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  • (2018/02/06夜) 5月くらいまで、あまり更新できなさそうですが、できることをやりますー。

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カテゴリー「こぼれ話」の63件の記事

こぼれ話:「鬼」「節分」

「鬼」という500字くらいの掌編を書いたことがあって、
冒険譚とは関係ない話のように思いつつ、どことなく主人公がセレンに似ているので、
迷ってそっとしておいたのですが。

先日の節分で、続きを思いついて、これも500字ほどのお話ですが、
「和風な雰囲気で読んだほうが、しっくり収まりそう」と思ったので、
やっぱり冒険譚とは関係ない話なんだ、と思いつつ、せっかくなのでここに置きます。

* * *

 

『鬼』

野宿は避けたいが、さて、人家は見つかるだろうか。と、心配していた若者は、暗くなった頃、一軒の明かりを見つけた。近づいてみると、平屋だが、大きな家だ。
若者は近くの木に馬をつないで、家の戸を叩いた。しばらくして、戸の向こうで、女性の細い声がした。
「どなた?」
「旅の者です。一晩、屋根を貸していただけませんか」
戸が開いた。美しい娘が、虚ろな瞳で若者を見て、言った。
「屋根。雨露をしのぐだけなら、入って、好きにしたらいいわ」
それだけ言って、ふらふらと中へ歩み去る。
ためらった後、中に入って、若者ははっとした。娘の向かう先に、一体の骨があった。見るからに古い骨。娘は骨の横にうずくまり、されこうべを抱えて丸くなり、動かなくなった。
若者は迷ったが、結局、部屋の端に毛布をひいて横になり、一晩を過ごした。あまり眠れなかった。

翌朝早く、若者は起き出して、そっと家を出た。背後から細い声が聞こえた。
「さようなら、旅の人」
「ありがとうございました」
礼を述べて去った若者は、道すがら考えた。美しい娘の額にあった二本の角と、あの骨について。

* * *

 

『節分』

朝から山に入っていたが、もう昼を過ぎた。諦めて帰らなければ。
だが、もう少しだけ。歩き出した足の先に、ひっそりと建つ屋敷が見えた。見つけた。

戸を叩けば、見覚えのある娘が姿を現す。若者は静かに言う。
「下の里の者たちが、節分の日、鬼を倒すために山を探すそうです。あなたのことでしょう」
「……」
娘は黙って、自分の額に生えている角をさわる。若者は頷く。
「一年前、僕は道に迷って、あなたに助けられた。今度は僕が助けたい。節分は明日。まず、ちゃんと食べて、そして逃げて」
背負った籠を下ろし、捕らえておいた狐を娘に差し出すと、娘は狐を受け取って口を開いた。
「逃げません。返り討ちにするわ」
「それは困る。僕は里にも恨みはないんです」

翌日、里の者たちが山奥で、鍬や鉈を振り上げながら屋敷の戸を叩くと、中から現れたのは人間の若者だった。
「騒がしいな。鬼? いいえ、僕の家だ」
里の者たちは首をひねりながら、安堵して山を下りて行った。
「もう来ないといいね。帰ります。元気で」
若者が去った後、娘は座敷で、愛しい古いされこうべを抱きしめて眠る。

* * *

 

それでは、また。
次回、いつ更新できるか分かりませんが、ゆるゆると気長にお待ちいただければ幸いです。

今年もよろしくお願いします & こぼれ話:ユリアの髪型

遅ればせながら、あけましておめでとうござしいます。
本年もよろしくお願いいたします!

お正月休みも今日で終わり。
あれこれ用事で忙しくて、そんな中、姪っ子にあげたプラバンがこちら。
(このまえの、CHARATさんで作成したキャラデザを使っています。見たくない人がいるかもしれないので、小さい画像にしておきます。クリックすると大きくなります)

Photo

CHARATさんの説明を見ると、身の回りの人にあげるくらい(10個程度)なら、こういうグッズを作ってもよいとのこと。
「本のおまけとして配ってはいけませんか?」と、いま問い合わせ中です。OKが出たら、次に本を出すときにご案内しますね。

