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ひとこと通信欄

  • (2017/8/13朝)創作活動が進みません~。少しばかり夏休みをいただきます~。

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2016年10月

宝物:ハロウィーン(フィリシア) by なぎさん

なぎさんからハロウィーン絵をいただきました。目の保養…!lovely
いつもありがとうございますheart

ひとりで見るのが勿体ないので、大きく描いていただいたこちらの絵を、ブログに載せさせていただきます。携帯でパシャ。

Photo
着色は透明クレヨンとのこと。重ね塗りが楽しそうですshine
わーい、ハッピーハロウィーン!

次回の記事では、新作の予告を載せたいと思います☆

進捗状況報告(2016/10/26)

ミルガレーテの出て来るお話を書こうかな、と思っています。
彼女ひとりじゃなくて、誰かと組んでもらおうと思うけど、誰にしようか迷っています。
冬のお話になりそうな気がします、でも、ほっとするお話にしたいなあと思います。
そんな感じで、物語の探索中です。

今日の記事、もしかして、このブログの777個目の記事です・・・confident

ひとやすみ:世界樹の迷宮Vリアル謎解き迷宮ゲーム~冒険者ギルドの試練~

今日は、だんなさんと一緒に、謎解きイベントに行って来ました。
秋葉原のゲームセンターGiGOで開催中の、「世界樹の迷宮Vリアル謎解き迷宮ゲーム~冒険者ギルドの試練~」です。大阪でもやっているみたい。
公式サイトは→ こちら です。サイトには練習用の謎もあるので、興味のある方はどうぞ♪

チケットのお値段は、前売りで1,200円、当日で1,500円。
2階の受付で謎解きキットをもらって、各階を巡りながら、問題を解き進めます。
簡単な謎もあり、しばらく考える謎もあり、時間制限はありません。
店内には椅子もあるので、二人でゆっくり考えました。お互いに助け合いました!
クリア時間は、エピローグまで含めて約2時間。1問、QRコードからヒントを見ちゃった。
面白かったです♪

謎解き初心者~中級者が、2、3人で行くのにおすすめのイベントです。
3DSのゲーム「世界樹の迷宮V」を知らなくても、ちゃんと解けるようにできていますが、ゲームを知っているほうが、より楽しくて、ちょっぴり有利かも。
「世界樹の迷宮V」は丁寧に作られた良いゲームなので、3DSをお持ちの方は、ぜひこちらも。
自分で迷宮の地図を作りながら冒険する、というゲームなので、「地道にコツコツ」が得意な人には、特に向いていると思います。

以上、本日の「冒険」のご報告でした☆
(小説の新作については、まだご報告できる進捗がありませんので、また今度…coldsweats01

作者より:「目は口ほどに」

「目は口ほどに」に続く言葉は、「ものを云う」、もとい、「嘘をつく」なのでした。

「目で語る」についていえば、
 セレンは常時、目で語っていて、嘘もつける。
 フィリシアとミルガレーテは、常時、目で語っていて、嘘はつけない。
 フルートは、語っていることが多く、嘘はつけない代わり、自覚して「語らない」ことができる。
 ゼラルドは、仲間たちに比べると、あまり語らない。その自覚はない。
という感じ。

読者の皆様は、どのくらい、目で語ったり、語らなかったり、嘘をついたりするのかなあ…confident

目は口ほどに(01)

