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ひとこと通信欄

  • (2017/10/15夜)ご心配おかけして申し訳ありません。疲れて色々おっくうになっていますが、ごはんと睡眠はちゃんとしていますので、ご安心ください。

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竜に乗って(トーナメント参加用)

 走りたがる愛馬を、望むとおりに走らせてやって、草原の真ん中を人馬一体、風になった気持ちで進みゆく。久しぶりに駆け抜けがいのある、広い広い草の海だ。
 とはいえ、どのような海にも、果てはある。緑の絨毯が尽きて岩地へと変わり始めるあたりで、白馬は速度をゆるめ、やがて止まった。
「気が済んだら、帰るぞ」
と、金髪の王子は、鞍の上から馬に声をかける。白馬はブルルと鼻を鳴らす。
 王子は、行く手にそびえ立つ岩山を見やった。
「皆の進路は、こちらを避けて正解だったな。あの岩山を登れる馬は、きっとおまえくらいだ」
 そう言ったとき、視線の先で、岩山の中腹から何か大きなものが飛び立つのが見えた。それは、内陸ではあまり見かけることのなかった生きもの。
「竜までいるのか」
 翼を広げた赤銅色の竜は、どうやら人を乗せているようだったが、羽ばたきながら、どんどんこちらに近づいてくる。
 白馬が神経質に足踏みするのを、どう、どう、と鎮めながら眺めていると、竜は白馬のすぐ横を、かすめるように飛び過ぎて行った。すれ違う一瞬、竜に乗っている若者と、馬上の王子の、視線が合った。
 すると、一度はすれ違ったものの、竜は方向を変え、舞い戻って来た。落ち着かなげな馬の隣に、向きをそろえてバサバサと着地してみれば、竜と馬の大きさは似通っており、乗り手の視線も自然にぶつかる高さだ。竜の乗り手は、栗色の髪をした若者で、こちらを強く見据えており、口をひらいた。
「おい、あんた」
「何だい」
「今、すれちがったとき、俺と目が合ったよな。そいで、俺がもし通りすがりに襲いかかったら、返り討ちにする気だったよな」
「すまない」
と言いながら、王子は――というより、身分を伏せて「ルーク」は――肩をすくめる。
 竜の乗り手は、いくらか慌てたようだった。
「ああ、いや、それを咎めようというわけじゃないんだ。ただ、よそから来た奴なのに、竜の飛ぶ速さを見切っていたから、ちょっとびっくりしてさ」
「ふうん?」
「それで、目がいいところを見込んで、頼んでみる気になった。いやなら断ってくれていいんだけどよ。実は、あの岩山で薬草を探してるんだが、いつも二人で組んでいる相棒がいなくて、難儀してるんだ。あんた、小一時間ばかり、手伝ってくれる気はないか」
「竜に乗せてもらえるなら、いいぜ」
と、ルークは、興味津々に青い瞳をきらめかせて、請け合った。
「ああ、乗せてやるよ。あんたさえ良ければ、1頭任せてやる」
「やった!」
 ルークの弾けるような笑顔につられて、竜の乗り手も笑いながら、念を押すように、
「ただ、その立派な白馬を繋いでおけそうな場所がないけどな。問題ないか?」
「馬を食らう竜でも住んでいない限り、自由に遊ばせておくさ」
「そんな大型竜はこの辺にいないが、繋がずに逃げられても、俺のせいにするなよ?」
「ああ」
 ルークの明るい青い瞳を、しっかりと見つめ返して、竜の乗り手はうなずいた。
「よし、きまりだ。俺はゴウタ」
「俺はルーク」
「よろしくな、ルーク! じゃ、ちょっとだけ待ってくれ」
 竜の首をさわって、一言二言、何か命じるような語気で話しかけると、赤銅色の竜は甲高い声で、ギイイ、と鳴いた。
 呼応するように。前方の岩山から、またしても飛び立ったものがあり、みるみるうちに近づいて来て、風を巻き起こすように着地したところを見れば、こちらは青銅色をした、同じくらいの大きさの竜なのだった。ゴウタは自分の竜からいったん下りて、背負い袋の中から予備の鞍を取り出し、青銅色の竜にしっかりと括り付けた。
「ほらよ、ルーク。乗ってみろよ」
 ルークは白馬から飛び降りて、おそれげなく竜に近づき、しげしげと眺め、竜の首の鱗など撫でてみてから、トンと地を蹴って飛び乗った。
「そう、それでいい。馬と同じさ」
 ゴウタは軽く言って、自分も竜の背に戻った。
「いくらかは言葉も通じるしな。右、左、上、下、進め、止まれ。簡単だろ? あとは、ともかく、落ちなければいいんだ」
「了解!」
 ルークは楽しそうだ。ゴウタは、はは、と笑った。
「じゃあ、出発だ!」
 ゴウタが竜の脇腹を軽く蹴ると、赤銅色の竜はバサリと翼を広げる。ルークも真似をして、二頭の竜は一緒に飛び立った。心なしか恨めしそうな顔で見上げる白馬に、ルークは「また、あとで」と声をかけた。赤銅色の竜が上昇すると、青銅色の竜も、後を追って上昇した。
「すごいな!」
と、ルークが声を弾ませる。
「ゴウタ、もしかして、宙返りは?」
