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忘れられた町(02)

「すぐ立ち去ることには賛成だが」
と、ゼラルドが、こちらも静かに意見を述べた。
「急ぐにしても、騒がずに、そっと通り抜けるほうがよいだろう。もし、これが何者かの術によるものなら、術者の気を引かないことが何よりも重要だろうと思う」
「君がそう言うなら、そうするさ」
 フルートがそう応じて、旅人たちは口をつぐみ、ざわざわと胸騒ぎを覚えながらも、ふだんと変わらない速さで、ポクポクと馬の歩を進めたのだった。

 しんと静まり返って動かない町のありさまは、まるで、人形の暮らす町のようだった。注意深く見ると、どうやら住人は皆、心配事を抱えながら家へと戻る途中で動けなくなってしまったらしく、深刻な顔をして玄関近くで彫像と化していることが多かった。
 屋根から飛び立った直後と思われる小鳥が、羽を広げたまま宙に浮いている光景にも出会った。動きを止められた鳥が、地に落ちずにいられるのはなぜだろう・・・。
 そうこうするうち、町の中心を通り抜けて、反対側に出た。そして、入ったときと似たようなアーチ型の門に辿り着いた。そこには一人の女性が立っていて、長いローブを羽織り、曲がりくねった杖を振り上げた姿で固まっていた。旅人たちは、おそるおそる女性の前を通り過ぎたが、特に何事も起こることはなく。全員無事に門を出て、道端の草が風に吹かれて揺れているのを見たとき、一行はようやく安心したのだった。
 セレンが、門のアーチを見上げて言った。
「こちらが正門で、森に面したほうが裏門だったのだね。町の名前も、これなら読み取れそうだ。ええと・・・メジ、テ、レニエ・・・ではなくて・・・メジテラニア?」
 そう口にしたとたん、風景が、ゆらりと揺らいだ。杖を持った女性が急に動いたので、旅人たちは驚いて身構えた。
 女性は門の中から、外にいる旅人たちを眺め、悲しそうな顔をして、言った。
「それでは、やはり、私たちは<最後の日>を避けることができないのですね。じきに<嘆きの姫>がやって来て、この地は虚無に溶けて消えるでしょう」
「どうしたら助けられる」
と、フルートが即座に返した。杖を持った女性は、首を振って、言った。
「私たちは、<嘆きの姫>をあざむくため、果てない時の狭間に身をひそめ、世界から忘れ去られることを選びました。でも、それで生きていると言えたのかどうか。いいえ、私たちは、さだめを受け入れることにします。たとえ底なしの虚無にのみこまれても、あなたがたが私たちを覚えていてくれるなら、そのほうが嬉しい」
 そのとき日が翳り、不自然に、ひどく暗くなった。杖の女性は、さびしそうに笑った。
「さようなら、旅のかた。お元気で」
 そして、旅人たちの見ている前で・・・彼女は灰色に染まり、輪郭がぼやけ、宙に溶けて霧散した。その背後では、町だった場所もまた、曖昧に滲み、色彩を失い、何もかもが暗い灰色に塗りつぶされた。
 再び陽光が射して暗灰色の霧を払ったとき、そこにもう、町の姿はなかった。剝き出しの、えぐれた地面が広がっているのみ。
「そんな。そんなことって・・・」
 フィリシアが、かすれた声をもらした。セレンも、まじまじと目前の光景を眺めて、言葉が出ない。
「ゼラルド」
と、フルートが呼びかけた。ゼラルドは、いくらか青ざめていたが、視線を返し、うなずいた。そう、この闇の滲みかた。<嘆きの姫>とは、<闇姫>のことではないのか・・・?
 一行は、しばらくそこに留まって、そこにあった町の運命を考えた。
 それから、静かに向きを変えて、旅を続けたのだった。

(完)

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