***

こぼれ話、もうひとつ埋もれていたので、載せておきます。
ゼラルドの義妹の、ユリア姫のこと。
「ぱっつん髪」というお題で書いた短文です。

***

 儀式などが何もない平穏な日は、昼下がりになると、妹が彼の部屋を訪ねて来る。取り次ぎを通さず、いきなりドアを開けて「ごきげんよう、お兄さま!」とニコニコ入って来る妹を、彼は少なからず迷惑に思っていたが、静かに二言三言たしなめたくらいでは、彼女の態度を改めさせることはできないのだった。
 が、その日は、いつもと少し様子が違っていた。許可なく入って来るのは常のとおりだったが、
「あのう、お兄さま。ごきげんよう…」
 おずおずと呼びかけられて、彼は机のそばで振り返った。女性の服装や髪形には疎かったが、妹のいでたちが、ふだんと異なることには気がついた。
 まず、つややかな黒髪の、結い方が違う。頭の上のほうでまとめて下に垂らす、見慣れた妹の髪型ではなく、両横でゆるく結って、あとは全部髪をおろして、優しげだ。前髪も違う。昨日まで彼女の目を半ば隠していた前髪が、今日は、眉のところでふっつりと切りそろえられている。服も、なんだか感じが違って……。ともかく、全体の印象として、彼女は昨日よりも明るく、かつ、愛らしく見える……ような気がする。
「侍女たちが、こちらのほうが似合うだろうと言ったから」
 もじもじと言う妹は、彼の視線の先で、赤くなって俯いている。
 迷ったあげく、彼は控えめに肯定した。
「……そうだね。似合うと思うよ」

***

というお話でした。その後、ユリアがこの前髪を維持したかどうかは、よくわかりません。

春まで仕事が忙しい予定なので、今から溜息が出てしまいますが、体に気をつけながら創作も頑張りたいです。
昨年よりは、たくさんお話を仕上げられる年にしたいな。

こぼれ話:月の綺麗な夜

冒険譚の本編は、ここのブログに載せたあと、別のところにも載せていますが、でも、「最初に載せるのは、本拠地である、このブログ」と決めています。

が、別のところで「お月見」というお題で短い文章を書いたとき、冒険譚のこぼれ話になったことがあるのを失念していて、つまり、こちらのブログにまだ載せていない「こぼれ話」を発掘したので、今日はそれを載せることにしました。
雑談も書こうとしていましたが、それはまた今度。

***

『お月見』

昼食の時にフィリシアは、妖精の国に住む友人を呼び出した。空気から溶け出すように現れたミルガレーテは、
「今日は暦でいうと、月が綺麗に見える日ね」
と微笑んだ。
「そうですね」
うっとりとセレンが答え、その隣で金髪の王子が、
「月? いつ見ても同じだろう?」
と言う。セレンは友を軽く睨んでから、
「ミルガレーテ。よければ今夜、一緒に月を見ませんか」
「すてき。晴れますように」
と、姫君ははにかみながら答えた。少し離れた所で夜の天気を占った黒髪の若者が、物憂げな瞳をあげて何か言おうとしたが、やめて、口をつぐんだ。

果たして、夜は雨になった。セレンはひどくがっかりしたが、案に相違して、ミルガレーテは姿を現した。驚くセレンに微笑みかけて、
「一緒に月を見ると、約束しましたから」
姫君が手を組み合わせて雨空に祈ると、驚いたことに、雨はやみ、雲が晴れ、月が顔を出した。姫君は嬉しそうだ。
「綺麗…」
「あなたのほうが」
と、つい言いかけて、セレンは慌てて月を見上げ、
「そうですね」
と言った。
二人はしばらく、幸せそうに月を眺めていた。

***

それでは皆様、良いお年をお迎えください。
いつも、気にかけていただけることに励まされ、感謝しています。ありがとうございます!

こぼれ話:もうすぐ7周年

このブログの最初の記事である「このサイトについて」の日付は、2010年12月5日です。
ということは、もうすぐ7周年。
この7年で、じわじわ約90個のお話を書いて、いくつかのお話はA5版の本にして、旅物語の前半部分はおおよそ埋まってきた今日このごろ。

あと3年経って、サイト10周年を祝う頃には、100編ほど書いてあるのだろうな。
そのころには、旅物語の後半も埋まっているのだろうな。
そしたら、10周年の記念には、100編を集めて1冊の本にしてみたいな。

まとめ本を作っても、ブログでの公開はこのまま継続したいので、A5版の本を作るときお世話になっている同人誌出版社さんで、A5版の本と同じノリで、10周年記念としてハードカバーの単行本にして、ちんまり100部くらい、刷れたらいいなと思います。
今まで描いてもらった表紙絵も全部再録できたら嬉しいけど、そこは各イラストレーターさんとの契約条件が関係するので、できるかどうかわからないけど…。