 久しぶりに大きな宿屋に泊まって、ふかふかのベッドで一晩ぐっすり眠り、翌朝目が覚めると、生き返ったような心持ちがした。さわやかな目覚めを喜びながら起き出した姫君は、ゆるく波打つ青い髪を丁寧にとかし、ゆっくり身支度を整えて、部屋を出た。
 朝食前にサロンに立ち寄ってみると、先客がいた。ここ数日、田舎道に飽いてご機嫌斜めだったセレンが、サロンに置かれているチェス盤の脇に立ち、上から盤面の状況を眺めている。こちらに気づいて顔を上げ、にこ、と笑ってくれた若者の、その身にまとう空気の優しさから、今朝はどうやら上機嫌だと知れた。ご自慢の長い月色の髪も、さらさらの、つやつやだ。
「おはよう、フィリシア。よく眠れた?」
「おはよう、セレン。ええ、とてもよく眠ったわ」
「街に戻ってくると、ほっとするよね。ゆっくり湯浴みして、やっと人心地ついたよ」
 二人は、チェス盤の置かれた卓を挟むようにして椅子に座った。セレンはにこにこと、
「君も今朝は、まぶしいくらい美しいね、フィリシア。今までに会ったどんなお姫様より、きらきらして、のびやかで、本当に魅力的なひとだ」
「ふふ、ありがとう。でも・・・」
 フィリシアは、きちんと両手を膝の上に重ねて、笑いながら言った。
「私は、王女であるという、ただそれだけの理由で、内実はともあれ、数限りない誉め言葉を浴びせられるの。だから、あなたにまで社交辞令を言われては、嬉しいよりも、寂しい気持ちのほうが強くなってしまうわ」
 もし、「お世辞で言ったのではないよ」と返せば、フィリシアは信用しないまま再び「ありがとう」と言い、それで一段落ついて話題は変わっていくだろう。と、セレンは理解しながら、実際には、こう言った。
「ふうん、どうして君は、ぼくがお世辞を言っていると思うの?」
 フィリシアは、すました顔で、
「言い慣れているようだし、ふだんのあなたの行動から察するに、きっと誰にでも同じことを言うのだろうと思うから」
「同じことを口にするのでも、本心から褒めているときと、そうでないときがある、とは思わないの? 君を賛美せずにいられない気持ちは、本当のものだよ」
 セレンの優しい緑の瞳が、フィリシアの青い瞳を、揺るぎなく真っすぐに覗き込む。姫君は、少し怯んだ。
「セレン。私たち、お友達でしょう。仲間をからかっても、良いことはないのよ」
「からかってなどいないよ。君はすばらしく素敵なひとだ。それを伝えたいだけ」
 見つめあったまま、セレンは優美に微笑む。フィリシアは、うっすら頬を染めた。
「・・・ありがとう」
 そのとき、部屋の戸が開いて、一拍置いて、鋭い声が飛んできた。
「セレン! そこで何をしている!」
 セレンもフィリシアも驚いて、背筋を伸ばして戸口を振り返った。
 戸口に立っていたのは金髪の王子で、咎めるような目つきで親友をにらんでいた。
「いや、叱られるようなことは何も・・・」
と、セレンが答えると、フルートは視線を横に滑らせ、心配そうにフィリシアに呼びかけた。
「フィリシア。セレンに何か言われたり触られたり、しなかったか」
「褒めてもらっただけよ」
 返事を聞いて、フルートは片眉をひそめた。
「もし口説かれたら、だまされるなよ、フィリー。セレンは平気で嘘をつく」
「嘘?」
 困惑気味のフィリシアに、フルートは言葉を探しながら答えた。
「どう言えばいいのか・・・、ほら、口の達者な者は言葉で嘘をつくだろう? 同じように、目が雄弁に語る者は、その視線で嘘をつく。言葉だけなら騙されなくても、視線に騙される者は多いのだと、今までそばで見て知っているから」
「・・・?」
 フィリシアは、不安そうにセレンのほうを見た。セレンは軽くため息をついて、フルートに向かって言った。
「フィリシア姫は、美しくて、のびやかで、とびぬけて魅力的な姫君だ。君は、それが嘘だと言いたいのか?」
「え、いや、それは・・・それは本当のことだが」
 フルートは、珍しくもごもごと言って、もう一度セレンを軽く睨んでから、話を変えた。
「まあいい。ともかく、君たちも食事がまだなら、一緒に行かないか」
「行きましょうよ、セレン」
 フィリシアが明るく呼びかけて、席を立つ。セレンは「そうだね」と苦笑して、自分も立ち上がり、――心の中でだけ、思ったのだった。
(目で嘘をつけることは、ばらさないで欲しかったのにな・・・)

(完)

予告:「目は口ほどに」

今日は休日出勤でしたが、思ったより早く家に帰れてうれしかった!

