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ひとこと通信欄

  • (2017/9/20夜)元気が足りないまま、急に忙しくなってしまいました。続きの展開は決まってるのに、書く時間がなくて悲しい…。

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2017年7月

お祝いのお菓子(03)

 セレンは言葉を重ねてみる。
「でもフルート、君の誕生日を祝うためのお菓子だよ」
「少し、申し訳ないな。でも嬉しい」
 フルートは目を閉じたまま、ほのかに笑みを浮かべている。セレンはさらに言う。
「フィリシアが旅を終えてクルシュタインに帰ったら、ぼくたちは、お菓子をもらうどころか、ただ会って共に時を過ごすことすら、ままならなくなるね。さびしくなるだろうな」
「ああ」
 短く答えた声には、はっきりと翳。セレンはもう少し続けて、
「次に会えるのはフィリシアの結婚式で、相手はぼくたちの知らない男かもしれない」
「それは嫌だ」
と、強い語調で言ったフルートは、ぱちりと目を開けた。自分の口から出た言葉に、やや驚いたような、戸惑ったような顔をしており、歯切れ悪く、
「相手の人となりを知らずに、祝福できる自信がない・・・」
「知り合いならいいの? たとえば、もし、ぼくがフィリシアと」
「なんだって!」
 フルートは血相を変えて飛び起きた。怒鳴られる前に、セレンは慌てて、
「いや、何もしてない! 仮定の話だよ。本当だってば。なんにもしてないから」
「そうか。おどかすなよ」
 自分が勝手に驚いたくせに、フルートはそう言って、ほっと息をついた。複雑な表情で、
「先のことをあれこれ言っても仕方ないだろう」
 言ったあと、視線の向きを変え、気が付いて、
「噂をすれば」
「本当だ」
 青い髪の姫君が、台所を借りていた民家の戸口から出て来て、きょろきょろと周りを見回している。木陰で休んでいる若者たちを見つけると、いったん中に戻ってから、大きなバスケットを二つ提げて出て来た。どうやら、外で食べることにしたらしい。
「フルート、荷物を手伝ってあげたら」
「ああ」
 金髪の王子は、軽やかに立ち上がり、駆けて行く。
「・・・フィリシアの結婚相手が、自分以外の誰であっても納得できないのだ、と。気がついたかなあ」
 セレンがぼやくと、木の反対側で、ゼラルドが、
「気づいていないように思う」
 ぼそっと言った。
 そして、バスケットを持った二人がこちらに向かって来るので、その話は、そこまでになった。

延びています。あと1回。

お祝いのお菓子(02)

 さて、陽光色の髪をした王子様のほうはと言えば。盛夏には自分の誕生日が来る、ということなど、もちろん、きれいさっぱり忘れていた。したがって、いつものようにセレンとふたりで地図を見ながら予定を計画しているとき、さりげなく、こう指摘されることになった。
「その行程だと、君の誕生日は、一日中、移動日になりそうだね?」
「誕生日。そうだな。不都合か?」
 フルートは、思ってもみなかったことを言われて、そう聞き返した。セレンは微笑して、
「そういう日くらい、のんびりしようよ」
「農村しかないぞ」
「それでも。ただでさえ全体としては強行軍なのだし、毎日暑くてたまらないし。お姫様を休ませてあげない?」
「わかった」
 フルートは素直に了承した。いつもセレンは、行程が厳しいものになりすぎないように調整してくれている。フルートも、気にかけているつもりではあるのだが、時々うっかり、気がせいて、自分の体力を基準にしてしまうことがあり、反省しなければいけないと思う。
 かくして、王子様の誕生日の当日は、姫君の誕生日がそうだったのと同じように、のどかな農村で迎えることになった。気のいい村人たちは、寝泊りできる場所を快く貸してくれて、払った代金以上に牛乳も卵もたっぷり譲ってくれて、フィリシアが台所を使わせてほしいと頼んだときも、昼間のうちなら好きなだけ使っていいよと、笑顔で応じてくれた。フィリシアは張りきって、腕まくりした。
「お祝いにお菓子を作るわ。お昼に食べましょう。でも、作るところは覗かないでね」
 いたずらっぽく、きらきらと笑う姫君は、とても楽しそうだ。
「出来上がったら呼びに行くから、それまで遊んでいてね!」

 と、いうわけで、「遊んでいて」と言われた若者たちは、しばらく村はずれの空き地で剣の稽古などしていたものの、日が高く昇るにつれて暑くなったので、嫌になったセレンが、「こう太陽の照りつける日に鍛錬しても体を壊すだけだ」と強硬に主張して、じきに三人、大きな木の陰で思い思いにくつろぎつつ、ぽつぽつと会話を交わすことになった。
「フルート、君さ」
と、木の幹にもたれて座っているセレンが話しかける。
「うん?」
と、金髪の王子は、仰向けに寝そべって目を閉じたまま、先を促す。セレンは、さらさらと長い月色の髪を結わえ直しながら、
「どう思っているの。優しいお姫様が、君のためにお菓子を作ってくれることについて」
「みんなで食べるために、だろう。ぼくのためではないさ」
 フルートは淡々と指摘する。ゼラルドは木の反対側にもたれて、黙って聞いている。

