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人魚の歌(04)

 それでは、やはり、歌われていたのは<光り姫>のことではなかったのだ。フィリシアは、残念に思いながらも得心し、会いたいひとに二度と会えない白い人魚に、自身の境遇を重ねた。まさかミルガレーテにもう二度と会えないなどということはないだろう――ないだろうけれども、不安で心が曇る。思えば、ミルガレーテと知り合った当初は、月が痩せゆく時期に入るたび、もう会えないのではないかと心配したものだ。大丈夫、月が満ちゆく時期にはまた会えるのだと、積み重なる経験が不安をぬぐってくれたけれど、では、いま会えないのは、なぜ。
「妹さんは、どのような方だったの」
「とても優しい子だった。薄紅色の鱗が、それはそれは綺麗だった。あの子の命が失われないように、私たちは手を尽くしたわ。でも、だめだったの・・・」
 人魚の瞳が翳った、ように見えた。その瞳でフィリシアをじっと見つめながら、続けた。
「ねえ。あなたも、会いたいひとに、会えずにいるのよね?」
「・・・ええ。そうなの」
 フィリシアは認めた。人魚は、迷うように言葉を重ねた。
「それなら、もし・・・、もし・・・、私が、あなたの探しているひとの居場所を知っていて、そこに案内できると言ったら、あなたは私と一緒に、来る?」
「えっ」
 フィリシアは息をのんだ。人魚は目を伏せて、さらに言った。
「すこし、準備が必要なの。決心がついたら、明日の晩、また、ここに来て。ただし、ほかの誰にも、私のことは言わないで。話されたら、魔法がきかなくなるから」
「・・・わかったわ。明日までに、心を決めておきます」
「では、また明日」
 人魚は体をひるがえし、岩から海に飛び込んで、いなくなった。

 翌日、フィリシアは、白い人魚の言ったことを一日考えていた。誰にも相談はできなかった。薄紅色の鱗をしていたという妹人魚のことにも、思いを馳せた。
 夜、みなが寝静まったころ、歌が聞こえ始めたので、フィリシアは荷物の中から取り出しておいた布の包みを持って、そっと館を抜け出して海岸に行った。白い人魚は、きのうと同じ場所で、同じように歌を歌っていた。
 青い髪の姫君を見ると、人魚は歌をやめた。気のせいか、昨日より沈んだ表情で口をひらいた。
「来てくれたのね。決心はついた?」
「これを受け取ってくださる?」
 フィリシアは、白い人魚に近づいて、布の包みを渡した。人魚はけげんそうに受け取って、包みをひらき、現れたものを見て、小さな声で「あっ」と言った。それは、ガラスでできた小さな人魚だった。

あと1回あります。

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