次のお話は、こねている最中ながら、多少まとまってきたので予告を出してみます。

日常系の、軽くて短いお話になります。

ぶっちゃけ、セレンとフィリシアとフルートが雑談するだけですcoldsweats01

こぼれ話のほうに持っていくことも考えたのですが、一応、ぎりぎり本編の扱いで。

おそらく全1回です。よろしくお願いいたします。

トーナメント結果:「笑わない娘」

仕事が急に忙しくなったので、今週はもう更新できないかも…bearing

ブログ村の自作小説トーナメントに出品していた「笑わない娘」は、優勝をいただきました。

投票参加人数が少なかったのが寂しいですが、うれしいです。

進捗状況報告(2016/10/08)

更新間隔、少し空いてしまいました。
ルークとセレンとフィアが雑談してる、短い軽いお話が書きたいなーと思いつつ。
まだ、まとまっていないので、もう少しお待ちください。

冊子配布アンケート は、「今までの方法でも、通販方式にしても、まあ大丈夫だよー」と言ってくださる方が多いです。ありがとうございます。
あとは私が心を決めて、表紙絵を描いてくださっているイラストレーターさんたちから許可をもらって来られれば、自家通販方式を試行するのに障害はないはずです。

***

話変わって、趣味の謎解きのこと。
今年も、「地下謎への招待状2016」が始まりました。東京メトロで謎を解くイベントです。
去年楽しかったので、今年も友達と行ってみようと思います。
時間制限がないから、謎解き初心者さんも安心して遊べますよ。
ご興味ある方は、お友達と一緒に、ぜひどうぞ。

以上、近況でした~♪

笑わない娘(トーナメント参加用)

 午後おそく、風雨はますます激しさを増した。これから夜にかけて、嵐になるだろう。
 仲間たちと待ち合わせる予定の街は、まだだいぶ先だ。無理して馬を急がせるより、今日はもう諦めて、少しでも早く、これ以上濡れずに休める場所を探した方がいい。
 そう判断して、若者は、そのあと最初に通りかかった村で、馬小屋を備えた家を選び、戸を叩いた。中から「はい」と、男の声がして、ガタガタと音がした後、扉が開く。
 セレンはマントのフードを上げて、丁重になりすぎないよう注意しながら、挨拶した。
「旅の者です。この天候で困っています。一晩、泊めてもらえないでしょうか」
 顔を出した中年男は、すらりと背の高い若者の身なりをじろじろと見たが、
「・・・この天気じゃあ、仕方ねえよな。いいぜ。馬を小屋に入れて、早く入んな」
と言ってくれた。

