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目は口ほどに(01)

 久しぶりに大きな宿屋に泊まって、ふかふかのベッドで一晩ぐっすり眠り、翌朝目が覚めると、生き返ったような心持ちがした。さわやかな目覚めを喜びながら起き出した姫君は、ゆるく波打つ青い髪を丁寧にとかし、ゆっくり身支度を整えて、部屋を出た。
 朝食前にサロンに立ち寄ってみると、先客がいた。ここ数日、田舎道に飽いてご機嫌斜めだったセレンが、サロンに置かれているチェス盤の脇に立ち、上から盤面の状況を眺めている。こちらに気づいて顔を上げ、にこ、と笑ってくれた若者の、その身にまとう空気の優しさから、今朝はどうやら上機嫌だと知れた。ご自慢の長い月色の髪も、さらさらの、つやつやだ。
「おはよう、フィリシア。よく眠れた?」
「おはよう、セレン。ええ、とてもよく眠ったわ」
「街に戻ってくると、ほっとするよね。ゆっくり湯浴みして、やっと人心地ついたよ」
 二人は、チェス盤の置かれた卓を挟むようにして椅子に座った。セレンはにこにこと、
「君も今朝は、まぶしいくらい美しいね、フィリシア。今までに会ったどんなお姫様より、きらきらして、のびやかで、本当に魅力的なひとだ」
「ふふ、ありがとう。でも・・・」
 フィリシアは、きちんと両手を膝の上に重ねて、笑いながら言った。
「私は、王女であるという、ただそれだけの理由で、内実はともあれ、数限りない誉め言葉を浴びせられるの。だから、あなたにまで社交辞令を言われては、嬉しいよりも、寂しい気持ちのほうが強くなってしまうわ」
 もし、「お世辞で言ったのではないよ」と返せば、フィリシアは信用しないまま再び「ありがとう」と言い、それで一段落ついて話題は変わっていくだろう。と、セレンは理解しながら、実際には、こう言った。
「ふうん、どうして君は、ぼくがお世辞を言っていると思うの?」
 フィリシアは、すました顔で、
「言い慣れているようだし、ふだんのあなたの行動から察するに、きっと誰にでも同じことを言うのだろうと思うから」
「同じことを口にするのでも、本心から褒めているときと、そうでないときがある、とは思わないの? 君を賛美せずにいられない気持ちは、本当のものだよ」
 セレンの優しい緑の瞳が、フィリシアの青い瞳を、揺るぎなく真っすぐに覗き込む。姫君は、少し怯んだ。
「セレン。私たち、お友達でしょう。仲間をからかっても、良いことはないのよ」
「からかってなどいないよ。君はすばらしく素敵なひとだ。それを伝えたいだけ」
 見つめあったまま、セレンは優美に微笑む。フィリシアは、うっすら頬を染めた。
「・・・ありがとう」
 そのとき、部屋の戸が開いて、一拍置いて、鋭い声が飛んできた。
「セレン! そこで何をしている!」
 セレンもフィリシアも驚いて、背筋を伸ばして戸口を振り返った。
 戸口に立っていたのは金髪の王子で、咎めるような目つきで親友をにらんでいた。
「いや、叱られるようなことは何も・・・」
と、セレンが答えると、フルートは視線を横に滑らせ、心配そうにフィリシアに呼びかけた。
「フィリシア。セレンに何か言われたり触られたり、しなかったか」
「褒めてもらっただけよ」
 返事を聞いて、フルートは片眉をひそめた。
「もし口説かれたら、だまされるなよ、フィリー。セレンは平気で嘘をつく」
「嘘?」
 困惑気味のフィリシアに、フルートは言葉を探しながら答えた。
「どう言えばいいのか・・・、ほら、口の達者な者は言葉で嘘をつくだろう? 同じように、目が雄弁に語る者は、その視線で嘘をつく。言葉だけなら騙されなくても、視線に騙される者は多いのだと、今までそばで見て知っているから」
「・・・?」
 フィリシアは、不安そうにセレンのほうを見た。セレンは軽くため息をついて、フルートに向かって言った。
「フィリシア姫は、美しくて、のびやかで、とびぬけて魅力的な姫君だ。君は、それが嘘だと言いたいのか?」
「え、いや、それは・・・それは本当のことだが」
 フルートは、珍しくもごもごと言って、もう一度セレンを軽く睨んでから、話を変えた。
「まあいい。ともかく、君たちも食事がまだなら、一緒に行かないか」
「行きましょうよ、セレン」
 フィリシアが明るく呼びかけて、席を立つ。セレンは「そうだね」と苦笑して、自分も立ち上がり、――心の中でだけ、思ったのだった。
(目で嘘をつけることは、ばらさないで欲しかったのにな・・・)

(完)

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コメント

こんばんは。

目で嘘をつける・・・深いなあ・・・。

ふふふっ・・♪
短い中に3人の性格が出ていて
とても良かったです✿(=^・^=)

kayokoさん、
コメントありがとうございます♪

や、現実に、ちらほらいますからね、目で嘘をつけるひと。
なんかもう、これが嘘なら、騙されても仕方ないや…みたいな。
どうやらセレンには詐欺師の才能がありそうですcoldsweats01

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

本編として扱っていいのか、こぼれ話で拾ったほうがいいのか、ちょっと迷って、
でも、正式なお話として残したいと思ったので、本編扱いにしました。
物足りないかもしれないと心配していたので、楽しんでいただけたなら良かったですhappy01

目で嘘がつける人に騙されてみたい…と思ってしまう私は、きっと騙される側の人間なのでしょう。それにしても登場人物がみなさん魅力的ですよね!

水島郷さん、
コメントありがとうございます♪

大人には、「騙す自由」も「騙される自由」もありますものね。なんて、思いましたconfident
登場人物のみんなは作者の想像上の友人たちですが、物語の設定的に言えば、「民俗学者の雪村が、世界各地で拾い集めた伝承を読むうちに、共通する登場人物を見出したように思い、想像をふくらませて、連作として綴りなおしている」ような感じです。
お気に召していただけたなら嬉しいです!

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