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雨の日の窓辺で(01)

 どんよりとした灰色の空からは、昨日から止むことなく雨が降り続いている。
 静かな昼下がり。外に出かけるのを諦めた姫君は、滞在している宿の談話室に来てみたが、ほの暗い室内には、ほかに誰もいない。
 少しがっかりしながら、フィリシアは窓辺に歩み寄った。大きなガラス窓に打ち付ける水滴が、互いに合わさりながら落ちてゆくさまを、ぼんやりと眺めて、内側から指でなぞった。
 彼女にかけられた死の呪いは、すでに目覚めて、発動のきっかけを待っている。ひとりでいると、そのことを考えずにはいられない。解呪のために故国を離れ、こうして遠く旅の空の下にいるけれど、果たして本当に、世界の果てにあるという聖泉に辿り着けるものだろうか。辿り着いたとして本当に、呪いは解けるものなのだろうか。
 ふだんは胸の奥底に押し込めている不安が、ゆらゆらと立ち上る。
 雨、雨、雨。空が泣いている。私の代わりに泣いてくれている。優しい雨。

 誰かが入って来た音がして、フィリシアは、夢から覚めた気持ちで振り返った。
 月色の長い髪をした若者は、「やあ」と笑った。窓辺に歩み寄って来ながら、
「雨のカーテンを見ながら、何を物思いにふけっているの。いや、当ててみようか」
 姫君から少し離れたところに立ち、自分も窓の外を見やって、言った。
「きっと・・・あの空は、自分のために泣いてくれているみたいだ。と、思っていた?」
 青い髪の姫君は、どきりとして、目をぱちぱちさせた。
「どうしてわかるの」
 セレンは姫君のほうを見て、ふふ、と笑った。
「秘密。とはいえ、そういう歌もあるよね。クルシュタインでは歌わない?」
 小さな声で、歌を口ずさむ。
「雨の帳よ、あのひとの姿を隠さないで。雨の音よ、あのひとの声を遮らないで。でも本当は知っているの、雨がやんでも、あのひとはもう来ない。降っているのは私の涙、雨のような涙、涙のような雨・・・」
 フィリシアは微笑んだ。
「知らない歌だわ。でも、あなたの歌う声は、不思議な響きがして、とても素敵」
「すてき? 男とも女ともつかない歌声が?」
 セレンは苦笑して、肩をすくめる。フィリシアは少し驚きながら、
「そういう言い方もできるかもしれないけれど、思わず耳を澄ませて、ずっと聞いていたくなる声。男のひとも女のひとも聞き惚れると思うのに、そう言われたこと、ない?」
「そうか、お世辞だとばかり思っていたな。でも、君がそう言ってくれるなら、これからは信じることにするよ。ありがとう」
 それから二人は、知っている歌をいくつか挙げて、共通で知っている歌を一緒に口ずさんで、歌詞の違いなどを面白がった。フィリシアの憂鬱は、いくらか晴れた。機嫌のいいときのセレンは、いつも穏やかで優しくて、心の傷をそっと手当てしてくれる。一方で、彼の恋愛対象からは外されているらしいことを、本当なら女性として遺憾に思うべきなのかもしれなかったが、フィリシアはむしろ、心を許せる友人を得た気持ちがして、喜ばしく思っているのだった。

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