 暖炉が赤々と燃えている。そのすぐ脇では、栗色の髪を長く伸ばした娘がひとり、一心不乱に、何かを指で編んでいる。
「遠慮しないで、火のそばに寄って、服を乾かすといい。その子は、俺の姪っ子だ。ちょっと可哀想な子だから、そっとしておいてやってくれ」
「はい」
 セレンは暖炉に近づいたが、娘は顔も上げずに、ひたすら編みものを続けている。
 こんばんは、と、セレンがそっと声をかけても、反応はなかった。
 台所のほうに立って行った男が、大声で話しかけて来る。
「兄さん、何か食べるかい。たいしたものは無いが、今日はこんな天気だもんよ。とっとと飯を食って寝ちまうのがいいな」
「おかまいなく」
「遠慮は無しだ。兄さんの口に合うかどうかは分かんねえけど、俺が焼いたパン、食うか」
 男は、いくつかパンを盛ったカゴを運んで来てくれた。マントを脱いだセレンの、長い金色の髪を見て驚いたようだったが、特にそのことには触れず、カゴの中を指さして、
「おすすめはこれだ。はちみつを焼きこんである」
「ありがとう。いただきます」
 セレンは、甘い匂いのするパンを取った。男は続けて、編みものを続ける娘に向かい、
「おまえも、今日はもう、食って寝ちまいな、リジル」
 パンのカゴを差し出すと、娘は編みものを膝に置き、初めて顔を上げた。客には一瞥もくれないまま、こわばった表情で手を伸ばし、小さな黒いパンをひとつ取った。
「君は、はちみつパン、食べないの」
 セレンが尋ねても、何の反応もなかった。視線を落とし、パンを一気に食べ終えて、娘は編みものを大きなカゴに放り込み、大事そうに抱えて、二階への階段を上っていった。
「リジルは、俺の姪っ子でね。可哀想な子なんだ」
と、男が言った。可哀想な子。さっきもそう言った。どういう意味なのだろう。
 男は、さっきまでリジルが座っていた椅子にかけて、言葉をつないだ。
「俺の嫁さんと、あの子の両親は、5年前に流行り病で逝っちまってな。あっけなくてよ。あの子も俺も、しばらくは呆然として、腑抜けてた。だけど、残された者同士、一緒に暮らすことにしてさ、それは正解だった。近くに人がいると、やっぱり、こう、張り合いがあるよな。助け合って暮らすうち、俺たちは、どうにかこうにか立ち直ることができた。ときどき、ちょっとばかり落ち込むことはあったけども、その頃のリジルはまだ、普通に人と喋ってたし、たまには笑うこともあった。・・・って、なんで兄さんにこんなこと話すのか、兄さんには分からんだろうな。ちょっと喋りたい気分なんだ。良かったら、パン、もひとつどうだい。
 このあたりの、この季節はよ。毎年、一度か二度は、こんなふうに天気が荒れる。そのせいか、毎年、変わった客が訪ねて来てな。今年はあんた、ってわけだ。始まりは3年前だった。流しの吟遊詩人が、行き暮れて、うちに泊まった。話し上手だった。世話を焼いたリジルのことを、しきりに褒めてくれて、しまいには、リジルを讃える歌まで作ってくれた。いい声だった。二日ばかりして天気が落ち着くと旅だって行ったが、さらに二日ばかりすると、また戻って来た。リジルに惚れたと言ってよ。リジルのほうも、嬉しそうだったな。詩人は、ときどき街に出稼ぎに行きながら、この村で一年ばかり暮らした。最後には、村人総出で、家を一軒、建ててやった。二人のための家をな。
 だが、二人がいつ結婚しようかという段になって、今から2年前、やっぱり嵐の夜だった。馬車が立ち往生したといって、金持ちの未亡人がうちに泊まった。なぐさめにと詩人が歌を歌ったら、たんまりとお代をくれた。未亡人は、たいそう詩人を気に入って、遠くの街で一度舞台に立ってみないか、稼ぎは結婚資金にしたらいいだろうと勧めてくれた。詩人はその気になって、ひと月、出稼ぎに行くと言った。そして、約束のひと月を過ぎても帰って来なかった。ふた月たったとき、俺とリジルは、何日もかけて、はるばるその街まで出かけて行った。街ではその日、金持ちの結婚式があって、花婿と花嫁が、屋根のない馬車に乗って、街をぐるぐる回っていた。俺とリジルも見た。花嫁はあの未亡人で、花婿はあの詩人だった。詩人は、美しい花嫁のための歌を歌っていて、道端の俺たちには気付きもしなかった。俺たちは、とても惨めな気持ちで村に帰って来た。・・・すまんな、兄さん、変な話を聞かせて。もう少しだから、辛抱してくれ。
 街から帰ったリジルは、失意のどん底だった。それでも、話しかければ答えてくれたし、たまには無理して笑ってくれた。少しずつ傷が癒えたらいいと思って、俺は、腹の立つ詩人の話はもう、一言も口にしなかった。だが、今から1年前の嵐の夜のことだ。なんだか不吉な感じのする爺さんが、うちに泊まりに来た。何百歳かわからない、ひどく不気味な爺さんだった。とはいえ、嵐の中にほっぼりだすわけにもいかないから、一晩だけ泊めようと言って、俺が台所で食事の支度をしている間、爺さんは暖炉の前で、リジルと二人で何か話してた。で、俺が台所から戻ると、爺さんの姿は消えていて、リジルは真っ青な顔をして、立ち尽くしてた。その日からなんだ。あの子が一言も喋らなくなったのは」
 男は、言葉を切って、旅人のほうを見た。真面目な顔で、尋ねた。
「あんたは、あの子が編んでいる物を見たか?」
「いえ、ちらりとしか」
「そうか。材料はな、あの子が村はずれの墓地から草を刈って来るんだ。トゲがたくさんあるから、いつも指を怪我してる。そうして、喋ることも笑うこともなく、毎日ああして、ひたすら編み続けてるんだ。どうやら、もうすぐ編み終わりそうなんだがね、俺は、なんだか怖くてよ。あのときの気味悪い爺さんが、明日にでも再びやって来て、俺のかわいい姪っ子を、どこか恐ろしい所に連れて行っちまうような気がするんだ。
 なあ、兄さん。相談だ。あんたは剣も使えるようだからな。この嵐がやむまでの間だけでいい、何か悪いことが起こったら、俺の味方として、あの子を守ってもらえないか」
「・・・わかりました」
 セレンは戸惑いながら答えた。正直なところ、その不気味な爺さんとやらが再びやって来るかどうかについては懐疑的だったが、どのみち、嵐がやむまでは移動することも叶わないのだ。明日か明後日に嵐が過ぎ去るまでの間くらい、気休め程度でも、泊めてくれた家主の力になってやれたらいいと思う。
 セレンの返答を聞いて、男は表情をやわらげた。
「そうか、恩に着る。そういえば、まだ名前を聞いてなかったな。俺はジャンだ」
「セレンです」
「よろしく頼む、セレン。寝る部屋は、隣を使ってくれ。風の音がひどくて眠れないかもしれねえし、家もギシギシ言うけどよ、毎年のことだから、心配はいらないからな」