と、未来のことをほわほわ語りつつ、それはそれとして、次のお話を書き始めますね。
次か、その次には、予告編を書きます。年内にもう1編くらいは書きあげたいですもんね。
たぶんセレンとフルートの話になります。
しばしお待ちくださいませ。

こぼれ話:CHARATでキャラクターメイキング

CHARAT  というサイトさんで、冒険譚の登場人物たちの似顔絵を作ってみたよ。
例によって、小さいサイズにして置いておくので、見てみたい人だけ、クリックして拡大して見てみてね。

「こんなんじゃないもん!」と思っていただくのは、まったくかまいません。むしろ嬉しいです。
読者の皆様が思い描いてくださる姿は、どれもみな正しいのですから!lovely

フィリシア、フルート、セレン、ゼラルド、ミルガレーテの順番で並べておきますね。

フィリシアフルートセレンゼラルドミルガレーテ

どうかしら。繰り返しますが、異論は認めます、ぜんぶ認めます、すみません!

こぼれ話:軽佻浮薄(けいちょうふはく)

「訪問者」というお話の中で、ゼラルドはリーデベルクにやって来るわけですが、その後、ひと冬をセレンの家で過ごします。
ゼラルドにあてがわれていた、隣に寝室の付いた広い客室は、いつしか、フルートとセレンとゼラルドが集まって話をする場所になります。

ある日、三人で話しているとき、セレンが女性関係の浮ついた発言をしたことから、ゼラルドは母国語で、ぼそっと、
『これほど軽佻浮薄な人物が、いずれ王となる者のそばにいるのは不適切だ』
と言います。セレンは聞きとがめて、同じローレイン語で、
『そういう君が、十分に重厚謹厳であるとも見えないけれどね!』
と言い返し、さらに内陸語で、「わざとローレイン語で人をそしるなんて、馬鹿にしている」と、腹を立てます。
フルートは何のコメントもしませんが、セレンはフルートに向きなおり、いらいらと、
「君は、あとで辞書を引いておくこと! 軽佻浮薄! 重厚謹厳! ローレイン語で! 通じてなかっただろう!」
と指摘して、まもなく、その場はおひらきに。
あとからゼラルドは、部屋に置いてあった辞書を引いて、内陸語の「軽佻浮薄」「重厚謹厳」を調べ、「・・・合っている」と、独り言を言います。

つまり。
ゼラルドは、「軽佻浮薄」にあたる内陸語がわからなかったので、母国語を使った。
フルートは、「軽佻浮薄」「重厚謹厳」にあたるローレイン語がわからなかった。
セレン一人が、ローレイン語と内陸語の双方で、「軽佻浮薄」「重厚謹厳」を理解していた、というお話。

さらに言うと、ゼラルドはこのとき、部屋に置いてあった辞書をしげしげと眺めて、「誰かがこの客室に、気を利かせて辞書を備え付けてくれたのだ」という事実に気づきます。
その結果、どんなふうに思ったかは・・・さあ、どんなふうに思ったでしょうね。

こぼれ話:セレンは何を書いてるの?

「星降る夜に」で、セレンが寝る前に何か書きものをしていますが、彼は比較的こまめに書きものをする人です。

***

「フルート、君もたまには、陛下に手紙を書いたら?」
「君が書いてくれるから、いい」

「フィリシア、君はどのくらいご両親に手紙を書いているの」
「大きな街に着いたときには。でも、心配をかけないようにと思うと、書けることと書けないこととあって…。セレンは、どのくらい本当のことを書くの?」
「ゆうべ書いたぶん、まだ封をしていないから、読む?」
「いいの? …まあ! たしかに心配はかけないでしょうけれど…いいのかしら」
「ゆうべ書いた日記のほうは、これ」
「いいの? …単語ばかり。でも、自分であとで見て、思い出せるわね」

というふうに、書き分けている模様です。

***

ブログの更新頻度が落ちていて、広場もさぼっていて、すみません。
次作も未定です。いましばらくお待ちくださいsweat01

こぼれ話:小鳥の巣

ゼラルドは鳥が好きなので、こんなこともあったのでは。

***

フィリシアが買い物を終えて表に出て来ると、ゼラルドはいつものとおり、建物の陰になったところに、ひっそりと一人で立っていた。

ただ、いつもと違うところもあった。ふだんは視線が下を向いて、たいてい聖札を眺めているのに、今日は視線がやや上を向いていて、口元には、ほのかな笑みさえ浮かんでいる。

