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冥婚騒動(03)

 老婆は、じろりとゼラルドをにらんだ。
「ほれ、婿殿だって、カチュアを好いてくれておる。カチュアは本当に美人で気立てが良くて、あたしの自慢の孫娘でね。亡くなったあと知人に祟っているのは、たださびしいだけなのさ。この結婚が成立すれば、霊障も収まって、みんなが幸せになる。あんたは邪魔しないで、ささ、とっとと出てっておくれ」
 老婆はゼラルドを押しやろうとした。ゼラルドは老婆をよけながら、ともかく呼びかけた。
「セレン、死霊を鎮めるのに君が人柱になることはない。こちら側に戻りたまえ」
 聞こえているのかいないのか、二つのぼんやりした人影は向き合っており、娘のほうが、長いリボンのようなものを手に持って、相手の腕に結び付けようとしている。
 多少の危険を冒しても、強引に介入せざるを得ないだろうか、とゼラルドが覚悟したとき、背後で部屋の戸が開いて、落ち着いた声がした。
「どうだい、様子は」
 入って来たのは、フルートだった。老婆はキイキイと悲鳴を上げて、両目を手で覆った。
「ひい、何をする。熱い。まぶしい。冥界とつないだ部屋に日光を入れる阿呆があるか!」
「日光?」
 金髪の王子は不思議そうに、煙に包まれた部屋と老婆とを見比べ、説明を求めるようにゼラルドに視線を移した。ゼラルドは、自分でもおかしいほど安堵しながら、助けを求めた。
「亡くなっている女性と、弱っているセレンとを、結婚させるための儀式だ。婿になれば亡者の世界へと連れ去られるようだが、セレンは言われるまま連れ去られようとしていて、埒が明かない。君から、あの愚か者を引き留めてくれないか」
 フルートは、澄んだ青い目でゼラルドを見つめ、にこ、と笑った。
「引き留めてくれたのか。ありがとう」
 返す言葉のないゼラルドから視線を外し、眠っているセレンのほうへ言った。
「セレン? 加減が悪くて弱気になるなら、ついていようか?」
 ゼラルドに見えている二つの人影は、フルートには見えていないようだ。だが、背の高い人影は、自分の腕に巻かれようとしたリボンをほどいた。そのリボンを、相手の娘の髪に結わえてから、溶けるように輪郭を崩し、細い優しげな炎に姿を変えたかと思うと、炎はすうっと揺れて、寝台で眠るセレンの体の中へと消えた。
 月色の髪の若者は、目を開けた。物憂げな視線で、フルートを見て、ゼラルドを見て、それから、おぼろげな輪郭の乙女のほうを見て、言った。
「カチュア。ひとりで行ける?」
 乙女の影は、うなずいた。向きを変え、部屋の隅へと向かって歩き、そのまま壁を通り抜けるようにして消えて行った。老婆が、驚いたように言った。
「カチュア? いいのかい? 行くのかい? だって、あんなに。あんなに・・・」
 セレンは、けだるげにフルートを見た。
「ひとりで休むから、この騒がしいお姉さんを連れて行ってくれる?」
「ああ」
と、フルートは答えた。二人の若者が老婆を連れて部屋を出て行ったあと、セレンはため息まじりに、
「かわいかったな、あの子・・・」
 つぶやいて、目を閉じて、眠りについた。

 夕方ごろ、階下に降りて来たセレンの表情が明るくなっていたので、フィリシアはほっとした。本当は、以前フィリシアが疲労で体調を崩したとき、セレンがあれこれ気を回してくれていたので、恩返しに看病をしたかったのだが、
「何もしなくていいさ。逆にセレンが気を遣うから」
 フルートからそう言われて、なるほどそれもそうかと思い、遠慮したのだった。
「セレン、気分はどう?」
「まあまあだよ、ありがとう。うっかり、見知らぬ女性と結婚しかけたけれど。聞いた?」
「聞いたわ。亡くなったひとと結婚することを、冥婚というのですってね」
と、姫君はうなずいて、目を伏せた。
「ふだんは連れ去られたりしないのだと・・・、セレンは優しいから見込まれたのね」
 近づいてきたフルートが、セレンのうしろから、頭をポンとはたいた。
「君は弱っていると惚れっぽくなるしな」
 少し離れたところから、ゼラルドも冷淡に言った。
「死霊の結婚相手に望まれるなど、愚か者の自業自得以外の何物でもないだろう」
 そして、彼らは別の場所に宿をとって移動し、あの痩せた老婆にはもう会うことがなかった。ただ、カチュアという孫娘の祟りについては、宿でも聞かされる機会があった。死後、様々な怪奇を引き起こして、知人、友人たちを悩ませていたらしい。
 乙女の霊が、素直に言うことを聞いて去ってくれたことを思うと、セレンは、
(たしかに、これも何かの縁ではあって、仲人の見立ても良かったのだろうな)
と、そんなふうに思った。そして、
(一緒に行けなくて、ごめんね)
と、ひとときを、乙女のために祈ったのだった。

(完)

長くなりましたが、年内に終わらせました!

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