続きます…。

お祝いのお菓子(01)

「ねえ、セレン?」
 青い髪の姫君が、何か言いたそうに近づいて来るのを見て、セレンは、あれ、と思った。というのも、近くに金髪の王子がいないのを確かめるように、周りを窺がいながら近づいて来るその様子が、セレンの知っている宮廷の花たちの、「王子殿下はどのような女性を好ましく思われるのでしょう」という質問を思い起こさせたからだ。あるいは城下に住む女の子たちの、「ルークって、どんな子が好み?」という、聞き飽きるくらい聞かされた台詞を。
 しかし、その手の話題に疎そうなフィリシアが、本当にそんなことを尋ねるだろうか。いや、もしも聞かれるようなことがあったら、フィリシアのためだけでなく、似た者同士の恋愛音痴な王子様のためにも、「君のようなひとに心惹かれると思うよ」と、直球で答えてあげるけれども。
 などと内心で思いつつ、セレンはいつもと同じ微笑みで、優しく応じた。
「どうしたの、フィリシア」
「あのね、フルートのいないうちに、内緒で聞かせて」
 姫君は、ひそひそと言う。セレンはうなずいて、
「いいよ、なんでも話してあげる。どんなこと?」
「あのね・・・私の記憶がまちがっていなければ、もうすぐフルートの誕生日だと思うの」
 フィリシアは、心もとなそうにセレンを見上げている。ああ、そういうことか。セレンが得心しながら、「そうだね」と肯定すると、フィリシアははにかんだ笑顔になった。
「それでね、何をあげたら喜んでもらえるか、助言をいただける? よく考えたら、私、年の近い男のひとに個人的な贈りものをしたことがなくて、見当もつかないの」
 それはフルートのために喜ばしい知らせだ、と思いつつ、セレンはにっこりと答える。
「君の唇がいいと思うよ」
 フィリシアは目を大きくして、うっすら赤くなった。
「もう、ふざけないで。私、まじめに聞いているのに」
「ふふ、ごめんね」
 まじめに答えたのだけれど。まあ仕方ないか。
「そうだね、前に焼いてくれたケーキはどう? 喜ぶと思うよ、彼」
「そう? それなら、何か特別な感じのケーキを・・・うーん、特別な・・・特別な・・・」
 フィリシアは、しばらく考えたあと、何かひらめいたのだろう、ぱあっと顔を輝かせた。
「いいことを思いついた!」
「いいことって?」
「あのね」
 言いかけて、はっとしたように、手で口をおさえた。きらきらする青い目で、
「ないしょ! ありがとう、セレン!」
 そう言って、ぱたぱたと駆けて行ってしまう。何を思いついたのだろう。セレンが行方を見ていると、ゼラルドのほうに駆け寄って行くようだ。ゼラルドには内緒にしないのか・・・。

予告:「お祝いのお菓子」 & ひとやすみ:京王線で謎解き

まず予告。
フルートの誕生日のお話を書きます。夏のお話なので、ちょうど季節にも合っています!
フィリシアの誕生日やゼラルドの誕生日のようなドラマは、残念ながら特にありません。
タイトルは「お祝いのお菓子」。あっさりした短いお話です。全2回かな。
あさって7/20にスタート予定です。ただ、最近、更新間隔が空いてしまっているので、1回目と2回目の間が空いてしまったらすみません。

***

そして、ひとやすみして、久しぶりに謎解きのお話。
7月5日から10月11日まで、東京都を走っている鉄道、「京王線」と「都営地下鉄」が連携し、「金田一少年の事件簿R」という謎解きを実施しています。公式ホームページは→ こちら
参加費は無料ですが、謎解きのためにあちこちの駅に行くので、運賃がかかります。
いくつかの謎が用意されていて、パンフレットとWebに掲載されているコミックを読みながら、順番に謎を解き進めて行く方式です。
最初のほうだけ、ちょこっとやりました。簡単でした、が、たぶん、だんだん難しくなるのでしょう。
一度にまとめて遊ぶと一日かかるのかもしれません。私は今回は、分割して、ちょこちょこ遊ぶつもりです。

今回のおやつは、こちらでした。苺のかき氷!