ゼラルドの視線を追いかけて、フィリシアも首を巡らした。彼が何を見ていたかは、すぐに分かった。フィリシアもつい、口元がほころんだ。

それは、民家の軒下にある、小鳥の巣だった。巣立ち間近と思われる雛たちが、巣からはみ出そうなくらいに押し合いへし合いしながら、むぎゅっと収まっている。

「ゼラルド」

フィリシアが声をかけると、黒髪の若者は静かにこちらを向く。微笑は消えている。フィリシアは気にしない。笑いながら、

「あの子たち、ぎゅうぎゅうに詰まっているわね。もう、おうちを飛び立つ時期なのかしら」

「そうだね」

と答えるゼラルドの声は、いつもよりほんの少し、和らいでいる。

「明日には巣立つだろうと思う。買い物が済んだなら、行こうか」

フィリシアは、にこにこする。すましているけど優しいひとなんだな、と思う。
すこしだけ、距離が縮まった気がして、うれしい。

***

というようなことを、ツバメの巣を見ながら、思いました。
いつかこのシーンをお話の中に使うかもしれないけれど、今のところは予定がないので、 今日のこぼれ話です。

こぼれ話:世界が昨日とは違って見える(ゼラルド)

ゼラルドの場合、世界の生まれ変わりは、他の仲間たちより遅く訪れました。
幼いときに母を亡くしたときも、父王が再婚したときも、義妹の執着が少しずつ病んでいったときも、ゼラルドの世界は「じわじわと」暗く狭くなり、昨日と今日とは常に地続きだったからです。

リオンが従者として来てくれたときも、ゼラルドが国を出ることを決意したときも、昨日と今日とはやっぱり地続きでした。いったいどうして、これほどに、のっぴきならない閉ざされた生きざまになってしまったのだろうかと、彼は時々自問したものでした。
過去のどの時点においても、悩みながら、最良と思われる選択をしてきたのに、袋小路に迷い込み、あとは彼自身が消え失せるしかない…。

そのような状況でしたから、彼を取り巻く世界が劇的に変化したのは、そう、ミルガレーテの力を借りて空間を跳躍し、リーデベルクの王家の森で力尽きているところをフルートとセレンに助けられ、三日三晩眠り続けたのちに目覚めて、自らが遠い内陸の国に辿り着いていると知らされたときでした。
見知らぬ土地で、見知らぬ人々に囲まれ、内陸の言葉で会話しながら、彼はまるで夢でも見ているかのように感じており、その非現実感は、仲間たちと旅に出てからも続きました。
「霧の中」というお話に示されているように、彼にとって、この旅は「奇跡にも似た今」だったのです。
逃避行の前と後で断絶してしまった彼の世界が、ひとつの世界へと統合されたのは、のちに故国に戻ったときのことになります。…まだ語られていない、別のお話です。

こぼれ話:世界が昨日とは違って見える(セレン)

お仕事が忙しくて、こぼれ話ばかりですが、ご容赦を。
今日はセレンの話。

親に言われるまま勉強ばかりしている、心の冷えた少年だったセレンの目に、世界というものが真新しい意味を持って映るようになったのは、そう、彼が森の中で偶然フルート(ルーク)に出会ったときからでした。
年齢でいうと、11歳のとき。たしかに、友達の影響を受けやすい年頃でもあります。

自分より年下ながらカリスマ的な資質を備え、明るく美しく表情豊かで、身分という秘密を抱えた友達の出現に、セレンはすっかり心を奪われました。セレンの世界は、突然現れたこの太陽によって、急に色彩にあふれた賑やかなものになりました。
フルートと共にあることで、セレンは自分自身の「楽しい」「嬉しい」「悲しい」といった感情に気づくようになりました。のちになってセレンは、フルートに出会うより前の自分のことを、人形のように感情が乏しかったと思うようになります。

何年も一緒に過ごすうちに、二人の間柄は、より静かで確かな友情の絆に変わっていきますが、知り合った当初にいろいろと、かっこわるい恥ずかしい言動を見られてしまっているので、セレンはフルートに対しては、あまり取り繕うことがありません。
社交的でありながら、人の目を気にする神経質な一面も持っているセレンにとっては、親しい友のいる場所が、すなわち「世界の中心」なのかもしれません。

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