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聖者の護符(03)

 ふたりの若者が外に出ると、月明かりの下で、靄のような亡霊たち――としか思えないもの――は、遠巻きにしながら、ゆらゆらと飛び回った。その真ん中で、くっきりと白く浮かび上がっている亡者は、口のように見える虚ろな穴から、しゃがれた声を無理やり押し出すようにして、しゃべった。
「そ、れ、を・・・、よ・・・こ・・・せ・・・」
 ゼラルドは、軽く首をかしげて、尋ねた。
「寄越せとは、何をだ」
「見、え、ぬ・・・、が・・・、近、く・・・」
 亡者は、ほうっ、と息を吐き、のろのろと片手をあげて、ゼラルドを指さした。
「寄越さ、ぬ、なら・・・我、は、ルイー、ラ・・・この名、に、お、いて・・・命じ、る。・・・滅、ぼ、せ!」
 言い終えたとたん、まわりの靄めいた亡霊たちは、いっせいに飛び上がって、こちらに向かってきた!
 剣を抜こうとしたルークを、ゼラルドは手で制した。その口元には、妖しく冷ややかな微笑が浮かんでいた。
「名には、名を。我はゼラルド・ルインドゥーラ・ルーズヴェルン。この名において、汝らに命じる」
 黒髪の王子が片腕を動かすと、銀の腕輪が重なり合ってシャランと鳴った――と同時に、靄のような霊たちは、てんでに飛びかかろうとした形のまま、ぴたりと動きを止めた。まるで、時間と空間が、一枚の絵に凝り固まってしまったかのような光景だった。中央の亡者だけが、のろのろと伸び縮みして、かすれた声で呻いた。
「ルイン、ドゥー、ラ・・・」
 ゼラルドは、かまわずに淡々と続けた。
「死霊たちよ、聞け。汝らを絡め捕えた鎖は、すでに断ち切られた。汝らをこの地に縛るふるき主を討ち、あるべき場所へ帰れ」
 ゼラルドは、腕を伸ばして、白い亡者を指さした。止まっていた時間は再び動き出し、靄たちは、ねじれるようにして方向を変えると、亡者に向かって飛びかかって行った。
「お・・・お・・・お・・・!」
 幾多の靄が亡者のまわりに集い、渦を巻き、そして、どこへともなく飛び去った。曇りなく冴えかえった夜空の下、さっきまで白い亡者のいたところには、1体の骸骨が転がっていた。骸骨は、カタカタと歯を鳴らしてしゃべった。
「よこせ・・・、よこ、せ・・・、護、符・・・」
「護符。これに触れれば、汝が滅びるだろうに」
と、ゼラルドは言いながら、何を考えたものか、宿の軒先に吊るされていた護符をシャラシャラと取り外した。骸骨へと歩み寄り、突き付けた。
「これが、汝の望みか」
「お、お・・・」
 骸骨は、怯む様子を見せたが、ぶるぶると震えながら骨だけの腕を伸ばし、聖者の護符に触れた。そして、音もなく崩れた。
 骸骨であったものは、いまや、ひとつかみの灰だった。そして、その灰は、直後に吹いた風にさらわれて、散った。
 ひとり立つゼラルドの隣に、ルークが歩み寄った。
「たしかに、何の手助けもいらなかったな」
 ゼラルドは答えず、ただ、手の中の護符を見つめていた。

次回で畳みます。

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