Photo

***

それでは、次回、久しぶりの冒険譚(というか冒険していないお話ですが)「お祝いのお菓子」でお会いしましょう~。

こぼれ話:軽佻浮薄(けいちょうふはく)

「訪問者」というお話の中で、ゼラルドはリーデベルクにやって来るわけですが、その後、ひと冬をセレンの家で過ごします。
ゼラルドにあてがわれていた、隣に寝室の付いた広い客室は、いつしか、フルートとセレンとゼラルドが集まって話をする場所になります。

ある日、三人で話しているとき、セレンが女性関係の浮ついた発言をしたことから、ゼラルドは母国語で、ぼそっと、
『これほど軽佻浮薄な人物が、いずれ王となる者のそばにいるのは不適切だ』
と言います。セレンは聞きとがめて、同じローレイン語で、
『そういう君が、十分に重厚謹厳であるとも見えないけれどね!』
と言い返し、さらに内陸語で、「わざとローレイン語で人をそしるなんて、馬鹿にしている」と、腹を立てます。
フルートは何のコメントもしませんが、セレンはフルートに向きなおり、いらいらと、
「君は、あとで辞書を引いておくこと! 軽佻浮薄! 重厚謹厳! ローレイン語で! 通じてなかっただろう!」
と指摘して、まもなく、その場はおひらきに。
あとからゼラルドは、部屋に置いてあった辞書を引いて、内陸語の「軽佻浮薄」「重厚謹厳」を調べ、「・・・合っている」と、独り言を言います。

つまり。
ゼラルドは、「軽佻浮薄」にあたる内陸語がわからなかったので、母国語を使った。
フルートは、「軽佻浮薄」「重厚謹厳」にあたるローレイン語がわからなかった。
セレン一人が、ローレイン語と内陸語の双方で、「軽佻浮薄」「重厚謹厳」を理解していた、というお話。

さらに言うと、ゼラルドはこのとき、部屋に置いてあった辞書をしげしげと眺めて、「誰かがこの客室に、気を利かせて辞書を備え付けてくれたのだ」という事実に気づきます。
その結果、どんなふうに思ったかは・・・さあ、どんなふうに思ったでしょうね。

宝物:なっちゃんのフィリシア姫♪

読者のなっちゃんから、フィリシア姫の絵をいただきました。
なっちゃんは、私の親戚の、中学生の女の子で、冒険譚を読んでくれています。
いつも応援ありがとうございますconfidentnotes

フィリシアの絵を2枚いただいて、お姫様ドレスの絵と、現代っ子バージョンの絵とあるのですが、スキャンしやすいサイズだったお姫様ドレスのほうをご紹介させてください。
こちらです!

Photo

気さくで優しい印象の笑顔と、ゆるやかウェーブの髪が、フィリシアらしくて素敵ですheart04
ピンクのドレスも、可愛くて、似あうように描いてもらえて嬉しいですshine
どうもありがとうございます!

***

最近、次に何を書こうかと考えるとき、なんだか解呪のお話のことばかり考えてしまいます。
書くべき時が来たのかなあと思いつつ…、でもまだ他のお話を丁寧に埋めていきたい気持ちもあって…、いずれにしても、なんとなく落ち着かない毎日で、うまく創作に取り組めないでいます。

そんなわけで、次回はたぶん、こぼれ話を書かせていただくと思います。
物語の進みが遅くなっていて申し訳ありませんが、お付き合いいただけたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

通販開始♪「火の鳥」

こぼれ話を書こうとしていたら、印刷所から上がってきました! 「火の鳥」!
早割を使って発注していたので、もっとゆっくりの納品だと思っていたのですが、早割の入稿締切日よりさらに早く入稿したぶん、早く届けてもらえたみたいです。嬉しい。

電子書籍サイトの「パブ―」さんが、お手軽だった印刷サービスをやめてしまったので、今回は「しまや出版さんにお願いしました。表紙の美麗さを損ないたくなかったので、奮発して、オフセット印刷でお願いしました。
原稿を作るとき、ひと手間かけて、表紙の周りに白い塗り残しが出ないようにしました。

箱を開けて感激! 美しい…!
もちろん、イラストレーターの池田優さんが手掛けてくださった表紙が美麗だからなのですが、ぴしっとして、すべすべで、綺麗な色で…!

私の下手な写真ではちょっとあれなのですが、1冊撮影。こんな感じです。
冊子の大きさは、いつもと同じA5版。

火の鳥

そして今回は、本文縦書きです。
表紙をちょろっとめくると、こんな感じ。
(写真ピンボケご容赦sweat02 実物は、くっきり、はっきりしています!)

本文

さっそく、自家通販ページに入庫しました。→ こちら です。
「インターネットで無料で読めるし、表紙も見られる」ことを踏まえた上で、「冊子も手元に置きたいな!」という方がいらっしゃったら、100円+送料でお申し込みください。
配送方法は、個人情報を伏せて注文できる「あんしんBOOTHパック(310円)」の他、郵便の「スマートレター(180円)」も使えるようにしましたので、商品を選ぶとき、よくご確認くださいね。
なお、近い将来に私と会う予定のある方は、私が持参しますから、お申込みは不要です。

品切れにならないように刷ったつもり! 綺麗に出来上がって、良かった!
とりいそぎ、ブログを読んでくださっている皆様に、最初にご報告させていただきましたshine
いつもご愛読ありがとうございますheart04

なお、「火の鳥」ってどんなお話だっけ、という方は → こちら へどうぞ♪

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