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雨の日の窓辺で(02)

 そうこうするうち、また誰か来た。窓際で二人が振り返ると、部屋の入口には金髪の王子が立っていた。不思議そうな顔をしていた。
「この雨では、そう遠くも見えないだろうに」
 そう言いながら、自分も窓に歩み寄った。セレンがさりげなく場所をあけたので、フルートは自然と、フィリシアとセレンの真ん中に立つことになり、窓の外を覗いた。
「雨に濡れる街並み、か」
 振り返り、二人を見比べて、にこりとした。
「二人とも楽しそうだ。何の話を?」
「歌を歌っていたの。雨の歌とか。同じ歌を歌っても、途中で歌詞が違うことがあるの」
 フィリシアが、笑顔で応じた。王子は片手を腰にあてて、「雨の歌」と言って考え、
「・・・願いはいつか叶うだろう、長い長い雨の」
と、歌の一節を口ずさんだ。フィリシアは、ぱっと表情を輝かせて、続きを一緒に歌った。
「雨の果てに、虹の橋がかかるように」
 フルートがフィリシアを見て、こちらも嬉しそうにしている――と見て、セレンはそっと窓辺を離れた。
「お茶を持って来るから。待っていて」
 言い置いて、部屋を出た。どこかで少し時間をつぶしてから、戻って来よう。

 宿の中を適当に歩き回っていると、ゼラルドに会った。黒髪の若者は、目も合わせずにすれ違おうとした途中で、気が変わったように立ち止まり、問いかけて来た。
「フルートはどこにいるだろうか」
「・・・談話室。でも、後にしてくれないか」
 ゼラルドは冷ややかな視線を投げて、無言で立ち去ろうとする。
「待てよ、ゼラルド」
と、セレンは呼び止めた。せっかく、惹かれ合っている鈍感な王子と王女を、ふたりきり並べて配置することに成功したのだから、いくらかは時間がほしい。
「今、ちょうど二人だけだから、そっとしておかないか。あとでお茶を持って行くとき、君のぶんも入れるから」
「ふたり?」
「フルートとフィリシア」
「・・・」
 ゼラルドは、底の知れない黒い瞳でセレンを見つめたあと、はたと理解したようで、
「・・・わかった」
 向きを変えて立ち去った。セレンは談話室の二人のことを思う。周りがこうして気を利かせても、あの二人のことだから、何の進展もないのだろうな。

 フルートとフィリシアは、ぽつぽつと歌を口ずさみながら、相手の歌う声に耳を傾けていた。胸がときめくほど美しい響きのする歌声を、いつまでも聞いていたいとお互いに思っており、相手が知っていそうな歌をあれこれと持ち出しては、歌ってもらおうとした。ほかに話したいことが、あるような、ないような。ときどき視線を合わせて、なんだか可笑しくて笑った。大切な旅の仲間と心が通じ合っている、と思った。
 やがて、セレンがお茶を持って戻って来た。ゼラルドも、地図を持ってやって来て、「明日は晴れる」のだと言う。みんなで地図をのぞきこんで、計画を立てた。
 そう、聖泉には、きっと辿り着けるだろう。死の呪いは、きっと解けるだろう。むしろ、目的を果たせば旅が終わってしまうことのほうが、ずっと悲しいだろうという予感がする、けれども。
 今は前に進もう。と、フィリシアは思う。
 明日は、晴れる。

(完)

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コメント

最後の「明日は、晴れる。」・・元気をいただきました。
ありがとうございます(=^・^=)✿

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

私も、うさパンさんから、いつも元気をいただいていますよ~。
ありがとうございます☆

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