 吹き荒れる嵐は、翌朝になっても弱まることなく、ビュウビュウ、ドンドンと、窓や戸を打ち続けた。ジャンとリジルとセレンは、パンとスープの簡単な朝食をとり、そのあと、リジルは暖炉のそばで編みものを始めた。セレンは椅子をもうひとつ、暖炉の近くに持って行き、座って、リジルの様子を眺めた。栗色の髪をした娘の、華奢な手元をよく見れば、なるほど、ジャンがゆうべ言ったとおり、リジルの手指は傷だらけだった。
「何を編んでるんだい」
と、セレンは聞いてみたが、当然のように、答はなかった。
 セレンは、少しの間、考えた。故郷の都に女友達の多い彼は、このくらいの年の娘が、「何かを作る間、一言も喋らない」理由を、ひとつだけ思いつくことができた。1年も続けているとは驚きだけれども――
「ずいぶん大がかりな、おまじないだね」
 リジルの細い肩が、ぴくっと震えた。それでも手が止まることはなく、リジルは草を編み続けた。
 セレンは、編まれているものを観察した。ワンピースの袖部分を綴じ付けている、ように見える。目が詰まって、暗い緑色をした、リジルの指の血の染みたワンピース・・・。
「おまじないが大仕掛けなのは、それだけ大きな願いごとがあるからなんだろうね」
 セレンの言葉を、リジルは無視して、黙々と編みものを続けている。
「誰の服を編んでいるのか、当ててみせようか」
と、セレンは穏やかに続けた。
「きみの好きなひとの、奥さんになったひと。どう、合ってる?」
 リジルの手がびくりと跳ねて、編み目を落とした。急いで編み目を拾い直して、何事もなかったかのように編み続ける彼女の表情は、明らかに、一層こわばっていた。
「きっと君は、その女性を・・・呪っているんだ?」
 風の音も、雨の音も届かない、重たい沈黙が落ちた。
 リジルは無視して、ただ必死に、編んで、編んで、編んだ。
 セレンはリジルの傍らのカゴに目を移し、しばらくして、付け加えた。
「赤ん坊の服もあるのか。・・・その子供のことも、呪っているんだ?」
 リジルは無視した。編んで、編んで、編んだ。
 ジャンおじさんが、早く台所から戻って来て、この人の注意をそらしてくれればいいのに、と、リジルは思った。――いいえ。何を言われたって、負けたりしないわ。もうすぐ、あたしは編み終わる。もうすぐ、あの魔法使いが来る。1年間の約束を、あたしは守り抜いてみせる。あの女と、去年生まれたという赤ん坊を、呪い殺してみせる。それまで、どんなことを言われたって、絶対に、くじけたりしない。
 セレンの声は、飽くまでも、物柔らかだった。続く言葉は、こうだった。
「君の願いが、叶ったら、いいね」
 リジルは無視した。編んで、編んで、編んで・・・、はたと、手が止まった。今、何て?
 セレンは、ゆっくりと、優しく、繰り返した。
「君の願いが、叶ったら、いいね」
 頭の中で何度か言葉を反芻したあと、リジルは耳を疑って、思わず顔を上げ、初めて、この旅人の顔を正面から見つめることになった。目と目が合うと、若者は優美に笑った。
「不思議なの? でも、だって、君はとても一途だもの。早くに親を亡くして、けなげに生きて、ひたむきな恋をして。そして、とても頑張ってる。しゃべることも笑うこともなく1年を過ごすなんて、並大抵の決意ではないよね。いろいろ酷いことだって言われただろうに。君はその困難を乗り越えて、トゲだらけの草を編み続けて、もうすぐ、編み終わるんだろう? それなら、君だって、幸せになっていいはずだ。君の願いが叶うことを、ぼくも一緒に祈ろう。大丈夫、君ならきっと、思いを貫いて願いを叶えることができるよ」