 ゴウタは返事の代わりに、ひゅるる、と口笛を吹いた。赤銅色の竜はゴウタを乗せたままクルリと一回転した。へへ、と自慢げにルークを振り返ったゴウタは、ルークが同じように口笛を吹いたので、目を丸くした。青銅色の竜は、ルークを乗せたままクルリと一回転!
「おいおい、怖いものしらずだな!」
 ゴウタが呼びかけると、
「手本を見せてもらったのに、怖いはずがあるか」
と、ルークは朗らかに笑う。そんなに簡単なはずはないのだが、とゴウタは苦笑しながら、この頼もしい即席の助っ人に、本来の目的を思い出させることにする。
「さ、目的地に着くぞ! 白い花を探してくれ、ルーク」
 ゴウタが竜の速度を緩めると、ルークの竜もそれにならう。ゴツゴツした山肌に沿って、二頭の竜は、ゆっくりと回りを巡るように飛んだ。
「見つけたら?」
「竜を近くに止めて、花びらだけ採ってくれ。この季節にこの山で咲く白い花は、他にない。細くて小さくて見つけづらい花だが、よろし――」
「よし、下へ。そう、止まれ」
 ゴウタの話が最後まで終わらないうちに、ルークは竜を止めていた。青銅色の翼がバサバサとたたまれて、ルークは鞍に乗ったまま身を乗り出すように、見つけた白い花の花びらを採っている。ありあわせの布を出して包み、ゴウタのほうを見上げ、大声で、
「どれだけ必要なんだ?」
 尋ねて来るので、ゴウタのほうも叫び返す。
「10本分くらいだ。採りすぎないようにな!」
 聞いて、ルークは再び竜を飛び立たせ、少しずつ下に移動しながら、小刻みに竜を止めては、花を探しているようだ。
 ゴウタも1本見つけた。岩の影になる場所に、ひっそりと、山肌にへばりつくようにして咲いている、小さな白い花。よく効く熱さましの薬。竜から下りて花びらを採り、また竜の鞍に戻ったところに、ルークの竜が上がって来た。
「終わったぞ、ゴウタ」
「ええっ」
 耳を疑うゴウタに、ルークは不思議そうな顔をして、
「それとも俺、間違えたか? 確認してくれ」
 布の包みを放り投げて来るので、ゴウタは受け止めて、そっと中を覗いた。間違いない。小さな花びら、10本分。
「合ってる。すげえな、ルーク。じゃあ、せっかくだから、山の頂上に降りてみるか?」
「ああ!」
 二人は上昇し、山頂近くに竜を止めた。ルークは、竜を降りると頂上に駆け上がり、ぐるりを見渡して、ひゅうっと口笛を吹いた。嬉しそうに遠くを見て、指さした。
「海が見える!」
「ああ。たまに、あの海の上を飛ぶこともあるんだぜ」
「いいなあ!」
「何人かで隊を組んで、港に寄りながら、行き帰りでひと月くらいの旅をするんだ。今度、連れて行ってやろうか?」
 こぼれた言葉に、ゴウタは自分でびっくりした。ついさっき会ったばかりの余所者だぞ?
 ルークは、海に向けていた視線を、傍らのゴウタに移した。きらきらする目で、笑った。
「俺が二人いたら、一人は喜んで連れてってもらったな!」
「?」
「でも、俺は一人しかいないからさ。残念だ」
 二人は竜の背に戻り、飛び立った。翼を並べるようにして、ルークのいた草原に戻った。
「じゃあな、ルーク。おかげで助かった。ありがとな!」
「こっちこそ、すごく面白かった。ありがとう」
 ルークは竜を降り、青銅色の鱗を撫ぜてから、白馬の傍らへ。
 ゴウタと竜たちは飛び立って、やがてその後ろ姿は遠ざかり、見えなくなった。
 白馬はブルルと鼻を鳴らした。
「そうだな、帰ろう」
 そう言って、鞍に乗ったルークは、もはや「ルーク」ではない。
「すぐ戻ると言ったのに、遅くなった。セレンに叱られるぞ」
 笑いながら、金髪の王子は、愛馬の脇腹をトンと蹴って、草の海に馬を走らせる。
 旅の仲間たちのもとへと。

(完)

約3,300字。第22回 自作小説ブログトーナメントに参加しています。
よろしければ、ご感想をお聞かせいただけたら嬉しいです。

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コメント

またこちらをお借りして、
取り急ぎお礼まで☆彡

本日はまことにありがとうございました。
遠いところお越しくださりとてもうれしく、
お目にかかれ感激でした。

お土産までいただき、
ありがとうございました。

今後ますます
励んでまいりたいと思っています。

お疲れになったのではないでしょうか。

とても素敵なご夫妻。
ご主人様にもよろしくお伝えくださいませ。

雪村さんも今後も素敵な世界を
つむいでいってください☆

ホシノさん、
こちらこそ、お会いできて嬉しかったです!
思い描いていたとおりの優しいホシノさんに癒されましたheart04

「白い馬」、美しい原画を拝見できる機会があったことを幸せに思います。
お迎えされたレストランでも、きっと多くのお客様に愛されることでしょう。
手元のポストカード、うっとり眺めています。

お花の絵も、猫ちゃんの絵も、お人柄を映すように優しい、素敵な絵ばかりで。
これからも、どうぞのびやかにご活躍ください。
応援しています!

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