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旅へ(08)

「せっかくお会いできたのですもの、何かお話しませんか」
と、フィリシアは、それでもなんとかして友好的な関係を築けないだろうかと話しかけたが、黒髪の若者は眉をひそめて、
「何かとは、何を」
と言って、迷惑そうな顔をする。どうやら、無理強いして会話を続けても嫌われるだけだ。というより、ぐしゃぐしゃに泣いたあとの顔で話しかけて、好感を持ってもらおうというほうが虫のいい話だったのだ。
「・・・ごめんなさい。何でもありません」
 フィリシアは、しょんぼりと言って、とぼとぼと近くの木の下へ退散した。ひとり、地面を見つめて所在なく立っているうちに、悲しく心細くなって、再び涙をこぼさずにはいられなかった。――旅を共にするひとたちと、最初からこんなに気持ちが擦れ違っているのに、本当にこの先長い道のりを越えて、大陸の果ての聖泉まで辿り着けるのだろうか。ほんのひととき一緒に過ごしたことがあるというだけで、フルートやセレンのことを親しい友達のように思っていたのも、自分の勘違いだったのではないだろうか。馬車も護衛も侍女も断って、私はなんと愚かだったのだろう・・・。
 すると、草を踏みしめて、ゼラルドが近寄ってきて、フィリシアの前に立った。どうしよう、何を言われるのだろうか、と、フィリシアが顔を上げると、黒髪の若者は、謎めいた黒い瞳でフィリシアを見つめ、冷ややかに言った。
「飲みものを入れる器があれば、出したまえ」
 言われたことが、よく飲み込めなかった。フィリシアは、その言葉を何度か心の中で繰り返してから、よくわからないまま、荷物から椀を取り出した。
「これでいいかしら・・・?」
 ゼラルドは黙って、どこかから取り出した小さな紙の包みを開け、中身を椀に入れた。黒っぽい粉だった。入れ終わると、もうひとつ取り出した小さな包みを開け、中身を椀に入れた。白っぽい粉だった。さらに、これもどこかから取り出した透明な細い棒で、椀の中をかきまぜた。不思議なことに、椀の中身は、みるみるうちに湯気の立つ液体になった。
「飲みたまえ」
と、ゼラルドが言った。フィリシアは、夢でも見ているように感じながら、おそるおそる椀を口元に近づけた。褐色の液体を、ふうふう冷まして一口飲むと、とても甘く、温かい。
「・・・おいしい」
 フィリシアが言うと、ゼラルドは無言でうなずいて、フィリシアから離れ、元の場所に立った。フィリシアは、ゆっくりと椀一杯を飲んだ。疲れた心身にしみわたる温もり。
「・・・ありがとう、ゼラルド」
 控えめに礼を言うと、黒髪の若者は、そっけなく答えた。
「落ち着いたなら、それでいい」
 そう言われて、フィリシアが気付くと、涙は止まっていた。

あとちょっと。

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コメント

とても神秘的な特別な飲み物に
感じます(*^-^*)
そっけない言葉とは違う
ゼラルドの優しさに
キュン。

ホシノさん、
コメントありがとうございます♪

ふふ、たぶんこれ、ココアっぽい飲みものだと思うんです。
ホットココアって、癒されますよねcafeheart04
ゼラルドは、意外と優しかったり面倒見が良かったりしますけど、彼自身はそのことに気づいていないのだろうな、と思います。キュンとしていただけて嬉しいです!

月路さん今日は〜。

ルークの不意打ちなチウ(๑˙❥˙๑)も
ゼルとのファーストコンタクトも意外続きでしたが
そうすると義妹との甘甘なファーストコンタクトは
かなり異例中の異例ですね…
この辺に版を重ねなかなか書き上がらなかった、試行錯誤の工夫の跡が創作に反映されてるのかなぁ?

母を亡くし、また父とは親密な関係を持てず
聖王家の血筋もあって、もともと孤独で孤高の気質に
更に義妹の嫉妬で他者と乖離の可哀想なコミュ障の
ゼルには、今回フィアとどう接して良いか分からなかったのかもしれませんね。

こういう役はセレンが適任だけど
ホットココアでほっと♡はグッジョブでしたw

お供をする姫の事。今回のハプニングについて
事前に聖札で占ったりしてたのかしてないのか?
サイドストーリー言及あるのか続きを楽しみにしています。

ではまた

とり3さん、
コメントありがとうございます♪

「月の娘」ってそんなに甘かったかしら、と思いましたが、まあ、ゼラルドにしては甘々と言えなくもない、かー。
「旅へ」については、ルークのあれもゼラルドのこれも、当初から決まっていた出来事なのですが、どのように語ればいいものか、長いこと書きあぐねていました。
どうにかこうにか、妥協できる程度には書けるようになって、これらのエピソードが日の目を見ることができて、良かったですconfidentpen

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