 リジルは混乱した。若者は、リジルのそばに来て、床に膝をつき、リジルの傷だらけの両手の上に、自分の両手を重ねた。深い緑色をした瞳が、リジルを見上げた。
「ひとつだけ教えて、リジル。頷くだけでいい。その願いは、本当に、君を幸せにしてくれる?」
 リジルは、半ば茫然と、見つめ返した。あたしの幸せ・・・?
 あやうく、リジルは、声に出して答えてしまいそうになった。――あたしの幸せは、もう無くなってしまったの。もう、どこにも無いの。だから。
 セレンは、「静かに」という仕草をした。リジルははっとして、開きかけた口をつぐんだ。そう、一言も口をきいてはいけない。この人は本当に、あたしの味方をしてくれるんだ・・・。
 セレンは、労わるように言葉を継いだ。
「ごめんね、答えにくいことを訊いてしまって。いいんだ。君が、今日よりも明日、明日よりもあさってを、君の望むとおりの1日に変えていくことができるなら。ね?」
 微笑みかけてくれた、その優美な笑顔に思わず見とれながら、リジルは、夢でも見ているような気持ちになった。男のひとなのに、なんだか女神様のようだ、と思った。さらさらと流れ落ちる月色の髪。長い睫毛の下の、優しい緑の瞳。リジルの願いを、一緒に祈ろうと言ってくれた。でも、あたしの願いは。あたしの願いは・・・。
 リジルの瞳が揺れた。セレンは片手をあげ、乙女の柔らかな栗色の髪を撫でて、言った。
「かわいそうに」
 リジルは、はっとして大きく目を見開いた。心の奥で閉ざした扉に、何かが細くまっすぐに差し込まれていた。ゆらりと、目の前がかすんだ。どうして。だめ。だめだ。だって、あたしは・・・。
「泣いていいんだよ」
 そう言われて、気がついたときには、リジルの両の頬を、大粒の涙がぽろぽろと流れ落ちていた。喋らなくなってから、「かわいそう」だと何度も言われたけれど、こんなに素直に聞いたのは初めてだった。そうか、あたし、かわいそうだったんだ・・・。
 自分が「かわいそう」なことを受け入れたら、やっと気付いた。リジルは、編んでいた服から指を外した。その意図を察したかのように、セレンが立ち上がって、脇にどいた。リジルは、かがんで、この1年間大切に編み続けて来たものを、ぜんぶカゴから出し、まとめて、暖炉の火の中に放り込んだ。
 草の燃える匂いが広がった。リジルの1年間が焼けて行く。でも、そう、何が一番「かわいそう」かと言ったなら、なりふりかまわず他人の不幸を一心不乱に願い続けた、そのことが一番みじめだった。そんなことにも気づかない自分が、一番「かわいそう」だった。
「リジル。それで良かったの?」
「・・・ありがとう」
 乙女は、深々と頭を下げた。1年ぶりに発した声は、ひどく掠れていた。
「無理に喋らなくて大丈夫だよ。ああ、そうだ」
 セレンは台所に行って、はちみつの瓶を持ったジャンを連れて戻って来た。
「おまえ、喋れるようになったって、本当か?」
「ジャンおじさん」
「わっ」
「たくさん心配をかけて、ごめんなさい」
「・・・うん。うん、いいんだ。ほら、はちみつだぞ。のどにもいいだろう」
 その晩、リジルは夢を見た。夢の中で、あの不気味な魔法使いが家に入って来て、暖炉の灰をかき混ぜて嘆いたあと、出て行った。朝、リジルが目覚めると、嵐は止んでいた。

