがとうございました」
 姫君と従者たちは、フィリシアに向かって、深々と頭を下げた。そして、ひと月の空白を取り戻すべく、急いで旅立っていった。

 数日後、フィリシア姫も、仲間たちとともに街を発った。
 街の門を出て、ふと振り返ると、門のところに白い猫が座っていた。フィリシアを見ると、ゆっくりまばたきして、「にゃあ」と鳴いた。
 フィリシアも、ゆっくりまばたきして、「にゃあ」と言った。フルートが驚いたようにフィリシアの視線を追い、フィリシアと猫を見比べながら、「知り合いか?」と真顔で言った。
「そうよ、知り合いなの」
 フィリシアが言ったのが聞こえたのだろうか、白い猫は笑ったようだった。
 そして、猫は、満足そうに、街の中へと戻って行った。

(完)

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第13回 自作小説ブログトーナメントに参加中です。約3,750字。
コメントはお気軽に♪

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コメント

第13回 自作小説トーナメント準優勝おめでとうございます。
あってなんだか、今回はネコとバレンタインの大会でしたね!
しかも、今回もすごくレベルの高い作品ばかりで、
とても勉強になりました。
いつものように、結果一覧にリンクを貼らせて頂きました。

またの、ご参加お待ちしております。

みんもっこすさん、
ご連絡ありがとうございます♪

今回は、小奈鳩さんと猫猫対決させていただけて楽しかったですhappy01
「トーナメントを、参加することで応援する」という気持ちは変わっておりませんので、
これからも、機会があれば参加させていただきます。
出品する人も、読んでくれる人も、もっともっと増えますようにclover

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