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こぼれ話:「鬼」「節分」

「鬼」という500字くらいの掌編を書いたことがあって、
冒険譚とは関係ない話のように思いつつ、どことなく主人公がセレンに似ているので、
迷ってそっとしておいたのですが。

先日の節分で、続きを思いついて、これも500字ほどのお話ですが、
「和風な雰囲気で読んだほうが、しっくり収まりそう」と思ったので、
やっぱり冒険譚とは関係ない話なんだ、と思いつつ、せっかくなのでここに置きます。

* * *

 

『鬼』

野宿は避けたいが、さて、人家は見つかるだろうか。と、心配していた若者は、暗くなった頃、一軒の明かりを見つけた。近づいてみると、平屋だが、大きな家だ。
若者は近くの木に馬をつないで、家の戸を叩いた。しばらくして、戸の向こうで、女性の細い声がした。
「どなた?」
「旅の者です。一晩、屋根を貸していただけませんか」
戸が開いた。美しい娘が、虚ろな瞳で若者を見て、言った。
「屋根。雨露をしのぐだけなら、入って、好きにしたらいいわ」
それだけ言って、ふらふらと中へ歩み去る。
ためらった後、中に入って、若者ははっとした。娘の向かう先に、一体の骨があった。見るからに古い骨。娘は骨の横にうずくまり、されこうべを抱えて丸くなり、動かなくなった。
若者は迷ったが、結局、部屋の端に毛布をひいて横になり、一晩を過ごした。あまり眠れなかった。

翌朝早く、若者は起き出して、そっと家を出た。背後から細い声が聞こえた。
「さようなら、旅の人」
「ありがとうございました」
礼を述べて去った若者は、道すがら考えた。美しい娘の額にあった二本の角と、あの骨について。

* * *

 

『節分』

朝から山に入っていたが、もう昼を過ぎた。諦めて帰らなければ。
だが、もう少しだけ。歩き出した足の先に、ひっそりと建つ屋敷が見えた。見つけた。

戸を叩けば、見覚えのある娘が姿を現す。若者は静かに言う。
「下の里の者たちが、節分の日、鬼を倒すために山を探すそうです。あなたのことでしょう」
「……」
娘は黙って、自分の額に生えている角をさわる。若者は頷く。
「一年前、僕は道に迷って、あなたに助けられた。今度は僕が助けたい。節分は明日。まず、ちゃんと食べて、そして逃げて」
背負った籠を下ろし、捕らえておいた狐を娘に差し出すと、娘は狐を受け取って口を開いた。
「逃げません。返り討ちにするわ」
「それは困る。僕は里にも恨みはないんです」

翌日、里の者たちが山奥で、鍬や鉈を振り上げながら屋敷の戸を叩くと、中から現れたのは人間の若者だった。
「騒がしいな。鬼? いいえ、僕の家だ」
里の者たちは首をひねりながら、安堵して山を下りて行った。
「もう来ないといいね。帰ります。元気で」
若者が去った後、娘は座敷で、愛しい古いされこうべを抱きしめて眠る。

* * *

 

それでは、また。
次回、いつ更新できるか分かりませんが、ゆるゆると気長にお待ちいただければ幸いです。

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コメント

こんにちは。
節分の時期にぴったりの読みやすい掌編ですねconfident
鬼の娘の雰囲気にヒヤリとする部分があるのに、
恩を忘れない若者にじんわりきました。
どこかの昔話のような、ほっこり温かくなるお話に感じましたconfident
この長さに綺麗にまとめられているのも素晴らしいなと思います。
次もまた楽しみにしています。

凩さん、
コメントありがとうございます♪

冒険譚シリーズには含まれないお話をどうするか迷ったのですが、「500字くらいの小さな読みもの」というところが私も気に入って、せっかくなので載せさせていただきました。
凩さんが楽しんでくださったようで、ほっとして、とても嬉しく思いますhappy01shine

寒い日が続いていますが、心はほっこり温かく過ごしたいものですね。
また気の向かれたときにお立ち寄りいただければ幸いです。
どうもありがとうございましたheart04

こんにちは。
読み始め、ちょっと怖くて、でも鬼の娘が抱えているしゃれこうべは
お父さんかお母さん、かなあ、なんて思ったりして。
鬼がでてくるお話は、泣いた赤鬼に思い入れが強くあって
なんとなく、鬼はいいヤツなのだと思ってしまうのでした。
また、おじゃまします。ゆるりとお書きくださいねhappy01

kayokoさん、
あたたかいコメントをありがとうございます!

彼女の抱えているしゃれこうべは、そうですね、誰のものなのでしょうね。
しゃれこうべがそこにあることによって、「一人だけど一人じゃない」のだと思います。
いつか、しゃれこうべではなく外の世界に、目を向ける日が来るのか、来ないのか…。

自由に想像を広げていただけたのなら嬉しいです。ありがとうございますconfidentclover

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