 窓をいっぱいに開け放って朝の空気を入れると、澄んで晴れわたった秋の空から、穏やかな陽光が室内に降り注いだ。つめたい風も入って来るが、前日まで嵐に降り込められていた者たちにとっては、ただただ、この光の明るさが懐かしい。
 ジャンが村の見回りから戻って来て、朝食になった。みんなで、はちみつパンを食べた。
「うまいだろう!」
と、ジャンが満足げに言うと、リジルは食べながら、静かに涙を流した。昨日から、リジルはよく泣いてジャンを慌てさせており、セレンはジャンに、あまり気にしないようにと助言していた。
「それで、あんたはどこまで行くんだって、セレン」
 ジャンに問われて、セレンは街の名を答えた。
「友人たちと待ち合わせているので、すぐに発ちます」
「そうか」
「女のひともいるの?」
と、リジルがそっと聞いた。なんとなく、聞いてみたかったのだ。
「二人いるよ」
「どちらかが、あなたの恋人なの?」
「違うよ。彼女は、ぼくなんかの手の届かない、高貴なお姫様だから・・・」
 セレンは微笑して、目を伏せた。片方に想いを寄せているのが明らかだった。
「へえ。あんたも相当、高貴な人のように見えるけどな、セレン」
「綺麗なひと?」
「うん」
 言ってから、セレンは気が付いたように目を上げて、リジルに笑いかけた。
「とても綺麗なひとだけれど、でも、君がもう少しふっくらしたら、君のほうが可愛らしいと思うよ」
「・・・適当なことを言ってるでしょ」
「本当だよ」
 セレンはにこにこしている。リジルは戸惑いながら、嘘に決まっている、と思ったが、嬉しかったし、なんだか可笑しかった。なぜか、また涙がこぼれた。
「・・・ありがとう」
「良かった」
と、セレンは言った。しみいるように優しい口調だった。
「やっと笑ってくれたね、リジル」
 ――そうして、若者は旅だっていった。彼の姿が見えなくなるまで、ジャンとリジルは、ずっとずっと、見送っていた。二人とも、涙ぐみながら、笑顔で。

(完)

第21回 自作小説ブログトーナメントに参加しています。約6,690字。
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